表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

最終話  マテリアルハンターズ

   最終話  マテリアルハンターズ


小鳥のさえずりの聞こえる朝。

シェイは太陽が昇り始めると、家の外へと出た。せいいっぱい背伸びをする。空気は冷たく目を覚ますにはちょうど良い。そのまま家の壁に寄りかかり、太陽を見た。太陽の光はシェイを照らし、体を温めていく。シェイはしばらく家の前から太陽や村の中を見た。

時間が経つにつれて人々は起き出す。シェイは家の中からの声に応え、朝食を食べるために家の中に戻った。

シェイは朝食を済ませると身支度を済ませ村の中心に向かう。中心に着くと荷物を置いて座り込んだ。

シェイたちは最近では村の中心に一度集まってから目的地に向かうようにしていた。

「よう。今日も仕事かい。」

シェイの背後から声が聞こえてくる。素早く振り向くと、大男立っていた。シェイたちを追いかけてきた猪を仕留めた男である。

「ええ、今日は森の奥のほうに。」

 シェイは立ち上がり、大男を見る。

「森の奥ね。」

大男はその言葉をゆっくりと口にする。

「あまり奥に行くと、大きな虎の餌になるかもしれないから気を付けたほうがいいぞ。」

大男はそれだけ言うと、体を反転させて歩き出す。

「と、虎って。」

シェイの言葉に大男は手を振るだけだった。シェイは再び地面に座り、レンとサラを待った。

しばらくすると、サラが現れた。

「おはよう。今日は早いね。」

サラはシェイの傍に座り込む。そして、自分の弓や矢を見始めた。

それからシェイとサラは何も喋らず、矢と矢がぶつかった時に発生する軽い音だけがその場に響いた。

シェイは仰向けになって空を見た。

「悪い悪い。遅れちまった。」

レンが二人の元へ走ってきた。走ってきたためか少々息が荒い。その声にシェイは起き上がる。

「揃ったね。」

シェイは立ち上がと二人を見た。続いてサラも立ち上がる。

「よし、行こうぜ。」

レンは二人よりも先に動き出す。シェイとサラはその後に付いて行った。

三人は村を出て森までの道を歩く。特に何も無い道。朝が早いものの荷物を載せた馬車が三人の横を通り過ぎる。

シェイは馬車が通り過ぎた後に気が付いて振り返る。先ほどの馬車は、前にシェイがぶつかった馬車だった。

「どうしたの。」

サラは立ち止まったシェイを見た。シェイはすぐに体を反転させて森へと向かって歩き出した。

「何でも無いよ。」

シェイは歩きながらサラへ言った。

そして、三人は森へと入った。見慣れた場所のさらに奥へと進んでいく。

突然、耳障りな音が聞こえてくる。

「まさか、あいつらか。」

 三人は剣を抜き、辺りを見回す。すると五匹の大蜂が三人に近づいてくる。しかし、三人にはもう恐怖など無く。一匹ずつ真っ二つにすると、毒袋を回収した。

「使わないのにどんどんたまっていくな。使わないといつか溢れるぞ。」

レンは毒を搾り出すサラを見て言った。

「いつか使うでしょ。いつかね。」

サラは毒を絞り終えると竹筒に蓋をする。

「さてと、早く奥へ行こうか。」

三人は再び森の中を歩き出す。しばらく歩くと、何処からか鳥の鳴き声が聞こえてきた。

「何処で鳴いているんだ。」

シェイは辺りを見回す。すると、三人の背後にある木の上に一羽の鳥が居た。葉に隠れてどんな鳥かは分からないが、何か嫌な予感がした。その木を前に何処かで見た事があるからだ。

「まさか、まさかね。」

シェイは自然と後退する。レンやサラも何かを感じ取ったようで動かずにじっと見ている。

すると、突然木に止まっていた鳥がこちらに飛んできた。

「白大鷲じゃないか。」

シェイは森の奥へと走った。レンとサラもそれに続く。

走りながらシェイは剣に触れる。しかし、そこでサラの言葉を思い出した。剣を抜けば、サラが止めるだろう。しかし、この状態でどうすればいいのだろう。

「やるしかないだろ。」

レンは立ち止まり。剣を抜いて体を反転させた。白大鷲がレンに近づいてくる。

「レン。やめて。」

サラの声がその場に響く。

白大鷲を見れば、羽を大きく羽ばたかせて空中に留まっている。

「来るなら来い。」

レンは剣を構える。シェイは止むをえず剣に手をかけた。サラのみ何もせずその状況を見守った。

しかし、白大鷲はそのまま何もせず戻って行った。

「逃げて行きやがったな。まあ、いいか。」

 レンは剣を収める。シェイは剣から手を離した。サラは安堵の表情を見せた。

白大鷲は先ほどまで追いかけてきたのに、突然何もせず戻って行ったのは何故だろうか。シェイは考えたものの、答えはでなそうなので止めた。

三人は再び森の奥へと向かって歩き出した。すると、先ほどよりも少しずつ辺りが明るくなり始めた。頭上を見れば木々の間から太陽が見えた。

「なあ、あれじゃないか。婆さんが言っていたのは。」

レンの視線の先には、大きな岩が一つある。その岩の周りには芝が生えており、その周りを囲むように木が生えている。そのため、岩の頭上には空が見え、そこから直接太陽の光が降り注いでいる。

