刺客
ドアが開き看護師が女に話しかけた。
「いいえ、この部屋の患者さんどうしたかと思いまして」
「あら、申送りに出なかったの?夜勤でしょ」
「えっええ、私派遣なのでまだ様子が分からなくて」
「じゃあ、早くナースステーションへ行って
話をして来て、今なら看護師長がいるから」
「わ、わかりました」
女が病室を出ようとすると
看護師が女を呼び止めた。
「あっここに居た患者さん、亡くなったわ、
警察がご遺体を東大病院に搬送したわ、
司法解剖するそうよ」
「そうですか」
女は返事をすると少し口角が上がった。
「それで犯人は?」
「犯人は捜査中らしい」
「そうですか」
「早く見つけて欲しい。これから夜勤なのに怖くて仕事ができないわ」
「そ、そうですよ師長の所へ行きます」
女は足早に部屋を出て行った。
「マルタイが今病室を出て行った尾行開始」
「了解」
看護師に変装していた、原美咲が
マイクに向かって声を発し、捜査員はそれに返事をした。
「武器を持っている可能性あります。充分注意をしてください」
「了解」
美咲は未だに意識が戻らない樫村気になっていた。
******
祐希とジェニファーと一緒にいた亮の元に連絡があった。
「亮、偽亮がいた病室に偽看護師が入ってきた、
それを美咲さんの部下が尾行を始めた」
「了解、上がって良いよ、お疲れ様」
「念の為に忍者二人が尾行している」
「そうか、二人と連絡を取る」
「うん」
「ちなみに明日大阪行くけどどうする?」
「こちらの状況次第だけど、私行くわ」
「はい、マギーと蓮華と桃華には正一郎の身辺を調べて貰って下さい」
「了解です」
小妹は大阪に行くと聞いて嬉しかった。
「誰?」
「小妹、明日一緒に大阪に行ってもらう」
「ガードは私一人で十分だけだけど」
「ああ、別件で調べる事が有って」
「そうか・・・」
ジェニファーは亮たちの動きが分からなくて気持ちを落としていた。
祐希を囲んで祐希の子供時代の話をジェニファーと
亮が聞いているとジェニファーは祐希の
悲しい過去を聞かされて目を潤ませていた。
黒崎正一郎の妻は祐希を奪い取り、自分の子として育てていたが、
成長するに従って祐希顔は絵里子似て行き評判の美少女になり、
幼い頃から頭の良い祐希は小学生で全国模試では常にトップ、
黒崎の妻は、まだ幼い祐希に嫉妬すら覚えて行った。
正一郎は祐希を男として育て将来は黒崎グループの
トップと考えていたが次第に欲出てきて
祐希にグループを渡すのが惜しくなってきた
祐希は妻の思惑通り次第に男なって行き髪を短く切り男として
高校に入り、絵里子と会うことも無くなっていた
そこに正一郎は黒崎グループを掌握し絵里子と切り離す為に
妻は祐希の留学を進めた。祐希がアメリカに出発した日
妻は脳溢血を発症植物人間と化していた。
「初めて聞いたよ、その話」
「ママも知らない話だよ」
「うん」
「大変だったんだね」
ジェニファーは祐希の手を握った。
「今頼れる人は亮しかいないんだ」
「ママは?」
「信じられるけど、ママと同じように今は亮に頼りたい」
「亮これは思いに答えるべきよ、今の祐希にはあなたか必要よ」
「うん・・・」
亮はジェニファーに気のない返事をした。
「わかった、でもいつか自立するんだよ」
「わかった、パートナーとして付き合う」
「パートナーか・・・」
「じゃあ私ホテルに戻るわ」
ジェニファーが気を使った。
「おいおいボディガードは?」
「大丈夫よ、イザとなったらそれを使って」
ジェニファーは親指を立ててピストルを撃つ真似をした。
ジェニファーが帰ると祐希が亮の隣に座り腕を組んだ。
「土曜日の夜は子ども作るっちゃ」
「何それ?」
「アニメの有名なセリフらしい」
「今日は金曜日だから・・・」
「ふん、じゃあ私あなたが欲しい
周りの女性に負けたくないの、ママにも」
