砂浜の追跡
間もなく救急車の側に止めてあった
2台の車のタイヤが燃え上がった。
「ああ、亮さんに怒られる・・・」
三雲が燃える車を見て茫然としていた。
「ああ、そうだな。ところで三雲、
大事な物を置いて来なかったよな」
「はい、乃木坂新聞くらいしか・・・」
「何?乃木坂新聞」
燃える救急車の炎は周りを明るく照らし
美喜たちが一度は見失ったと思った茂蔵を発見した。
その手には大事そうにアルミのトランクを持っていた。
「居たわ、茂蔵!マギー追うわよ」
「了解、そう言えば車の中に大事な物置いてなかった?」
「有ったわ、亮にもらった御守り」
「キリスト教の亮が御守りをくれたの?」
「うふふ・・」
美喜はマギーの不思議そうな顔を見て嬉しそうに笑った。
「みなさん、大丈夫ですか?」
四人のイヤフォンに心配した雪の声が聞こえた。
「大丈夫です、ただ車が燃えています」
「分かりました、それは気にせず任務を遂行してください。
すぐに移動手段を手配します」
「ありがとう、雪さん」
仁木が礼を言うと美喜が仁木に連絡をしてきた。
「仁木さん、アルミのトランクを
大事そうに持っている茂蔵を確認したわ」
「ああ、車が燃えたお蔭でこっちも確認した。
奴らを挟み撃ちにしよう。
たとえ茂蔵が仲間を呼んだとしても砂浜
なら船で近づくことができない」
「了解、消防車作業が始まる前に片を付けましょう」
美喜が仁木に答えると四人の中、実弾を人に向けた
経験のあるマギーだけは仁木達の考えている作戦が生温く
思え、元々実弾を発射できる事が出来たら蓮華も桃華もこういう目に
合わなかったと亮の作戦を批判的に考えていた。
仁木と三雲は先回りをするために道路を全速力で南に走った。
「仁木さん、今度こそ茂蔵を捕まえましょう」
「ああ、決まっているさ。これ以上奴に好き勝手されてたまるもんか」
「ですね」
「行くぞ!」
つい最近まで警察の機動隊で働いていた二人の体力は
茂蔵に追いつき抜くのは容易だった。
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「ねえ、マギー。亮がどうして殺傷能力のある武器を使わないか
不思議だと思わない」
「人を助ける薬を作っているからでしょう」
マギーは自分の心が読まれているような気がした。
「うん、でも機関銃を乱射している凶悪人を
倒さなかったら何十人も被害者になる
可能性あるじゃない。アメリカなんか実際に
そんな事件が起きているでしょう」
「そう、私も何度も体験している」
マギーはロス市警時代に体験した悲惨な事件を思い出していた。
「たった一発の正義の弾丸も必要だと私は思う」
「私もそう思う」
二人はそう言って手を握り合った。
「ただ亮には絶対手を汚させちゃダメ。汚れた部分は
私たちで負うのよ」
「美喜・・・」
マギーは香港の暗鬼で訓練を受けた美喜の変化に驚いていた。
「やはり私も甲賀忍者の子孫だったのね。こういうの大好き」
「そうか、お互い様だね」
マギーと美喜はハイタッチすると茂蔵たちを追った。
「三雲、このまま真っ直ぐ行って美喜たちと挟み撃ちだ。後は頼む!」
「た、頼むって?仁木さん!」
仁木はそう言い残して暗闇に姿を消し三雲は
後ろを振り返りながら手にピストルを構え
砂浜に伏せた。
「美喜さん。先回りして待ち伏中」
「了解、こっちから追うわ。敵は最低サブマシンガン2丁と
ピストルが3丁持っている」
「りょ、了解」
三雲は火器の違いに萎縮していた。
「マギー、ペイン弾だけど撃ちまくろう」
「OK」
美喜とマギーは茂蔵に向けてペイン弾を撃った。
「大丈夫だ。あの弾丸は革の服は貫通しないので効果が無い。
首に気を付けろ!」
茂蔵は初めて口を開いた。
「はい」
二人の男は実弾を美喜とマギーに撃ち返した。
美喜とマギーは砂浜を走ってそこに伏せた。
「どうしよう、奴らは実弾よ。これ以上近づけない」
「マギー、援護射撃お願い」
「どうするの?」
「忍者の武器を使うわ、ただし3mまで近づかないと
完全に倒せない」
「了解、何とかする」
マギーは美喜のピストルを奪って立ち上がり
2丁のピストルを撃ちながら走った。
「バシッ」
「バシッ」
マギーの体に何発もの弾丸が当たった。
炭素繊維のウエアを着ていても
まともに当たるとその痛みは耐え難かった。
「ウッ」
マギーはその痛みに耐えかね砂浜に膝を付いて倒れた。
「ギャー」
敵の男が声を出して転げまわった。
「どうした?」
脇に居た男があまりの痛がりに駆け寄って
見ると背中に手裏剣が突き刺さっていた。
「手裏剣!」
男はそれを抜いて砂浜につきさした。
「そんなに痛いのか?」
男はオドオドしていた。
「宇野、そういつは放っておいていくぞ。
ペイン弾では死なんぞ」
「わかりました」
男は仲間を心配しながらも去って行った、素直についていた。
「来ましたよ」
三雲は砂浜に寝そべったままの三雲は茂蔵に狙いを定めた。
普段の軽い乗りの三雲の面影がまったく無く、
冷たい目をして神経を集中し
5mの射程距離に発射するタイミングを計っていた。
「バーン、バーン、バーン」
三雲は茂蔵に3発連続で弾丸を発射した。
その瞬間茂蔵は横を向き腕で自分の顔を覆った。
「誰だ!仁木か?三雲か?」
いきなり正面から攻撃されて茂蔵は怒って
弾丸が発射された方へ大きな体をゆすって走って来た。
三雲は向かってくる茂蔵にピストルを撃ったが
ことごとくそれをはじいて言った。
「くそ!効かない」
三雲は弾丸を撃ち尽くすと足に付けていたナイフホルダー
からナイフを抜いて構えた。
「なるほど、三雲の方か」
茂蔵はそう言ってナイフを取り出し
三雲に向かって刺そうと手を伸ばした。
三雲は定石通り右に避け茂蔵の右手に切りかかった。




