第6話 199X年 12月 1/3
本店からの出向者の俺たちを「腫れ物扱い」しているのは2号店の社員たちだけで、バイトたちの態度には敵意は感じられなかった。むしろ歳が近い仲間が増えて嬉しいけど2号店の社員の目もあるし……とでも、言ったところだろうか。
何十人もバイトが集まる職場では、それをまとめる中心人物というものが必ず存在する。
「かっちゃん」と呼ばれる勝己というバイトが、その人物だった。
「阿藤さん。来週俺の部屋でクリスマスパーティーをやるんです。よかったら一緒にどう? 本店の店長も呼んでもいいっすよ」
勝己は俺の一つ上の歳で22歳。だけど「本店からの出向者」という事で、一応「さん」付けで呼ばれている。
「……いいの? 俺たちが言ってもお邪魔じゃない?」
「何言ってるんすか。全然OKすよ。……いやね、俺たちも2号店の社員たちには、言いたい事がたくさんあるんですよ。しっかり愚痴聞いてもらいますよ」
2号店の中でも、色々問題はあるらしい。
「で、23日は大丈夫すか?」
「23日……うわっ。確かその日だけ、バイトが足りないから遅番だ、俺」
「じゃあ仕事始まるまで参加って事で!」
「お、ちょっと待って……遅番で8時から仕事だから、そんなに居られないよ。それに仕事前だし、酒も飲めないよ」
「それでもOK! みんなで楽しくやりましょう! 当日は早番の休みの子たちに俺の部屋の鍵を渡しておくんで、飾りつけとかしといてください」
自分の部屋の鍵を渡すなんて、なかなかフランクな奴だな、と俺は思った。