「これみたいだな。」

シェイが岩に近づく。岩はシェイの身長よりも高い。シェイは岩に足をかけて登り始めた。レンも岩に登り始める。

「これじゃないか。」

岩に登ったシェイが岩に生えた薄い赤色をした花。お婆さんの言う通り花びらは四枚になっている。

「三本だったな。」

シェイとレンは見つけた花を取っていく。

「それにしても綺麗だな。もう一本。」

シェイはお婆さんの依頼の分とは別に自分の分として一本取った。

「取りすぎないでよね。私達が作っているわけじゃないんだから。」

サラを見れば袋を開けて、袋の口をこちら側に差し出している。シェイとレンは取った花を全部入れた。

「さてと、帰るか。」

レンが岩から飛び降りる。シェイも飛び降りようとした時、何処からか低い咆哮が聞こえてきた。

「な、なんだ。」

シェイは岩から飛び降り、剣に手をかける。レンとサラもそれぞれに自分の武器に手をかけた。そうしないと恐いからだ。

そして、木々の間からゆっくりと奴は現れた。その姿は白い虎であるものの、通常の虎よりも大きい。人間一人を簡単に飲み込んでしまいそうな口、木のような太さの足。

そして、白い虎は完全な姿を太陽の下にさらした。

シェイたちは動く事ができず、ただ白い虎を見るだけだった。

白い虎は三人を見て吼える。その咆哮は耳を塞ぎたくなるほどの大きさだ。

白い虎は飛び、三人の目の前に着地した。

「こんなの無理だろ。逃げるぞ。」

すぐにレンが走り出す。続いてサラも走り出そうとしたが、固まるシェイを見て、腕をひっぱって無理やり走らせようとする。

シェイの体が後ろに傾いた時、白い虎の右前足がシェイの目の前を通り過ぎる。風が顔にぶつかり一瞬目をつむる。

シェイは目を開けると目の前に居る白い虎と目が合った。白い虎は低く唸っている。

すると、シェイの思考が正常に近づく。簡単に死んでたまるか。シェイは心の中で叫んだ。

「逃げるぞ。」

シェイは体を反転させ、サラの手を握って走り出した。直後、背後に風を感じる。

三人は乱立する木々をかわしながら森の出入り口へと向かって走った。

白い虎の体は大きすぎるためか、木々をなぎ倒しながら近づいてくるため、二人との距離が長くなっていく。

「どうすりゃ逃げ切れるんだ。」

シェイは背後から来る白い虎を見た。白い虎は出来るだけ木の少ない所を選んでこちらに向かっている。このままでは相手が諦める前にこちらの体力が無くなる。

「倒すしかないか。」

シェイは立ち止まるなり、体を反転させ剣を抜いた。

「仕方ないわね。」

サラも矢筒から矢を取る。腰にある竹筒の蓋を取り、その中に矢の先端を浸けた。その矢をつがえ弓を引く。先端から液体が地面に落ちる。

「お前ら死ぬ気かよ。」

先に逃げていたレンも加わり、三人は白い虎を向かえた。

白い虎が木々をなぎ倒しながら近づいてくる。シェイはサラの矢を見て、サラの腰に付けてある竹筒を取った。

「ちょっと、何するの。」

シェイはサラの言葉を流して、自分の剣に液体をかけた。そして、レンに渡す。レンも同様に自分の剣に液体をかけた。レンは竹筒の蓋を閉めシェイの前に投げる。白い虎はその間にも三人に向かってきていた。

