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第二話  はじめての素材

   第二話  はじめての素材


シェイとレンは村を出ると、そのまま森の中へ入った。森の中は太陽の光を遮っているために涼しく感じられた。

「さっさと見つけて、帰ろうぜ。」

 シェイはレンの言葉に黙って頷く。二人は早速辺りを見回して、薬草を探し始めた。

森の入り口から少しずつ奥に向かって薬草を探すも、見つからない。

「婆さんの言ってた薬草。見つからないな。」

レンが背中を伸ばしながら、シェイを見る。

「もっと奥のほうにあるんじゃないかな。」

レンはシェイの言葉にため息をつく。

「簡単だと思ったんだけどな。」

レンは頭をかきながらシェイを見た。

レンにとっては、すぐに終わってお婆さんからお礼がもらえる楽な仕事だと思っているらしい。シェイは薬草を探すために地面を見ながら思った。

「もっと奥に行ってみるか。」

シェイはレンの言葉に頷くと、今よりももっと奥へと進んでいった。

森の奥に進むにつれて辺りはどんどん暗くなる。しかし、大きな動物は見えず鳥の鳴き声だけが聞こえるばかり。

突然、何処からか草木が擦れる音が聞こえた。シェイとレンはすぐに音がした方向を見る。

すると、そこには探していた薬草があった。二人は近づいて薬草に触れる。

「これだな。よし、持ち帰ろうぜ。」

レンの声に、シェイは頷く。二人は薬草を土から引き抜く。

「あ、入れ物が無いや。」

シェイはそこで初めて気が付く。このままでは手で持って帰ることになる。

「仕方ないな。今回はそのまま持って帰ろうぜ。」

レンは近くにある薬草全部を採って両手に持っていた。

「さてと、帰ろうか。」

二人は薬草を両手に持ってその場を離れようとした。その時、再び草木が擦れる音がする。

二人が振り返ると、そこには猪が居た。

「ひゃっ。」

シェイは猪を見ると小さく悲鳴を上げて、ゆっくりと後退る。猪の体は大きく、何故今まで気が付かなかったのかと思った。

猪と二人の距離は約二メートル。薬草以外に何も持っていない二人に残された選択肢は一つ。

そして、選択肢を選ぶときが来た。

猪が勢い良くこちらに走り出してきたのだ。

「に、逃げるぞ。」

二人は同時に地面を蹴って森の入り口へ向かって走った。

猪は鼻息を荒くしながら二人を追いかける。

レンが背後の猪を一度見る。

「あいつ何で追いかけてくるんだよ。まさか、あそこはあいつの縄張りだったのか。」

「黙って走れ。森の入り口まで競争だ。」

レンの言葉を吹き飛ばすようにシェイは力強く言った。森を抜ければ、猪も諦めてくれるだろうとシェイは思った。

それ以降は、二人とも黙って走った。不規則に生える木々を避けながら走り続けると、森の中がすこしずつ明るくなり始めた。森の入り口が近づいている。

もう少し、もう少しだ。もう少しで森から出られる。シェイは太陽に照らされた森の外を見て思った。

二人は森を抜けると、立ち止まって一度森を見る。

「ここまでは追いかけて……。」

 シェイはもう大丈夫だろうと思いながら再度森の入り口を見た。

その時、森から猪が勢い良く飛び出してきた。

「来ただろうがよ。」

レンも猪に気が付く。すぐに二人は再び走り始めた。

村へ続く平坦な道を二人は必死に走った。村に近づくと、村に居る何人かが二人に気が付く。そして、武器を持ってこちらに走ってきた。

「お前らは村へ入れ。」

こちらに向かってくる男たちはみんな体つきの良い人たちばかり。先頭を走っていた大男が二人とすれ違ってすぐに、二人の背後から猪の悲鳴が聞こえてくる。すぐに振り返ると、大男が棍棒で猪を殴っていた。

