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英雄の子であり復讐者イリス  作者: 海埜ケイ
3/20

報酬金




「はいよ、こいつが今回の報酬だ。またあった時は頼むよ」


 依頼所の受付の爺さんから報酬金を受け取ると、リュウグはすぐさま中身を確認した。

 隣でイリスが不思議そうに見つめている。


「ん? あぁ、職業柄、金にはうるさいんでね。ぼったくられてないか確認してる訳よ。あんたもそういうのしておいた方がいいぜ」


 イリスは目を見開き、「なるほど」と言う素振りを見せ、リュウグに習い袋の中を覗き込み、首を傾げた。


「あんた、何で首傾げてんだよ。まさか、お金の単位が分からない訳ないよなぁ?」


「金の単位は分かるが、報酬がどれだけ貰えるのか知らない」


「はあ? 知らないでこの仕事受けたのかよ!! 盗賊一人に付き銅貨五枚。ただし死体の場合は更に半分の銅貨二枚になるんだぞ。銅貨二枚あれば、この町の中級クラスの宿に泊まることができる」


 信じらんねぇと、呟くと、イリスは目を伏せ、袋に視線を落とした。


「宿に泊まったり、ご飯が食べられるだけ貰えれば良い。・・・銅貨三十枚か」


 イリスは満足そうに笑みを浮かべているが、それは笑えない冗談だ。

 リュウグはイリスの袋を引ったくると、依頼所の机に叩き付けた。


「おい、おっちゃん。悪い冗談は言わねぇ、正当報酬をちゃんと出しな」


 親の敵でも見るかのように目尻を吊り上げて、受付の爺さんを睨み付けると、受付の爺さんは面倒臭そうにリュウグに半目を向ける。


「何のことだ?」


「とぼけんな。今回、退治した盗賊の数は全部で十八人、内十一人はこいつが倒してる。十一人なら銅貨五十五枚、もしくは半銀貨一枚と銅貨五枚になるはずだ。ぼったくりもいいところだぜ?」


 受付の爺さんは短く舌打ちをし、イリスからお金の入った袋を引ったくり、別の袋を投げて寄越す。


「ケッ、守銭奴め」


「それはこっちの台詞。・・・てか、あんたも何ぼったくられてんだよ」


 怒りの矛先をイリスへ向けると、イリスはキョトンとした顔をしている。だが、リュウグが苛立っていることに気付いたのか、僅かに眉を下げ「すまん」と答えた。


「・・・別に謝って欲しい訳じゃない。ただ、あんたみたいな田舎者がいると、他の冒険者達の迷惑になるんだ。新米冒険者がこういった私腹を肥やそうとする意地汚い爺さんの餌食になる所なんて、あんただって見たくないだろ?」


 コクリと、頷くのを見てリュウグは肩を竦める。


「そう言った被害者を出さない為にも、俺たち熟練者は本当に気を付けないといけない。自分の為だけじゃなく、他人の為って思うとどうだ? 確認する気になるんじゃないのか?」


 イリスは腕を組み、少し考えると、また僅かに首を縦に振った。肯定されたことに、リュウグは安堵の息を漏らした。



「・・・ヘッ、“黄昏の暗殺者”に説法されたくねえ内容だな」


「―――っ。テメェ、どこでその名前を知った」


「裏界隈じゃ有名な話しだ、そっちの“蒼の野獣”さんもな」


 リュウグは苦虫を囓った風に、口をへの字にして踵を返した。対する受付の爺さんは勝ち誇ったようにせせら笑いを浮かべている。

 イリスは眉を寄せ、雑踏の中に消え行くリュウグの後を追い、肩を掴んだ。


「待て」


「・・・チッ、何だよ」


「ありがとう、報酬金のこと教えてくれて」


「別に。あんたみたいな間抜けのせいで他の冒険者が苦労するなんて事にならないように正当防衛しただけだ」


「それで他の多くの冒険者が助かるんだ、礼を言わせて欲しい」


 リュウグはようやくイリスの方を向いた。


「何か、あんたといると調子が狂うな」


「そう、か・・・」


「悪い意味じゃない、登っていた血が降りてきた。こっちこそ助かった」


ニッと笑みを浮かべるリュウグに、イリスは笑みを浮かべた。

「なあ、時間ある? 飯でも食わないか?」


「是非」


 リュウグは片手を上げ、イリスはリュウグの手の平を打って返した。




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