SAT
「やはり大手町から猛スピードで走って来た
バイクは亮だったのね。警視庁に黒い白バイが猛スピードで
走っているとたくさんの通報があったそうよ」
「すみません連絡していませんでした」
「それでそちらの状況は?」
「一応確保できる準備はできていますが、
気になる事があります」
「何?」
「SATがすでに出動しています」
「えっ?それは早すぎる!」
美咲もSATの出動の早さに驚いていた。
「ひょっとしたら・・・
父に連絡して確かめてみるわ」
「お願いします、ところで樫村さんの怪我の状態は?」
「まだ、意識不明の重傷です」
美咲は樫村の容態が思わしく気が気では無かった。
「そうですか。樫村さんの早い回復を祈ります」
「ありがとう。折り返し連絡をするわ」
美咲はすぐに亮との電話を切った。
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「狙撃班Aターゲット補足」
「狙撃班Bターゲット補足」
「狙撃班Cターゲット補足」
それぞれの場所からSAT指令車に連絡があった。
「了解、指示を待て!」
「了解!」
SAT狙撃班は陸橋上の警察官にライフル銃の照準を当てた。
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「お父さん、SATが新宿の現場に出動しているそうだけど」
美咲は父親の警察庁警備局局長、原巌に電話を掛けた。
「何!その報告は受けていないぞ、人質事件は刑事部捜査一課の
SIT(特殊捜査班)が出動するはずだ。
SATが出動するには早すぎる」
巌は警視庁幹部のどの人物が動いているか考えていた。
「お父さんどうする?亮に新宿の現場から引かせる?」
「亮君が動いているのか?」
巌は亮が捜査官を辞めたいと言っていたので
亮がこんなに早く動いているとは思わなかった。
「ええ、F電機の株式総会から飛んでいったみたい」
「わかった。私の方で亮君の動きを最優先にするように
伝える」
原巌は日本全体のテロ対策は警察庁警備局の
仕事で警視庁が独断で動き、万が一テロリストが
他県に逃げ込む事によって被害が拡大する可能性がある事を
危惧していた。
~~~~~
「亮、父に連絡を取って亮の動きを最優先するようにお願いしたわ」
美咲は亮に電話をかけてきた。
「ありがとうございます、ところで犯人の身元はわかりましたか?」
「ええ、今人質を取っているのが大手町警察署竹井巡査28歳、
足を撃たれたのが松村巡査長35歳、富田巡査長35歳、
自爆した警官は身元がまだわからないけど三人は今日のF電機の
株式総会の警備をしていたそうよ」
「わかりました」
亮は今回の事件は前もって計画されていた事と確信した。
亮は美咲の連絡を受けるとタブレットをもう一度見て
監視カメラの映像を確認した。
陸橋の両側は警察によって閉鎖され
誰も近づくことはなく、警視庁捜査一課特殊犯捜査係の
捜査員がそれを取り囲んでいた。
「小妹、僕はこのまま犯人のところへ行って説得します。
今から警察は対処の作戦を練るはずです。
そうなったら僕の出番がありませんからね」
「わかったけど、大丈夫?」
「はい、麻美さんに言ってSATの無線を
傍受できるように頼んでほしい」
「わかった」
亮は歩きながらキャシーへ電話を掛けた。
「キャシー、亮です」
「F電機は上手く行ったそうよ。ケイトから連絡が有ったわ」
「了解です。これで株価が上がります」
「それで今何をしているの?」
「新宿でテロリストを捕まえています」
「また危険な事を・・・」
「大丈夫、あまり危険で無いようです」
「よかった。亮、絶対無理しないでね」
「もちろん無理はしません」
亮はキャシーとの電話を切ると陸橋の
ど真ん中でまったく動かない
竹井巡査の前まで歩いて行った。
「マギー、ターゲット変更、向かい側のT島屋デパートのSATの
狙撃手のスコープにレーザー光線を当ててほしい」
「マギー了解」
「桃華、そっちの方は」
「準備完了」
「こんにちは、團亮です。竹井さんですね」
亮は橋の真ん中に行って竹井に丁寧に挨拶をした。
「やっぱり来たか、聞いた通りだ」
竹井は亮を歓迎するように笑顔で答えた。
「あなたはどうしてこんな事をしているんですか?
建物に逃げるわけでもなし、何の要求もしない」
「團亮、あんたを待っていたんだよ」
「やはりそうですか」
「なんだ、わかっていて来たのか」
「はい、人一倍探究心が強いので。命令している人間は誰ですか?」
「ばか、答えるわけがないだろう。
我々には政治家、官僚に支配されている
この国を変える使命がある、
その為には手始めにお前を殺す」
「僕は政治家でも官僚でもありませんよ」
「あんたは警察改革を推進している原巌の手先になって
大きな成果を上げている。
お前が死ねば奴にとって大きな痛手になる」
「なるほど、そういう訳だったのか・・・」
「何勝手に納得しているんだ」
「ちなみに、その爆弾本物ですか?」
亮は眼をじっと見つめた。
~~~~~
「美咲、SATの出動は羽生警備部長の
耳に届いていない。亮君に伝えてくれ」
美咲の電話の向こうに動揺している巌の声が聞こえた。
「わかりました。私も今、新宿の現場に向かっています」
「今誰がSATを出動させたか調べさせている」
「わかった」
~~~~~
「SAT本部より各狙撃班へ、
ターゲットの変更をする、
ターゲットは竹井の前に立っている男だ。
男は防弾チョッキを着ている可能性が高い
頭部を狙い確実に射殺せよ」
「狙撃班A、射殺ですか?」
狙撃手Aは射殺に疑問を持って質問した。
「そうだ、射殺だ!これは命令だ」
「はっ、狙撃班A了解」
SタワーホテルのA班狙撃種はSAT隊長に
強く言われ命令に従った。
「狙撃班B了解」
「狙撃班C了解」
竹井に向けられていた銃口が一斉に亮の頭部に向かって動いた。
~~~~~
「この爆弾か、あんたはどう思う?」
竹井はニヤニヤ笑って亮に聞いた。
「それだけの量のC4爆弾が爆発したらこの陸橋は
下へ落ちて線路をふさぎます。山手線、埼京線、中央線が不通になり
大変な事になりますね」
「そうかこれがC4爆弾とわかるとなると相当知識があるな。
正直に言おう。これは本物だ」
「自爆するつもりですか?」
「大義の為なら俺の命をいつでも捧げる」
「すでにSATが出動して竹井さんに銃口を向けているはずです」




