逆転
萩原の周りを数人が集まり話を始めた。
「では、野田前社長の解任理由を説明していただけますか?」
亮は風戸に聞いた。
「それは取締役会で決まったことですから・・・」
「それでは我々は野田さんの取締役の就任を希望します」
「そ、それは・・・」
風戸は33%の亮に拒否権が発動されても
参考意見として聞く程度してすればいいと高をくくっていた。
「それは私も聞きたいですね」
ステージに上がってきたのは四菱銀行頭取平田寛治だった。
「あっ、頭取!」
風戸は平戸を見て立ち上がった。
「私も團君の意見に賛成だ!説明してくれないか」
F電機の10%以上の株を持っている四菱銀行の代表である
平田が風戸に聞いた。
「ま、待ってください。詳しく調べて後ほど報告します」
「今答えられない事情があるのか!」
「粉飾決算しているんじゃないか!」
「公認会計士は何をやっているんだ!」
会場から声が上がった。
「遅くなって申し訳ない」
いなほ銀行の横山頭取がステージに上がって
平田に頭を下げ亮の肩を叩いた。
「もし答えが得られないなら、議長の不信任を
取締役の解任を要求する」
横山は亮と平田の顔を見て風戸をにらみつけた。
「おお」
横山の提案に会場から怒号の声が上がった。
「ここで30分の休憩をします」
議長の風戸は休憩を取らざる負えなかった。
風戸と取締役たちは休憩時間の間に結論を出すべく
会議室に入った。
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休憩の間に亮たち全員が会議室に入り、
入口にピョートルとアントンが立った。
「ご無沙汰です、團会長。その節はお世話になりました」
横山が深々と頭を下げた。
「久しぶりですね、横山さん出世しましたね」
「お孫さんの亮さんとこんなに親しく
仕事をさせていただくとは思いませんでしたよ」
「僕がみなさんと仕事ができたのは
みんなじっちゃんのお蔭だったんですか?」
亮は拓馬と横山の会話を聞いて落ち込んでいた。
「亮、それは違うぞ。お前がここまで来たのはお前の力だ。
私が電話した、横山頭取と平田頭取と話をしたのは
十数年ぶりだ。二人ともその頃はまだ平取りだったな」
「そうですよ、亮君。ロビンやキャシーは自分の力で
作った人間関係じゃないか」
拓馬と内村は亮の気持ちを気遣い慰めた。
「そうですよ、あなたはその若さで
数千億円のお金を動かしているんだ。
もっと自信を持ってください。
私があなたの年の頃はまだ外回りでした」
亮は全員の目を集めた。
「ありがとうございます」
亮は体を直角にまげて頭を下げ3秒間停止すると頭を上げた。
「では。僕が委任を受けた株数は33%」
「うちは12%です」
「うちは15%です」
四菱銀行の平田といなほ銀行の横山が続けて答えた。
「トータルで60%もう敵はないですね。
我々は野田さんにもう一度代表取締役になっていただいて
消えた年金の行方を発表してもらいます。
そして裏で動いた人の名も公表してもらいます。
それでいいですね」
「はい」
野田は亮に言われて立ち上がりうなずいた。
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国会議事堂から道路を挟んだ処に議員会館があり
国会議員は部屋を割り当てられるが
ほとんどの国会議員は近くのテナントビルやホテルに
個人事務所を霞が関から赤坂近辺に構え、
選挙対策等々、様々な仕事をこなす。
民政党の幹事長の岡村達也も例外ではなく
赤坂日枝神社の裏側のビルの一室に事務所を持っていた。
「先生、おいしかったですね」
秘書の早坂が岡村に聞いた。
「うん、昼からフグは贅沢だが前祝いだ。
F電機の株式総会で跡地売却が承認されば
O駅再開発が一挙に進む、そうなれば儲かるぞ」
岡村はF電気の株式総会が亮の拒否権発動で
大荒れになっているとは思ってもいなかった。
「そうですね。不動産会社、建設会社が利権欲しさに
我々の元に集まってきますよ」
「あはは、楽しみだ!」
岡村が笑っていると男が岡村にぶつかって行った。
「ちっ!人にぶつかっておいて謝りもしない、
しつれい・ら・や・・・」
岡村はろれつが回らず言い終える前に
膝をついて息苦しそうに地面に倒れた。
「先生!」
早坂は苦しそうな息遣いの岡村を抱きかかえた。
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休憩時間に会議室に集まった風戸達取締役は頭を抱えた。
「社長、株式総会を流会にする訳にはいきません。
ここは赤字決算の理由を説明すべきです」
財務担当の荻原取締役が風戸に進言した。
「しかし、そうなると誰かが責任を取らなければならなくなる」
東森専務は周りにいる取締役の顔を見た。
「わ、私は関係ないぞ。責任は私の前の前の経営者陣だ!」
「しかし、隠ぺいするために野田さんを解任したのは社長です」
東森は風戸を責めた。
「馬鹿な、解任したのはここにいる取締役全員じゃないか!
私だけではない!私だけが責任を取るのは嫌だ」
「そう言ってもこのままでは、團と言う小僧や銀行が
取締役を入れてきますよ」
東森は興奮する風戸を諌めた。
「どうですか。取締役の承認を受けられないなら
ケツをまくって全員辞任しませんか?取締役が
いなくては会社運営ができませんから、
株主も慰留すると思います。それで時間を稼ぎましょう」
マーケティング部取締役の貝枝が提案した。
「なるほど、経営陣がいなくなれば
会社運営は不可能になる。しかし、半分の人間が慰留された場合は?」
「もちろん、その話には乗りません。あくまで我々は一枚岩です」
「しかし・・・それはあまりにも無謀では。
このままだと職場放棄ですよ
社長!」
東森は貝枝の口車に乗っている風戸に強く言った。
「私もついていきます。ピンチをチャンス変える時です」
「そうだ、私もついていく」
「私も!」
取締役たちは次々に立ち上がった。
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「遅くなってすまん」
亮たちのいる会議室のドアが開いた。
「お疲れ様でした、森さん」
「これが取締役全員の動向だ。プライベートでの
家族や愛人関係接待交際費の使用金額、用途。
部下たちとの信頼度など調べてある」




