学園へようこそ
「”国立魔境学園”へようこそ。奈砂奏くん。貴方のクラスの担任の駿河小波よ。よろしく」
手に持った【学園の手引き】と印刷された冊子と電子端末の学生証を差し出してついてきて、と言って返事も聞かずにそそくさと歩いていく。
奏では黙って後ろをついていくだけ。
職員室の前から歩くこと数分。
「着いたわ。ここが貴方のクラス」
ガラ、とドアを開けて教室に入っていく、後に続いて教室に入ると一斉に視線が奏に突き刺さる。
「今日から同じクラスの奈砂奏くんよ、挨拶しなさい」
「奈砂奏です。よろしく」
自己紹介をしながら教室を見回す。
人畜無害そうな男子生徒。私おしゃれです的なオーラを纏ってる女子生徒。机に足を乗せている不良男子生徒。机に顔を突っ伏して寝ている女子生徒。
一言で言うと凄まじいくに個性的なクラスだ。
「挨拶が終わったなら空いている席に座りなさい」
小波先生が窓際の一番後ろの席を指さす。頷き黙って指示された席に向かう。
何処の学校にもある木製の安い机の上には花瓶には一輪の花が飾られていた。
前までこの席を使ってた生徒に手向けられた花か。
生徒が死亡する。それは学園では普通の事だ。ここはそういう学園だ。
花瓶を机の隅に動かし椅子を引き腰をおろす。
「HRで伝えるような事無いからこれで終わるわ。奈砂くん渡した学園の手引き読んでおきなさい」
小波先生はそう言って教室を出ていった。指示された通りさっき渡された冊子を開き読み始める。。
【学園の手引き】
・国立魔境学園。日本国家の支援により建てられた学園です。学園は男女別、一人部屋の全寮制です。
・この学園では生徒には境界門を通って異世界からやってくる魔物、悪魔、亜人と戦ってもらいます。結果に対してポイントによる報酬が支給されます。
・学園の生徒は体内に魔力を保有しており、境界門を通ることと、異世界での活動と異世界から持ち帰った技術『魔術』を使用できます。魔術については授業で詳しく説明します。
・異世界に行き、異世界の道具や生物などを採取・捕獲してきてもらうことがあります。
・国や機関などから依頼を自己責任で受けることが出来ます。(学園側では一切の責任を負いません)。依頼は危険度に合わせてポイントによる報酬が出ます。依頼は学生証に随時更新されています。受ける際も学生証から受けることができます。
・学園で起きた出来事、見聞きしたことを学園外に漏らすことは固く禁じられています。
・学生証は全校生徒と教員と連絡可能であり、学園内での全ての買い物はポイントを返して行ってください1ポイント=1円の加算になります。ポイントは現金に両替することも可能です。
学生証に学園側から情報の一斉送信、緊急事態の発生などを報せる機能があります。電源は切らずに常時オンのままにしておいてください。
学生証は破損した場合は速やかに申し出てください。すぐに代用のものを渡します。
パタ、と最後のページ読み終えて冊子を閉じ、学生証の電源を入れて設定を初める。
この学園は世間から見ればと全寮制の普通の学園。けれど、中から見れば異世界の敵と戦う学生。
クラスメイトは奏を入れて30人。
何が起こってクラスメイトが死亡するか分からない。現にこの席の前の持ち主は死んでいる。そしてクラスメイトが死んだのにみんな気にしてるいる様子も無い。
「読み終わったか、転校生」
下を向いていた視線を上げて前に向ける。
声の主は体を捻り後ろを向いている前の席の男子生徒だった。
「影行谷彦だ。苗字で呼んでくれるなよ、中二みたいでダサいからな」
「よろしく谷彦。俺は、自己紹介の必要ないな。にしても、苗字が中二っぽいから嫌いってどうなんだよ」
キーンーコン、カーンコーン。
チャイムの音が教室に設置されたスピーカーから流れていく。
「まあ、後で喋ろうぜ。夏樹」
分かった、と返事をして冊子を机の中にしまう。
小波先生がドアを開けて教室に入ってきたことで、お喋りをしていた生徒は速足で自分の席に座っていく。
「一時間目は魔術座学についてよ。初心者が居る事だからおさらいも兼ねて、質問しながら行くわ。海原|海月(かいげつ」
小波先生は教室に設置された黒板にも見える、大型ディスプレイをスライドさせた。横から”魔術とは?”という白い文字が出てくきた。
「はい」
黒髪に高い位置から降ろしているポニーテールが目印の海月が、席を立ち小波先生の質問に答える。
「魔術は、異世界の学問である。魔法を人間。つまり、私たちに使えるように形を変えたものを指します。種類はいくつかありますが、人によって適正が違って、使えるものと使えないものがあります。どの魔術にも詠唱が必要です」
詰まることなく、スラスラと質問の答えをしゃべっていく。
クラスのみんなも、おお!と驚きの声を上げた。
答え終わった海月は座ると、誰にも気づかれずにふぅ~、と息を吐いた。
「ありがと、次はこれね。影行谷彦」
げッ!?と小さく言いながら嫌々、席を立つ。
さっきと同じようにディスプレイをスライドさせて、新しい質問が出てくる。出て来たのは、”境界門とエネミーとは?”という文字だ。
「え~と、学園の地下と世界のあちこちにある。異世界と通じる通路の事で、基本は両方向開きっぱなし。向こうから来ることもあれば、こっちから行くこともあって。体内に魔力を保有している者のみが通ることが出来まる。あ~、学園の地下にある境界門は元々は一つだけだったけど、時間が経って大きくなり、ある研究の成果で、境界門を分けることで肥大化を阻止しました。え~、通じる先が元はバラバラだったけど、分けたことで先が固定されて、今では合計で4つを固定化できていて、現在は5つ目に挑戦中だったはずです。
異世界から境界門を通ってやってくる敵は”エネミー”と呼称され、魔力を保有しない者が攻撃しても倒すことは可能が、特殊な能力を持っていたするものもいます。基本的はエネミーに種類に応じて名前がつけられいて、弱点も分かってます。エネミーと戦う場合は地下に常時展開されている疑似空間で戦うことで外への被害をこんくらいでどうすか」
あ~やらえ~が度々混ざっているものの、説明としては申し分ないものだった。
小波先生は無いも言わずに手を振って座って良し、と指示を出す。
「流石に基礎中の基礎は答えられるわね。じゃあ、次はエネミーについて、せっかくだから全種コンプしたいわ」
悪乗りを始めた小波先生によってこの後の授業は、エネミーの名前、特徴、弱点、攻撃の対象方法、が授業が終わるまで永遠と続くことになった。