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君に届け、僕の声  作者: 高崎菜優多
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君の手

いつの間にか森村が隣にいるのがデフォルトになっていた。

休み時間に屋上に行くのも。


「ねえねえ、これあげるよ。だからお菓子とか持ってたら頂戴。」


森村が渡してきたのは袋に入ったマカロンで、ねだってきたのは月哉がいつもプレゼントで貰う知らない人が作ったお菓子だった。


「こんなの欲しいわけ?」

「うん。」

「森村のこれ、手作り?」

「うん。昨日たまたま材料余ったから作らせて貰ったんだよ。マカロン好き?」


森村の手をよく見ると、かなり荒れている。


「マカロンは好きだけど、お前めちゃくちゃ手が荒れてんじゃん、大丈夫なの?」

「平気だよ。どうしても練習してるとね、手が荒れちゃうの。」

「練習?」

「うん。」

「なんの?」

「飴。あたしの家、洋菓子店だから。」


にやりと笑う森村は月哉に食べるように促した。

月哉がマカロンをかじると、さっくりしたマカロンの感触が口に広がる。

家で作るのは難しい。

料理好きの妹ですらマカロンには手を出さないと言う。


「え、すげえ!!うまい!!」

「よかったあ!あたし久しぶりだったから心配だったんだよね。」


森村は月哉が貰っていたクッキーの袋を開けた。

そして、何事もないかのように食べだした。


「ねえねえ、そういえばさ、イノリも昨日の放送で料理よくするって言ってたよね!あたし実は共通点多いのかな!」

「え!お前聞いたの?」

「だって先輩があんなにぞっこんなんだもん。気になるでしょうが。イノリって性格良さそう!あ、そこはあたしには似てないか!」


お前も性格悪くないよ。

と、月哉は思った。しかし、心の中に留めておいた。



***



「なあ、あいつ知ってる?」

「あいつってあいつ?あの長い髪の女。」

「そう。」


久しぶりに食堂で月哉は休憩していた。

たまたま近くに座っていた一年生の会話に、思わず聞き耳を立てた。

髪の長い女。彼らの視線の先には森村がいた。


「名前なんだっけ?」

「えっとたしか森村。下の名前はなんだっけなー、読みづらくて覚えてない。」

「キサトじゃなかったけ?なんか男っぽい名前だったような。」

「そうだっけか。」


月哉はその時初めて森村の名前を知った。

しかも、それは確実ではない。

さらに、会話は続いた。


「アイツさあ、ビッチらしいよ。」

「え、そうなの?あんな大人しそうな顔して?」

「アイツ室さんの彼氏寝とったらしいよ。」

「まじで!?」

「しかもさあ、学年中から嫌われてんじゃん。いじめられてるし。まあ、暇つぶしにはちょうどいいんだろうけど。」


続けて会話に耳を傾ける。


室さん、と言えば、一年生で凄く可愛いと噂の女の子だ。

野球部のマネージャーで、運動部の中心である野球部に囲まれているだけあって、上級生にも人気があった。


「身近に寝取るとかあるんだなあ。室さんかわいそー。」

「それな!しかも室さん彼氏って三枝さんだろ?ほら、野球部の」

「まじかよ!まあそりゃあハブられても仕方ねえな!」


あはは、と笑い声が聞こえてくる。


月哉は何だか腑に落ちなかった。

三枝が寝取られるなんて考え難かった。

三枝は月哉と同い年で、さらに仲も良かった。

運動部の中心人物で、背が高く頼もしい好青年。

確か少し前に室と付き合い始めたと聞いていたが、そんなぬだらしのない男だったような気はしない。


森村が嫌われている理由はこのよくわからない噂のせいだろうか。


噂の一人歩きはかなり怖い。

森村自身も、そんな男をたぶらかすような感じもしない。


月哉は食堂を離れて教室に戻った。









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