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温泉宿の部屋は絶景だった

第二章

その4 温泉宿の部屋


無事に二人と猫1匹の受付を終わらせたことに、ほっとしたら、

「ニャン! ウニャニャにゃ!」

と、穂乃花の服の中から顔を出さずにニャン吉が抗議する。

どうやら “猫じゃないもん”抗議のようだ。


悪かったよ、“3人の受付”だったよ、と心の中で訂正すると、

「にゃお~ん」と鳴く。

・・・なになに、余はそれで満足じゃ・・・。

それは何より・・。

しかし、何故、俺の考えたことがわかる?


そして受付を終えた今、部屋への案内係の人と、昇降機へと向っている。

知っている? 昇降機。エレベータともいう。


案内の女性は昇降機の前に着くと「開けゴマ」と唱えた。

すると、エレベータのドアが開く。

をぃ、その呪文は日本じゃないだろう!と、つっこもうとして前を見る。

目の前には、野原が広がり遙か遠くの景色がよく見える。

昇降機のドアの向こうは、外じゃないか?! 非常出口なのか?そうなのか?


「あの、外に出てしまいますが?」

「?・・・あ、説明不足をお詫びします、海外の方でしたね。

 昇降機は目の前にありますよ。

 透明で見えないだけです。

 材質は黒曜石との化合物でできており、透明ですが安全な乗り物です。

 足下は透明でないので見ていただくと分かりますが、半径5m位の円筒型です。」


う~ん・・未来的すぎる。

たぶん、ロープで引っ張り上げるエレベータじゃないよ、これ・・。


「それでは、前にお進み下さい。」

案内により、恐る恐る乗り込む、いや、外に数歩踏み出すというべきか・・

入ると自動でドアが閉まる。


「昇降機内部で “部屋へ” と言えば、お部屋の入り口に到着します。

 お客様の生体認証を使用するので、部屋を間違えることはございません。

 お風呂へ、と言えばお風呂場に到着します。

 受付へ、と言えば受付に到着します。」

「分かりました。」


「それではお部屋に向います。

  “お客様の部屋へ”」


すると昇降機は揺れもなくゆっくりとスムーズに上昇する。

ゆっくりなのは景色を楽しむためだろうか・・。

壁に寄りかかりたいのだが、壁が透明でどこにあるか分からない。

分かったとしても透明の壁に寄りかかるには勇気がいる。


ふと、ドアの有った方を見ると、ドアが消えていた。

足下以外は全方向が透明で外が見え、見晴らしがよい。

斜め右下に、ホテルの縄文式住居の屋根が見え、次第に小さくなっていく。

円錐形なのがよくわかり、大きさはやはり人が5人車座に座れる程度の大きさだ。


日本史でならった縄文時代は、本当はこのように進んだ文明だったのだろうか?


そうこうするうちに、遙か彼方に薄い雪化粧をした北アルプスが見える。

ん? 北アルプスだよね、あの形状はどう見ても・・・、ここ日本?

考えていると、展望するには程よい高さで昇降機は止まり、目の前に扉が現れた。

現われると同時に、ゆっくりとドアが開く。


「昇降機の出口は、お客様の部屋の入り口となります。」


ドア越しに見ると、ふすまと、かまちが見える。

うん、和式だ。

靴を脱いで框に上がり、襖を開けて中に入る。

10畳ほどの畳部屋で、四方の壁は落ち着いた京壁だった。

壁は葦ではないんだ・・・しかも畳か・・


全員が部屋に入り案内の人が襖を閉める。

すると床以外が透明になり、絶景が360度見える。天井も透明だ。

「すごい! きれい! すぃーとるーむ! ごうじゃす!」

と、穂乃花が飛び跳ねて喜ぶ。

可愛いけど、誇りが立つからジャンピングは、やめようね。


受付の人が部屋の説明を始める。

「部屋は亜空間にあります。

 昇降機の止まった位置から見える風景をそのまま投影しております。

 外部からは、この部屋は見えません。亜空間にありますから。

 他のお客様の部屋からも同様にお互い見えませんし、音も聞こえません。

 プライバシーは保たれます。

 外の風景の音を聞きたい場合は、そのように声に出して言って下さい。」


そう言って

「音を出して下さい」というと、小鳥の声、風の音が聞こえ始めた。

「音を消して下さい」というと、音は聞こえなくなり静寂な部屋となった。

「尚、外の空気を感じたい場合は、“風を通して”と言って下さい。」

そうすると気持ち良い秋の風が吹いてきた。

「風も不快な強さにならないよう、一定の強さ以上は調整されます。

 “風を泊めて下さい“。」

風は止まり、シンとした。


「何か分からないこととか、質問はございますか?」


それを聞いて何か忘れていないか考える。

あっ!、部屋を2部屋にするのを忘れた。

一部屋に若い男女が一組かよ!・・もう一部屋お願いしないと・・

そう考えた後、自分の中のもう一人の自分が考える。

うふっ! いいじゃん、一部屋で。

そして自分の中で二人の自分がお互い見つめ合い、結論が出た。

うん、このままでいいや。

しかし、私は断じてスケベではない!

健全なる発情期の男性だからである。


その時、斜め上を見るように考えていた穂乃花が、

「あっ!」と言って、 ポン!と手を打つ。

「部屋を二つにして下さい!」

う、気がついてしまった・・残念。


仲居さんは、穂乃花の話しを聞きキョトンとする。

「当然そのようにしておりますが・・・。」


?・・・どういう意味???と考えていると、

仲居さんが、穂乃花に壁に向い“開け”と言うように促す。


穂乃花は ?マークを頭に乗せながら「開けごま!」と変な呪文を唱える。

すると穂乃花が見ていた方向に襖のついて京壁が現れて襖が開く。

おや?と、襖越しに覗くと、別の畳部屋が見えた。


「閉まれ、というと閉まります。

 同様に男性のお客様、同じように開けと言って下さい。」


穂乃花が開いた襖と対になる壁に向ってやってみる。

向いの壁が現れ同じように襖が開いた。


「はい、これでお二人の部屋が登録されました。

 お嬢様の声で彼の部屋は空けられません。その逆も同じです。

 そしてお嬢様の部屋に男性の方が入ろうとした場合、はじかれて入れません。

 その逆も同様です。

 なお、お嬢様が悲鳴や助けを求めたり、あるいはお嬢さまが危機と感じた時は検知され、声をださずとも緊急指令が発動され、数秒以内に警備員が部屋に転送されます。」


う、なんだって!! 俺の健全なる発情期が!

そう考えていたら、仲居さんと目があった。

思わず、そっと目をそらす。


目をそらした先には、机の上に乗った温泉まんじゅうがあった。

温泉には、まんじゅうだよね、よきかな、よきかな・・

は~・・・・と、ため息が出た。

元気だせ、俺。


文字数を1話2000文字に納めるようにしていますが、なかなか難しいですね。

余計なシーンかと思い、削ろうか、どうしようか、と悩んだり、蛇足気味な表現なので削ろうかどうしようかと四苦八苦してみたのですが、堂々巡りとなります。推敲が下手ですね・・。


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