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君に届け、僕の声  作者: 高崎菜優多
3/14

今日の放送

『ゆったりまったりしたいんよ!夜のラジオです!』


月哉はいつもの通りにウェブラジオを開いた。

イノリの声は相変わらず優しく朗らかで中性的だった。


今日の話題は珍しく、リスナーからの質問コーナーで、恋愛相談だった。

相談のあと、自身の恋愛についてコメントがかかれていた。


「あー、僕の話?僕の恋に関してはノーコメントで。」


月哉はこの言葉にどきりとした。

どうしてもイノリの恋バナが気になった。

・・・・月哉はイノリに恋をしているも同然だったから。


「うーん、あえてゆうなら僕はね、自分がビビっときた人が、僕の運命の人だって思ってるんだ。結構恋に恋してる。」


静かで優しい気持ちの中に、秘められた女性らしさ。

声色でしかわからないけれど、でも、月哉は聞いていて切なくなった。

普段、イノリは自分のことをあまり語らない。

この回は、かなりレアな回になりそうだ。


「みんなのことは大好きだよ。でもそれは恋じゃないんだ。それはライクでラブじゃない。だから僕はみんなに何をアドバイスすればいいのかよくわかんないけど・・・・・でもね、恋をする、誰かを愛することってとても素晴らしいものだと思うよ。

人は誰かに愛されて暮らしているんだから。

孤独とか、独りぼっちって自分で感じていても、人生のどこかで自分は誰かに愛されてることを気づかされるんだ。」


イノリの言葉に月哉は胸がキュンと引き詰められた。

そして、年子の兄を思い浮かべる。

兄は恋人ができて変わった。

無口で読書好きで無表情が多かった兄が、恋人によって今は優しい顔になっていた。


そしてイノリのその口調から、イノリはどこかで孤独を感じたことがあると何となく察しがついた。

歳も知らない。けれど若くもないし年上にも聞こえない。

月哉はもどかしくなった。



***




「いたー!探したんだけど!!」


ちょっと強めの声が、学校の屋上に響いた。

その声には覚えがあった。

月哉は瞑っていた目を開ける。

そこには、少しムスッとした少女が立っていた。


「なんで教室にはいないの!」

「森村さんか・・・・。いいだろ。別に。」


月哉はスマートフォンの画面に目をやって軽くスワイプした。

それに気づいた森村が、今度はそれに触れてきた。


「あれ、青柳先輩ってそれやってんの?なんだっけ、ニッコリ生放送だっけ?」


森村は月哉の隣に腰を下ろした。


「意外だなー。青柳先輩ってスポーツ一筋って感じで、そうゆうオタクっぽいの好きじゃなさそう。」


そうだ。みんなそうゆう。

なんだか今日は森村の言葉にちょっと頭が来た。

でも、森村は続ける。


「でもあたしね、今思ったの。青柳先輩が普通の人でよかったーって。」


森村のその言葉で、いらいらした気持ちは消し飛んだ。

なんて単純なんだろう。

この人もまた、不思議な雰囲気を持っている。

それは、なんだかイノリに似たような。

森村は月哉に袋を渡した。


「あ、そうそう!これありがと。返すね。ロッカー入れとくのひやひやだったんだから。あたし普段からいじめられてんのに青柳先輩のジャージ持っているなんて知られたらいじめどころじゃすまないもん。じゃ、返したから。」


森村は立ち上がると、手を振って戻っていった。

月哉は教室が嫌いな訳じゃない。

クラスメイトも友達も好きだ。

でも、たまに思う。「自分は完璧じゃない」と。

みんな月哉を凄いと褒めて、そして頼る。

知らない後輩からは黄色い声援が送られたりする。

だからなのか、時々一人でいたい。

みんなではしゃぐのは嫌いじゃない。

でも、なにかが違う。


そんな状態の時に、森村は現れてジャージを返した。

それもなんの躊躇もなく、普通に、まるで普通の友達かのように。


袋をあけると、フワッとした香りがした。

ジャージが洗濯のいい香りがした。




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