拉致
「美咲さん、横領の証拠があれば逮捕まで
どれくらいの時間が掛かりますか?」
「証拠があれば内偵をして事実関係を確認して早くて1週間あれば」
「了解です。では殺人なら?」
「もちろんすぐに動くわ」
「そうですよね」
「ねえ、さっきからもったいぶってだれの話をしているの?」
「黒崎正一郎です」
「まさか黒崎正一郎が殺人を犯したと言うの?」
美咲は亮が正一郎にみすみす殺人を許したのか不思議でならなかった。
「いいえ。まだですよ」
「じゃあ、これから起こるの?」
「まさか知っているんですからそんな事はさせません。
殺人はたとえ話です」
「じゃあ、横領は事実?」
「はい、一応だいたいのデータは集まったのですが脱税と横領の事実を
確定するには証拠書類を押収しなければいけません」
「だから落合さんに国税の人間を探してくれと言ったのね」
「そうです、脱税、横領どちらからも黒崎正一郎を押さえつけたいんです。
その為に皆さんのお力を借りたいんです」
「今日は随分謙虚ね。亮」
美咲は謙虚に言う亮を褒めた。
「そうですか、経済界の黒幕と言われる
二人をほぼ同時に逮捕出来るなんて
めったにないチャンスです」
亮はそう言いながらもう一人の黒幕を岡村幹事長を
日の当たる場所に引きづり出し
この手柄を美咲の父原巌に上げたかった。
「そうね、頑張るわ」
亮が美咲との電話を切ると仁木と三雲に連れられて
悦子が来た。
「仁木さん、三雲さんお疲れ様です。悦子さん大丈夫ですか?」
「はい。・・・私の身代わりの女性大丈夫ですか?」
悦子は自分の身代わりになって連れ去られた女性を心配していた。
「彼女は小妹と言って武道の達人です。大丈夫です」
「まさか、私を誘拐するなんて・・・きっと黒崎の命令ね」
「ええ、どこか遠くへ連れて行かれて殺すつもりでしょう。
死体がみつからないように」
亮が話をすると悦子の顔から血の気が引きガチガチと歯を鳴らし
亮に体を寄せた。
「安心してください、僕たちが守ります」
「は、はい・・・」
悦子は亮の腕の中で顔色を戻していた。
「亮さん、小妹を救わなくていいんですか?」
仁木が小妹を心配して亮に聞いた。
「今はまだ小妹を殺す事はありません。
お店の売り上げに影響しないように
悦子さんが行方不明になるように偽装すると思います。
つまりそう易々と死体が見つかっては困るはずです」
「そうかするとどこか遠くへ連れ出すわけですね」
「ええ、小妹からきっと連絡があるはずです」
亮は小妹の正体がばれぬように小妹に連絡ツールを
持たせなかった事を気に病んでいた。
~~~~~
横浜本牧の数えきれないほどのコンテナが見える
アパートの2階の床に小妹は転がらされていた。
「小関、この女の顔写真を撮っておけ
人違いが無いように宮部さんに送って確認を取らないと」
「了解、あの部屋に居たんだから本人に間違いないと思うがね」
「黙って言う事聞け!もし間違って別人だったら大変だぞ」
「分かりました」
小関は横たわっている小妹を仰向けにして
写真を撮った。
「なかなかの美人だな、中国人の船員にやられるのは惜しい気がする」
小関は小妹の胸を撫でながらつぶやいた。
「ほう、女装趣味のお前からそんな事を聞くとは思っていなかったよ」
「俺はゲイじゃない。マツコやミッツのように女装はあくまで仕事の為だ」
「まあ、どちらにしろ俺には分からん、もし惜しいと思ったら
明日まで好きなだけやればいい。どうせ愛人をやるような好き者なんだから
喜んでやらせるんじゃないか」
「うん、それがこの女ウブな感じがしてならない。それより
お前こそやりたいんじゃないか?」
「あはは、それが俺もこの女とやる気にならないんだな。
ギャラをもらったら後腐れの無いもっとセクシーな女とやる」
「まったくヤルのやらないのって・・・私はやる気ないっていうの!」
スタンガンで気を失っていなかった小妹は
二人の会話を聞いて怒っていた。
「やはりこいつらに誘拐の指示を出して居たのは塩見の部下の
宮部だったんだ。亮と連絡を取らなくちゃ・・・」
両腕を結束バンドで縛られている小妹は
亮に対する連絡方法を考えた。
「大飯、写メの送り方分かるか?」
「そんな事俺に聞くな!電子機器の使い方なんて分かる訳ないだろう」
「そうだったな、ガラケーからiphonに変えたら
全然使い方が分からなくて・・・」
「当り前だ、そんなに簡単だったら○ップルストアが
予約でいっぱいにならねえよ。シンプルが一番だ」
「ところでこの女いつまで気を失っているんだ、
生きているんだろうな」
そう言って小関が小妹の顔を叩いた。
「う、うーん・・・・」
悦子と入れ替わった小妹は今まで気を失っていたように芝居をして
目を開けた。
「おい。大丈夫か?」
目を開けた小妹と目が合った小関がなぜか小妹に気を使って聞いた。
「あ、はい。大丈夫です。私は・・・」
「俺たちはあんたを誘拐したんだ」
大飯は小妹と小関の間に割り込んで答えた。
「私を誘拐って!?。私の両親は
貧しくてお金なんて払えません。
月々の私の仕送りと少しの年金で暮らしているんですから」
小妹は悦子に成りすまして答えた。
「大丈夫だ、金なんて要求しねえよ」
大飯は思わず身代金目的も誘拐では無い事を言ってしまった。
「じゃあ、どうして私を?まさか・・・」
大飯は無言のまま目をそらした。
「あのう、さっきiphonの使い方が分からないと遠くで
聞こえた気がしたんですけど私やりましょうか?」
「ああ、でもなあ・・・」
小関は誘拐した人間の確認のメールを被害者に頼むわけに
行かないと思った。
「大丈夫です、それはそれこれはこれ変なことしませんから」
「そうか・・・この写真をこのアドレスに送ってくれ」
小関は小妹に小妹が寝かされている写真を塩見の部下、宮部
に送るように依頼した。
「まあ、私の写真ね」
小妹は1分ほどで写真を送った。
「送りました、変な事していませんから」
「ああ」
小関は気まずそうにそれを受け取った。
「疑っているようでしたらメールが届いたかどうか確認してください」
「わ、分かっているよ」
小関は小妹の一言で電話をするチャンスを逃していると
大飯は隣の部屋に行って宮部に電話を掛けた。
「宮部さん、写真を確認してくれましたか?」
「ああ、今先方にメールを転送するところだ返事が来たら
連絡する」
「お願いします。まさか人違いと言う事は無いでしょうね」
「あはは、部屋番号を間違わなければ大丈夫だ」
~~~~~
正一郎は足元をふらつかせ、美喜の肩を借りて
銀座ルーセントホテルの部屋に入って来た。
「大丈夫ですか?社長」
「うん、少し飲み過ぎたらしい。
せっかく君と楽しい夜を過ごすんだ少し休めば大丈夫だ」
美喜は正一郎の上着を脱がせベッドに横にさせた。




