phase.3-3
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晴一朗が正式に探索班となって数日が立ち、ようやく再び晴一朗がダイブする日が来た。
「うむ。ではそろそろ行くとしよう」
意気揚々と口にしたヴィクトリアをクロッカスが睨み付ける。
「そろそろじゃないわよ。何一つ彼に説明してないのだけれど?」
「百聞は一見にしかずとも言うであろう」
もっともらしいことを言って逃れようとするヴィクトリアに威圧感を増す視線。
「はぁ……。もういいわ、私が彼に説明するから先に心といってなさい」
「う…む。うむ、では先に行って待っておるぞ」
ヴィクトリアがそういって背を向けたところにピシャリとクロッカスが告げる。
「待たなくていいから。心と一緒に北東の方向へ進みなさい」
足を止めてヴィクトリアが振り向きクロッカスに言葉を返す。
「いや、待てクロッカス! 余が心と共にとなると晴一朗はどうなるのだ」
「私と行くに決まっているでしょ? 貴女と二人っきり、心と二人っきり、悪いけど不安しかないわ」
辛らつな物言いに晴一朗も口を挟みそうになるが確かに少しだけ、一抹の不安は確かに残る。
「そんなことないぞ! そなたもそう思うであろう?」
同意を求められ晴一朗はそっと視線を逸らす。確かに不安も残るがそれ以上にクロッカスがちょっと怖いと思っていた。
「そなた!」
「同意を求めないの。先に行って少しでも早く仕事を終わらせること」
うーうーと何か言いたげなヴィクトリアの背を心が黙って押していく。
「マスター。先に行ってますから。それと」
心がクロッカスを見る。
「マスターに何かあったらたとえクロッカスさんでも許しませんから」
では行ってきますと明るく心が会議室を後にした。
「…………変わったわね。あの娘」
まさか脅されるとは思っても見なかったクロッカスは目を点にしていた。
「なんか、ごめん」
「まぁ、貴方のせいじゃないから構わないけど」
長い髪を掻き揚げて左手で右ひじを支えて右手を頬に添えるクロッカス。
「じゃあまず、説明するからよく聞きくこと。まず現状の説明ね」
さてと立ち上がりホワイトボードの前に移動する。
「現状メインポータルを中心に半径10kmに2.5km間隔ごとにサブポータルを設置する作業の途中よ」
黒いペンでボードに絵を書いて行く。
「そして全部で東西南北と北東、東南、南西、西北の8方面への設置中、現在北東西南への設置完了済み。今日はヴィクトリア、心班が北東方面へ。私達で西南方面への設置ここまではいいかしら」
問いに対して晴一朗は首を立てに振る。
「じゃあ次ね、ポータルは一人二つ持ってダイブするから、前までは最大で6つしか持てなかったけどこれからは貴方のおかげで少しだけ効率化できることになるわ」
1方面4つのポータルが必要なのだから確かに一人増えるだけで仕事量の分担が減るなと晴一朗は頷く。
「当面は私と行動を共にしてもらうことになるけどいいかしら?」
「それは構わないけど。どうして?」
「智恵の最大限の譲歩よ。彼女は貴方が第一界へダイブするのを快く思っていないわ。だからせめて一番無茶をしない私を傍につけて少しでも安心して居たいみたいよ」
呆れた風に言うが気持ちが分からない訳ではないようでクロッカスもその提案を飲んでいる。
「ありがとう。助かるよ」
「まだお礼を言うのは早いと思うけれど、ありがたく頂いておくわ」
クロッカスは表情を変えずそういってボードの絵を消していく。
「さて。そろそろ行きましょうか」
晴一朗も立ち上がりクロッカスの後を追う。