白い虎は三人にある程度近づくとゆっくりと近づいてきた。三人と少し離れたところで歩みを止める。

三人が武器を構え、白い虎は吼える。

シェイとレンは大声を上げながら白い虎に近づき、サラは白い虎の顔面に矢を放った。

矢が当たり、隙が出きた白い虎目掛けてシェイとレンは斬りかかった。白い虎が余りに大きいために、二人は白い虎の真下に入り込む。二人は真下から斬りかかった。

白い虎は後退して、二人を前足で放り投げた。二人は地面に落ちて転がる。

追い討ちをかけようとする白い虎の体に矢が刺さる。白い虎は目標を変え、サラに近づく。シェイとレンはゆっくりと立ち上がり、背後から斬りかかる。

シェイは白い虎に剣を突き刺した。白い虎に激痛が走ったのか、振り落とそうと暴れだす。

「竹筒を投げろ。早く。」

レンが斬り付ける間に、サラはすぐ傍にある竹筒をシェイに投げた。高く投げられた竹筒は、シェイの頭上を通り過ぎようとする。

そこで、シェイは白い虎の体を蹴って、竹筒へ向かって飛んだ。空中で竹筒を取ると着地して自分の剣が刺さっている所へ向かう。

シェイが剣に手をかけると、さらに一本の矢が白い虎の体に刺さった。サラを見ると、さらにもう一本矢をつがえ弓を引いている。

シェイは、自分の剣を無理やり振って刺さった傷口を広げると、そこへ竹筒の中の液体を全て流し込んだ。流し込み終えると、剣を抜き白い虎から離れた。

白い虎から離れて見ると、先ほどよりも動きが鈍くなっていた。

「レン。離れろ。」

レンはシェイの言葉に最後の一撃を与えると、こちらに向かって走ってきた。

「倒すんじゃないのか。また襲ってくるかもしれないぞ。」

レンはシェイと白い虎を見た。

「弱ってきてるよ。これ以上こちらに向かってくるなら倒すけど、逃げるなら逃がそう。」

シェイは白い虎を見ると、レンとサラを見た。

「それに、今回はこの白い虎を倒す事が目的じゃないんだから。」

 三人は無言で白い虎が下す決断を待った。

すると、白い虎は三人を見て小さく唸ると、森の奥へゆっくりと帰っていった。

「いいのかよ。倒さなくて。」

 レンはシェイを見る。レンにとっては倒して終わらせたかったようだ。

「だから、倒したって何になる。虎の皮が欲しいのか。そうだとして、取ったとして買ってくれるあてはあるのか。」

 シェイは遠ざかる白い虎を見た。体中に傷を付け、歩みは遅い。

「無駄な死はさせたくないんだ。」

シェイは体を反転させ、森の入り口へ向かって歩きだした。

「帰ろう。用は済んだのだから。」

レンとサラもシェイのあとに続いて森の入り口へと向かった。

森を抜けると、そのまままっすぐ村へ向かう。三人とも疲れ果て、歩みは遅い。

空を見上げれば光を失い暗くなり始めていた。

三人が村へ入ると、お婆さんと数人の村人が待って居た。

「遅かったね。大丈夫だったかい。」

 シェイとレンはその場に座り込む。サラは花の入った袋をお婆さんに差し出した。

お婆さんは袋を開けて中に入っている花を確認した。

「確かにあの花だね。ご苦労さま。だけど私が頼んだのは三本だから一本は返すよ。」

サラはお婆さんから袋と花を受け取ると、残った花をシェイに差し出した。

「シェイが取ったんでしょ。はい、あなたの分よ。」

シェイはサラから花を受け取ると、まじましと見た。そして、サラはシェイの隣に座り込んだ。

「みんな今日はお疲れ様。よくやったね。私から、あんたたちに採って来てもらう素材はもう無いよ。今後は、色々な人から頼まれた仕事をこなして報酬をもらうんだよ。」

お婆さんはそう言いながら隣に居る人たちを見た。

「彼らがお前達に頼みたい人達だよ。まあ、今日は疲れて居るだろうから、明日以降に話を聞いてあげなよ。」

お婆さんはそう言うと、一緒に居た人達を帰した。

「じゃあ、私も帰るよ。今日はゆっくり休んでまた明日から頑張りな。」

お婆さんはそれだけ言うと、自分の家へ帰っていった。

「さてと、俺は帰るよ。また明日な。」

レンは立ち上がると自分の家へと向かって歩き出した。

「さてと、私達も帰りましょうか。」

サラは立ち上がり、自分の荷物を持とうとした。

「待って。」

シェイが立ち上がる。そして、先ほど渡された花をサラに差し出した。

「これ、サラにあげる。受け取ってよ。」

サラは戸惑いながらもシェイから花を受け取る。

「ありがとう。」

サラはじっと花を見た。シェイはその姿を確認すると荷物を持って自分の家へ歩き出した。

「それじゃあ、また明日な。」

「あ、また明日ね。」

背後からサラの声が聞こえてくる。

シェイは振り返らずそのまま自分の家へと戻った。



次の朝。三人は揃って依頼主に会いに行った。お婆さんが一切関わらない依頼に三人は緊張する。

 シェイたちが依頼主の家を訪ねると、依頼主が家から出てきた。

「おう、待ってたよ。入りな。」

三人は家の中に入り、依頼主と真向かいに座る。

 シェイは左右に居るレンとサラを見ると、それぞれがシェイに頷いた。彼は一呼吸おくと依頼主を見た。

「何処で何を採ってくればいいんですか。」


そして、彼らは本当のマテリアルハンターになった。


    マテリアルハンターズ  完  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