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君に届け、僕の声  作者: 高崎菜優多
9/14

月夜の日の放送

『今日はちょっと落ち着いてお話をしようかな。

最近ちょっとリアルでいろいろ立て込んでてね、疲れちゃったんだよね。』


イノリの放送は、今日はBGMも落ち着いたピアノ曲でいつもよりもずっと落ち着いていた。


*おつかれ!

*お疲れ様!まったりいこう。


イノリをいたわるコメントが流れる。


『みんなありがとね。』


いつもあっという間に終わる放送が、今日はかなりスローペースなこともあり、さらに早く終わったような気がした。


放送が終わると月哉はメッセージを送った。

イノリが心配だった。

それから何故か森村の姿と重なった。


イノリからの返信は早かった。

そしてすぐに通話がかかってきた。

そんなイノリの声は、少しだけ鼻声だった。


『月さん』

「どうしたの?大丈夫?無理してかけてこなくてよかったのに。」


どうしていいのかわからなかった。

いつも気丈なイノリの、弱った声。

さっきの放送は、相当無理をしていたに違いない。

泣いてる。声だけでもそうだとわかった。


『あたし、月さんとお話したかったよ。』

「ほんとに大丈夫?」

『うん。月さんってほんとに優しいね。』


先輩、優しすぎるんじゃない?

ふいに森村の言葉がよぎった。

女性に泣かれるとどうしていいのかわからない。

この前も、どうしたらいいのかわからなかった。


でも、ほっとけない。

イノリが好きだ。

本当の名前も顔も知らない。


『ごめんね、困るよね。』

「ううん。」

『あたし、月さんの声好きなの。』

「え?」

『あたしの大切な人に似てるの。』

「イノリさんの、大切な人?」


月哉は気になった。

運命の人に出会いたいと言ったイノリに。


「それは、運命の人?」

『わかんないの。いつの間にかそうなってた。』

「そっか。」


自分の声に似てる。

きっとマイクを通してるからそう思ったのだろう。

月哉はただイノリの話を聞く。

身近な人に重なって、さらに気になる。


『恋に恋してた。でもね、自分が恋してるって気づいちゃったの最近。あたしの一方的な片想いだけどね。

優しいの。とっても優しいの。あたしを助けてくれた人なの。』


そこで、イノリの言葉は詰まった。


『ごめん、これ以上は話せないや。あたし、素性は内緒だから。』


もしもイノリが自分のそばで泣いていたら、自分はどうするだろうか。月哉は考えた。


抱き締めて、目一杯甘やかしてやりたい。

でも、月哉は気づいたのだ。

それは自分じゃない。イノリが気づいた恋の相手。


『月さんごめんね。あたしわがままで。』

「ううん、いいんだ。」


でも、安心したんだ。

イノリは普通の女の子で、普通の人と同じように恋をする。

手の届かない場所にはいるけど、妙な親近感を覚えた。




***




森村は月哉の前に現れなくなった。

代わりに、月哉は森村の悪口を頻繁に聞くようになった。


「来たぜ、ビッチ。」

「室さんが可愛いから嫉妬したんじゃない?」


そんな話で盛り上がっていた。

森村は何も知らないふりをしてただ廊下を通り過ぎていった。


「月哉知ってるっしょ?モリムラキサト。」

「知ってるよ。あの子別に悪い子じゃなくない?」

「あいつ室ちゃんの彼氏とったんだぜ。最低じゃん。」


月哉は胸くそが悪くなった。


「俺は別に噂とか興味ないし。話した感じ別に普通だった。」

「月哉の前だからだぜ、きっと。」


そう言われても、別に信じなかった。

自分に優しすぎるんじゃない?って言ってきたあたり、誤解されるのが嫌だったのだろう。


イノリと森村が重なって仕方がない。

二人とも似たような凹みかたをしたし、二人とも似たように喋るし。


帰り際に、下駄箱には再び手紙があった。

今度は差出人がちゃんと書かれていた。



「今日、夜10時に。」


森村モリムラ 祈里キサト





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