暗殺者
「私が出資している飲食店の一部にこの畑の
無農薬野菜と有精卵を出荷している」
「それはすごい!」
亮は金融業と飲食店への投資、そしてその店に
無農薬野菜を出荷する、飯田のビジネスセンスに感動していた。
「飯田さんすごいですね!」
「いや、旦那が農家の生まれで広い土地で
農業をやるのが夢だったんだよ。漢方薬に詳しいお前さんも
植物は好きだろう」
「はい、かのヒポクラテスの言葉に『食で治せない病は
医者でも治せない』と言うのがあります。
植物性食物は大事です」
「あはは、良い事を言うな」
飯田は畑の脇にある納屋に亮とジェニファーを連れて行き
その奥の扉をあけ別の部屋に入って壁の節目に指を当てると
木の板が開いた。
「エレベーターですか?」
「敗戦濃くなった昭和20年
本土決戦に備えて上は畑、地下20mに秘密基地と武器研究所を
旧日本軍が作った」
エレベーターが地下に下りると目の前にアーチ形の空間が現れた。
「これが飛行機用の格納庫だ。3機入る予定だったらしい。
その他にガソリンタンク、食糧倉庫、発電室などなどある。
この奥に武器庫、研究施設、1000人の兵舎がある」
「すごいですね、こんな施設があったなんて」
「実は私も知らなかったんだが、お前さんのじいさんが古い資料を見て
教えてくれたんだ。それで埋められていた入り口を見つけ出して、
エレベーターを付けたわけだ」
「へえ」
亮は少年の夢、秘密基地が見つかった事が嬉しかった。
「亮さん」
白衣を着た緑川五郎がやってきた。
「お疲れ様です、五郎さん。こちらはFBIのジェニファーです」
亮はジェニファーを紹介すると五郎が不思議そうな顔をした。
「FBIの人がどうして?」
「アメリカで宗教教団とメキシコの麻薬王との
関係が判明して
その手伝いに行きます。彼女は僕を迎えに
来たんです」
「相変わらず亮さんは忙しい」
「決して疎かにしていませんよ」
「はい、分かっていますよ。お気をつけて」
「亮、お前のお蔭でうまく行った。ご苦労さん」
F電機の株主総会から戻った拓馬が
亮の肩を叩いた声をたたいた。
「そうですか。良かった」
「ところでワクチンの製造はどうだ?」
「Rワクチンが出来そうです」
「そうか、でも大量に製造は出来ないな」
「ええ、これは我々で使って他の方法で作らなくてはなりません」
「わかった、至急DUN製薬に準備をさせる」
「お願いします」
亮が拓馬に答えると拓馬はポケットの500円硬貨を渡した。
「小遣いだ」
「ありがとうじっちゃん」
「今回F電機の件で儲かった金をやる、それで服でも買え」
「ありがとう。でもこの500円あれば十分です」
亮は幼い頃、成績が良かったりすると
拓馬が500円をくれるのを覚えていた。
亮はコインを指ではじいて回し
祈るようにポケットに入れた。
「行きます」
「ああ、用があればいつでもそっちへ行くぞ!」
「はい、来週アリゾナに行きます。
その帰りにハワイに行きます」
「おお、そうか、うちの別荘を使え」
「えっ、別荘あるんですか?」
「あるぞ、しらなかったのか?」
「はい」
「そうか、お前達親子は仕事ばかりして
ハワイで遊ぶなんて考えた事もなかったろうな」
「確かに考えもしていなかった」
「まぁ、ハワイへ行ったら一度観てこい」
「了解です」
そこに美咲から電話がかかってきた。
「ああ、よかった。電話が通じた」
「なんですか?」
「亮が重体と言うニュースで。
転倒の瞬間の映像も流れていたわよ」
「実はキム・ヨンヒに頭を撃たれて転倒しました」
「話をしていると言う事は重体じゃないのね」
「はい、大丈夫です。重体と言うのはカムフラージュです。
ところでSATの件はどうなりました?」
亮は美咲にアメリカに行く理由を聞かれそうだったので
話をSATの事件の方へ持って行った。
「大丸の自爆で背景がわからないまま、隊員や周りの
人間の事情聴取をしている。時間がかかりそう」
「爆弾を持っていた竹井巡査はおお父上の原警備局長を
敵視していて局長の地位を落とすために、
関係者と目されている僕の命を狙ったそうです。
僕と局長の関係情報が漏れているとなれば、
警視庁、警察庁の幹部に
かかわっている人間がいると思います」
「わかったわ、ありがとう。おそらく父は
必ず黒幕を見つけるわ」
美咲は亮の警告に感謝した。
「そうですね、僕もできるだけ協力します」
亮は原巌が警察組織のトップになる事を願っていた。
「それから、黒田正一郎は国税局の取り調べが終わった
後は特別背任罪で大阪府警の捜査2課が立件する予定よ」
「ありがとうございます。これで黒田正一郎は黒田グループ
から失脚します」
亮は財務省に勤める先輩の落合が
裏で動いてくれた事にも感謝していた。
「ううん、犯罪人を逮捕するのが警察の仕事」
「そうですよね、来週アメリカに行きます」
「また、仕事?」
「はい、これでもビジネスマンなので」
「じゃあ、気を付けて行ってください」
「はい、留守をお願いします」
亮が優しく答えると美咲の声が急に強くなった。
「ところでFBIのジェニファーが
日本に来ているようだけど
理由は?」
「あっ、知っていましたか」
「当り前よ、新宿駅上空を派手に
ヘリコプターで飛んでいればわかるわよ」
「国際手配になっているキム・ヨンヒを追ってきたそうです。
結局逃げられてしまいましたけど」
「そう・・・」
美咲は納得のいかない口調で答えた。
「また連絡します」
亮が電話を切ると蓮華と桃華が笑っていた。
「恐るべし女の勘」
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西新宿病院201号室の
ドアが静かに開き、男がベッドに近づいて来て
ポケットからナイフを取り出した。
「いらっしゃい。待っていたわよ」
男の後ろから小妹が声をかけた。1
「ん?」
男は驚いて後ろを振り返った。
「くっそ!」
男は慌ててベッドに向かってナイフを突き立てた。
「残念だったな。俺は團亮の身代わりだよ」
三雲はそう言ってナイフを持っている
男の右手を後ろにねじりあげ
ベッドから飛び降りた。
「バッキッ!」
三雲がベッドから降りる勢いで
男の右肩から鈍い音が聞こえ床に倒した。
「あああ・・」




