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phase.4-1

.4-1


ポータルの設置を終えてから数日が立ち、再び晴一朗がダイブする日が来た。

『分かってると思うけど』

智恵の忠告に晴一朗は頷く。

「わかってる。あくまでクロッカスの同伴ってことは重々承知だから」

『ならよし。行ってらっしゃい』

智恵の声が途切れた瞬間、視界がぶれるダイブ直前の不確定現象。

「行きますか。せーのっ」

よっとジャンプをして晴一朗はダイブし、直後冷たい潮風が襲い来る。

「うーっ寒」

晴一朗は体を震わせて息を吐き辺りを見回す。

広く綺麗で穏やかな海に晴れ渡る青い空、相変わらずこの世界の景色は綺麗だと晴一朗は笑みを零す。

視線を陸地に逸らした際に白い建物が視界に移る。

「なにか気になることでも?」

後からダイブしてきたクロッカスと合流し晴一朗は頷く。

「いや、あそこに天文台みたいなのがあるから気になって」

晴一朗が岬を指差すがクロッカスは訝しげな目で指差したほうを見る。

「智恵、あそこに何か見えるかしら」

クロッカスの問いに対して智恵は否定する。

『何も移ってないよ。断崖絶壁、晴一朗が指差してるところには何もないただの崖』

しかし、晴一朗の目には確かに天文台のような施設が移っているのだ。

「いいわ。晴一朗あそこに天文台があるのね?」

「間違いない……と思う」

自身のなさげなトーンにクロッカスはため息をつき晴一朗の瞳を凝視する。

それに晴一朗は思わず後ずさる。

「全く、冗談だったほうがたちが良いというのが嫌なところね」

クロッカスのその台詞に智恵が舌打ちをして問いかけた。

『つまり視えたのね。晴一朗の目から』

確かに晴一朗の目に映った天文台がクロッカスにも視えた。

「恐らく私達に見えない、それでいてカメラや写真の様な電子機器では見えないようにその場所自体がプロテクトされてると言うことかしら。しかも念入りに天文台の周辺まで見えないように。私達には崖にしか見えないようにして近寄らせないようにしている」

つまり確実に何かあると言っているようなものであり、外部からの電子機器の接触を嫌っているということは確実にリベラアニマのような非生命体に対して罠が仕掛けてあると予想も出来る。

それは見えて居る晴一朗以外に調査は不可能と言うことでもある。

「……判断は智恵に任せるわ」

その辺りの予想を加味してクロッカスは智恵に判断を委ねた。

『晴一朗はどうしたい?』

悩む事無く智恵は危険に足を踏み入れる本人に答えを求めた。

「行くしかないんじゃないかな」

自分には普通に見えている。つまりそれは晴一朗の様な生身の人間に必要になるものがあるはず。

『知ってた。……はぁ。死んだら駄目だからね』

「知ってる」

そう答えて晴一朗はその目に映る天文台を目指し、クロッカスはその後を付いていく。

十分もしないうちに天文台の根元までたどり着き晴一朗がそれを見上げるがクロッカスには何も見えない。

「流石に躊躇うわね」

クロッカスの目には後一歩でも踏み出せば落ちてしまうようにしか見えない崖だが晴一朗の目の前にははっきりと白い天文台がそびえ立っていた。

『晴一朗、今持ってる電子機器は?』

「えっと、携帯は置いてきたし時計も着けてない。持ってないと思うけど」

「じゃあその首に着けているものはどうかしら?」

クロッカスにそういわれてはっとしてチョーカーに触れる。

「どうしよう」

困った様子で晴一朗はクロッカスを見る。

「外したほうが言いと思うのだけれど」

「やっぱり?」

『ここまで来たら私も腹を括るからしたいようにしなさい』

智恵の許しを受けて晴一朗は息を吐いて考え、意を決してチョーカーを外してクロッカスに手渡す。

「ここで待っているから早く行ってきなさい」

「じゃあ、行ってくるよ」

晴一朗が一歩踏み出すとクロッカスの目先から晴一朗の姿が消えた。

「ここに何かがあるのね」

半信半疑で在ったが嫌でも納得せざる負えない。

「悪運だけは本当に強いから死んだりはしないと思うけれど」

なんとなく、なんとなくクロッカスは厄介ごとを引き連れて戻る晴一朗の姿を思い浮かべてしまった。

「……無いとはいえないわね」


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