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怪奇語

パチ屋の女

作者: 怪談屋

あまり人に言えた特技じゃないんだけど、スロットが得意で、大体月に10万くらい稼いでた。


本業は外仕事をしてるんだけど、その日は酷い土砂降りで、仕事にならなくて早めに解散になったから、こりゃスロット打つしかねえなって、速攻でいつものパチ屋に走った。


しばらくスロット打ってて、まあぼちぼち稼げたから今日は辞めよっかなって感じで出口に向かってたらキモいの見つけちゃったわけ。


パチンコに座ってる女なんて最近は結構見かけるけど、ソイツは真っ赤なワンピースで、何年手入れしてないの!?ってくらいボサボサで長い髪垂らしながらパチンコ打ってんの。


しかも、ツイてないのか知らないけど、なんか叫びながらパチンコ台をバンバン殴ってるし、よく店員さんは止めねえなと思った。


何週間か経って、違う店に行ったらまたソイツと出会った。


前と同じ真っ赤なドレスで、案の定パチンコ台をバンバン殴ってるし、こうなったら人間終わりだなと思って眺めてた。


まあ眺めてても面白いんだけど、スロット打ちに来たわけだし、ソイツのことはほっておいていつも通りスロット打ちに行った。


たまたま俺が打ってる台の隣にスロット仲間のけいちゃんが座ったから、あのキモい女について聞いてみたら、やっぱり知ってた。パチ屋によくいる連中の間で有名らしくて、思わず笑っちゃったよね。


談笑もそこそこにして黙って打ってたら、けいちゃんの左肩にポンって真っ赤なネイルした手が乗ったの。けいちゃんは振り向いたらしいけど、パチ屋の姉ちゃんがコーヒーでも進めに来たかなって俺は放っといたの。けいちゃんは全然スロット打たないし、そんな長話することあるかなって思ってたら、


「おまえもこうなるんだからな!!!」


めちゃくちゃデカイ声が右後ろから聞こえてきて、ビビって振り向いたらあの女が立ってた。うわ、マジでヤバイやつじゃんと思って、なんとなくけいちゃんを見てみたら失禁して倒れてっし。


ちょっと笑いそうになったけど、けいちゃんが心配だったし、頭のおかしいヤツが近くにいるのも嫌だから、呼び出しボタン押して、店員さんに来てもらったの。


店員さんが何人か来てくれたんだけど、あの女じゃなくて俺がけいちゃんになんかしたんじゃないかって疑われちゃったわけ。


倒れてるけいちゃんは救急車に乗せられたんだけど、俺は店員さんに事務所まで連れてかれちゃったんだけど、そこから話が噛み合わないの。


店員さんは遠目で俺たちのこと見てたらしいんだけど、そんな女なんかいなくて、けいちゃんが勝手にぶっ倒れたから、隣にいた俺が疑われたらしい。


あんな派手な女見えてねえわけないから、監視カメラ見せてみろってダメ元で言ってみたら、本当はお客さんに見せちゃダメらしいんだけど、こっそり見せてくれたの。


そしたら、マジであの女写ってないの。一瞬俺が頭おかしくなったのかなって思ったんだけど、アイツがけいちゃんに向かって叫んだ瞬間、他の人たちも何人か振り向いてたし、そもそもけいちゃんもアイツのこと知ってたし、マジでパニック。


しばらくして他のお客さんであの女を見たって言ってくれた人が何人かいて、なんとか解放されたわけ。



流石にあの店には行きづらいけど、やっぱりスロットは打ちたいから、他の店でちょくちょく打ってたんだけど、どんなにいい台に座ってもいくら突っ込んでも全く勝てなくなっちゃったの。こりゃあの女にツキを全部持ってかれたかなって思って、あんまりスロットも打たなくなっちゃったよね。


何ヶ月かして、仕事終わりにたまたまコンビニでけいちゃんに出会ったから、あの時なんでぶっ倒れちゃったか聞いてみた。


「マジでアレはトラウマだぞ。お前、アイツの顔みたことある?」

真剣な顔してけいちゃんが聞いてくるから、「アイツの顔を近くで見たのけいちゃんだけだし、ぶっ倒れるくらい美人だったの?」

ちょっと茶化してみたんだけど、けいちゃんは無視して話を続けた。

「アイツの顔見た瞬間、なんかすげえモヤモヤしたんだよ。どっかでみたことあるなって。しばらく考えたら、分かっちゃって、めちゃくちゃ怖くなって、気を失っちまったよ。」

「けっきょくどんな顔だったんだよ?」

あまりにもったいぶるからイライラしてちょっと強めに聞いてみたら、けいちゃん、顔色悪くなりながらも教えてくれたよ。

「ガリガリにコケてて、なんか傷まみれだったけど、アレは間違いなく俺の顔だった。似てるとかじゃなくてまんま俺の顔だったんだよ。」



その話聞いてから、俺は完全にパチ屋には行かなくなったし、けいちゃんとも疎遠になっちゃったんだけど、アイツはマジでなんだったんだろうな。


「おまえらもこうなるんだからな」


どういう意味かは分からないけど、アイツと次に会ったらヤバイ目にあいそうな気がする。


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