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動植物神話体系―Eukaryotarum Mythologia―

玉兎と金烏のはなし2

これは、まだ生き物たちがそれほどいなかった頃の話です。


白カラスさんは自由に空を飛び回っています。キラキラと光を反射する海面を眺めたり、そびえ立つ大きな山の頂に止まったり、いろいろなところに行きます。

金色に輝く瞳には、どこまでも広がる世界があります。白カラスさんが気持ちよく飛んでいると、空色の翼が視界に映りました。


「カラス楽しそうね!」

「ウグイスさん、こんにちは」


いつも元気なウグイスさんに、白カラスさんはおっとりと答えます。


「今日も素敵な一日だわ!あら、あの木、とっても大きいわ」

「あれは世界樹です」

「え!?もうあんなに大きくなったの!?」


世界樹は白カラスさんやウグイスさんよりも後から生まれた生き物です。ぷっくりとした双葉が雲を体にまとうまでに成長して、白カラスさんは感慨深く思います。

ウグイスさんはぴーるると歌いながら世界樹の枝に止まりました。


「世界樹、久しぶり!」

「おや、昼殿」


世界樹は落ち着いた声で答えます。

白カラスさんもウグイスさんの隣に降りました。白カラスさんは静かに幹の方まで歩きます。


「おやおや、黄金の君、貴方まで」


世界樹は無言の白カラスさんに話しかけました。世界樹にとって、白カラスさんは自分が纏う雲よりも高い場所にいる遠い存在です。その白カラスさんはじっと世界樹のことを見つめています。


「気になることがありますか?」


世界樹は伺うように答えを待ちました。

白カラスさんは一言。


「かわいい」


とだけ口にして、ひらすら翼で木肌を撫で続けます。世界樹はささくれがその羽に引っかからないか、びくびくしました。


「カラスは本当に年下好きね!」

「だってかわいいのですもの」


ウグイスさんも白カラスさんの真似をして、撫で始めました。


「うーん、ゴツゴツしてるわ」

「柔らかなあの葉が立派になって、かわいい」


好き勝手にされる世界樹は諦めたように「どうぞ」と二匹の行動を見守ります。満足した白カラスさんは今度は世界樹の根元まで下降しました。そこには、白い毛玉の塊が丸まっています。


「うささん」

「あれ、カラスさんだ」


耳を立てて周りをきょろきょろしているうさぎさんは、上を向いてようやく白カラスさんを見つけます。


「今日はここで昼寝をしていたの?」

「そうだよ、ここは暖かいから」


のんびりと会話をしている中、ウグイスさんが空から突進してきます。


「うさー!」

「ウグイスは落ち着きを忘れてきたね」

「久しぶりにうさに会えたのだもの、はしゃぎもします!」

「はしゃいでるのはいつも」


うさぎさんがあくびをして草を食んでいます。とてもマイペースなうさぎさんに、白カラスさんはほっこりとした気持ちになりました。

ウグイスさんがうさぎさんの上に乗って羽を毛づくろいをしながら何やら考え事をしています。パッと羽から顔を出したウグイスさんは、大声で話しました。


「そうそう、ビッグニュース!クラゲが生まれたの!」

「くらげさん?どんな子でしょうか」

「ふわふわして海に漂っている白い子らしいわ!」

「僕、クラゲにあったよ」


うさぎさんはゆっくりと話します。


「小さくておっとりしていた。他の海の生き物たちよりもゆっくりだったなぁ」

「マイペースな子なのね!」


ウグイスさんはバッ、と翼を広げて声高々に言い放ちます。驚いたのは世界樹だけで、白カラスもさんうさぎさんもいつも通りです。


「そうだ、海に行ってみない?ついでに、久しぶりに“お母さま”のそばに行きたいわ」


今にも飛び立ちそうなウグイスさんに、うさぎさんは首を横に振りました。


「僕はいいや。“お母さま”とは会いたくないし」

「どうして?」

「会うたびに鬱陶しく付きまとってくるの」


うさぎさんは耳を前足で撫でつけながらゆっくり話しました。


「うささんはことさら“お母さま”に愛されていますから」

「過干渉が過ぎるんだよね。ご主人様もあまり近寄りたがらないし」


機嫌が斜めになっていくうさぎさんに、白カラスさんは言葉を選びました。“お母さま”は偉大ではありますが、白カラスさんには遠い存在です。時々、怖いと思うことさえあります。


「それよりは、君たちと話をしていたいなぁ」


そういったうさぎに、白カラスさんはほっとしたのでした。

それから三匹はお互いの平和な日常の話をするのでした。


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