「えっ!」
「もちろん敵じゃなくて、女として負けたくない」
「うん、わかった」
亮は人目も憚らず祐希と長いキスをした。
そのキスは暴れていた祐希を抑える為ではなく、次の為のプロローグだった。
「さて、どこへ行こうか?」
「ラブホ」
「えっ?そんな所で?」
「うん、一度行って見たかったから、それに日本では普通の女子大生でいたいし」
「いいけど」
亮は女の子は初体験の場所と思い出を気にすると思ったが、
将来別な男性と付き合う事を考えると忘れた方が良いらしかった。
タクシーで20分程で渋谷道玄坂で降りると亮は祐希と
腕を組んで歩いた。悦子の店を覗くと悦子が忙しそうに動いていた
「祐希、ここが正一郎の愛人の店だよ、美宝堂の中古品を売っている」
「これからどうするの?」
「うちが店を買い取って継続営業します。儲かっているので、それも明日の議題に」
「店長は誰がやるの」
「彼女」
「えっ?あいつの元愛人でしょう」
「元ね、正一郎に殺されそうになったんだよ、
今警察が実行犯取り調べをしている、
ひょっとしたら正一郎は殺人教唆の罪で訴追されるかも」
「ホント、彼女も被害者なんだ」
「運営に関しては、僕に任せて欲しい」
「もちろん」
祐希は微笑んで亮の腕にぶら下がるように抱きついた。
道玄坂のライブハウスの裏側にあるラブホテルに入ると、
煌びやかな室内を見て、祐希は声を上げて大きなベッドに飛び込んだ。
「凄いピカピカ」
ベッド付いているスイッチ
イジってライトを暗くしたり、色を変えてベッドから降りて
亮の前に立った。
「亮、今日から私の家族になりなさい」
祐希亮の首に腕を回してキスをした。
「わかった」
祐希は亮の目の前で全裸になった。元々筋肉が付いた体に
女性ホルモンで脂肪が付いた体はまるでビーナスの様だった。
「綺麗だ」
「ありがとう。この体亮物だよ」
これはチートだ、絵里子親子の罠だ!
そう思いながら、亮の体は正直に反応していた
1時間程経つとキャシーからどこかで見ていたかのように電話がかかってきた。
「今日は帰ってくるの?」
「ごめん、帰れない」
「わかったわ、一恵さんから連絡が有って明日大阪に行くそうね。私も行くわ」
「えっ!大丈夫?」
「ええ、安定期に入ったから
行けるわよ。仕事の件もあるし」
「分かりました。一恵さんに連絡をしておきます」
「うふふ、もうお願いしてあります」
「了解です」
亮は電話を切ると背中に悪寒が走った。
「どうしたの?」
「明日キャシーも一緒に行くそうです」
「まぁ当然ね。黒崎グループの不動産を買うんだから」
祐希は冷静答えた。
「そ、そうだよね」
「何!ヤキモチを妬くと思っていた?」
「い、いや」
「家族の件だけど、これから亮をマスターと呼ぶわ」
「マスター!」
「ビジネスの師匠としてマスターと呼ばせていただきます」
しかし、祐希はご主人様と奴隷関係を想像して言った
「ジェダイみたいだ、うん
「マスター、あと1回しよう」
「わかった」
翌朝、ジェニファーから電話があった。
「ジョギングどうするの?」
「今、渋谷だし7時過ぎに東京駅に行かなくちゃならないので中止です」
「また、サボって」
「いや、十分に運動をしましたよ」
「あらら、凄いわね。
よほど抱き心地が良かったのかしら」
「なんとも言えません」
「とりあえず東京駅で」
「わかったわ」
祐希は慣れない手つきで、化粧をしていた。
「手伝おうか?」
「大丈夫、一人でやってみる、ありがとう」
「今度裕子さんにレッスンを受けたらどう?」
「うん、頼んでくれる」
「良いよ」
亮は初めて会った時から比べて別人のようになった祐希が
母親の絵里子以上に美しくなる事が想像できた。
「亮、服が欲しい」
「マスターじゃないのかよ」
「マスターと呼ぶのは人前だけだよ」