僕らはそのまま村に入った。村の中には男達が猪を仕留める姿を見る人が何人か居た。その中にお婆さんとサラも居た。しかし、サラはすぐにどこかへ行ってしまった。

二人はお婆さんの所へ走って行った。

「猪にここまで追いかけられて来たとはね。今度からは何も持たずに行くのはよしたほうが良いよ。」

猪を仕留める男たちを見ていたお婆さんは、二人を見て言った。

「約束の薬草です。」

二人は手に持っていた薬草をお婆さんに手渡した。強く握っていたためか、薬草は良い姿をしていない。

お婆さんは薬草を受け取る。そして、薬草を見た。

「こんなんじゃ。お礼なんて出来ないね。今度からはこういうものは手に持たずに袋に入れることだよ。ほれ、これを使いな。」

お婆さんは、傍に置いてあった袋二つを二人に渡した。レンは渡された袋をよく分からないといった顔をしながら見ている。シェイも同じくよく分からずに袋を受け取った。

そして、お婆さんは村の外を見る。既に猪は仕留められ男たちに運ばれていた。

「それでも、おまけで猪が手に入ったんだ。少しは礼をしないとね。マテリアルハンターたちに。」

お婆さんは笑顔で二人を見た。

「えっ、マテリアルハンターって。」

シェイがお婆さんに聞く。シェイはお婆さんの言った事がよく分かっていない。

「マテリアルハンターって職業があるんだよ。今日あんたたちがしたことがそれさ。素材を採って来て報酬をもらう。」

お婆さんは二人を見て言った。そこへ、サラが小さな布袋、長さの異なる錆びた三本の剣、弓と矢筒を持ってきた。

「お婆ちゃん。言われたものを持ってきたよ。」

サラは手に持っていたものをその場に置き。布袋をお婆さんに手渡した。

「ちょっといいかい。」

全員が男の声のするほうを向いた。そこには、肉の塊を持った大男が居た。先頭を走って猪に向かっていった男である。

「おかげで食料が手に入ったよ。ありがとう。これがあんたらの分け前だ。やるよ。」

 大男はそう言うと、肉の塊を二人の手の上に載せた。肉の塊が意外と重かったのか二人の顔が歪む。

「だけど、今度からは自分達で仕留めろよ。じゃあな。」

大男はそれだけ言うと何処かへ行ってしまった。

「この肉どうしようか。」

シェイとレンは突然のお肉の登場にこれ以上何も持てなくなった。

「仕方が無いね。肉を持って私の家に戻るよ。サラ、持ってこさせてすまないね。私も持つよ。」

お婆さんは立ち上がり、サラが持ってきたものの一部を持って歩き出した。三人もその後に続く。

全員がお婆さんの家に着く。

「肉はその辺に置いときな。あとで切り分けてやるよ。」

お婆さんの言葉で、シェイとレンは肉の塊を調理場の空いている場所に置いた。

二人はすぐにお婆さんたちの所に戻る。

「さてと、続きを始めようかね。」

お婆さんは手に持った布袋からお金を取り出して、二人に分けた。

「これがお礼だよ。」

お婆さんはその後、サラが持ってきたものの中から二本の錆びた剣を取り出して二人に見せた。

「使ってなかった剣があったからね。あんたらにやるよ。」

 シェイとレンは長さの違う二つの剣を見せられる。しばしの沈黙の後、レンが先に声を出した。

「じゃあ僕はこっち。」

レンは短い剣を選らんだ。よって、長い剣はシェイになる。シェイにとってはどちらでも良かった。長い剣に決まった事で、この剣のほうが都合が良い事を考え始めた。

「決まったね。分かっているとおもうけど。これらは錆びていて使い物にはならない。さっきあげたお金があるだろう。そのお金で治して来るんだよ。」

お婆さんの言葉に、二人は驚く。これではお金をもらったのは確かだが、自由には使えない。

「自分のために使えるお金が欲しいなら。次の頼み事も聞くことだね。それと、今度からはサラも行くらしいよ。」

二人はお婆さんの言葉にサラを見る。

「えっ。」

予想外の事実に二人ともそれ以上何も言えなかった。

「残った武器がサラのだよ。こっちの武器ももしばらく使ってないから治してきな。」

お婆さんはサラに弓と矢筒と錆びた小さな剣を渡した。

「おっと、治すお金をあげてないね。ほら、これで治してきな。」

お婆さんは布袋からお金を取り出してサラに渡した。

「今から行って来な。と、言いたいところだけど。もうすぐ外も暗くなるだろうね。明日行ってくるといい。治したら次の頼み事だよ

。」

外を見れば、いつの間にか暗くなり始めていた。

その後お婆さんは肉を切り分け。三人はそれを持ってそれぞれの家に帰った。

シェイの家では夕食に肉が増えた事で何時もよりも豪勢な食事となった。

シェイは眠る前に、お婆さんからもらった剣に触れる。錆びてぼろぼろの剣は、簡単に折れてしまいそうに見えた。

「マテリアルハンターか。僕にやっていけるだろうか。」

 現時点では、どうなるかは分からない。だけど、ただ辺りを走り回るよりは良いんじゃないだろうか。シェイはそう思う事で、自分を納得させる事にした。

シェイは剣から手を離すと、目を瞑って眠った。

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