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君に届け、僕の声  作者: 高崎菜優多
14/14

君だけの放送



それから1ヶ月の月日が流れた。

森村の怪我はほとんどよくなった。


屋上に行くと森村はフェンスに寄りかかり眠っていた。

月哉は森村を起こさないようにそっと隣に座った。


しばらく見つめて目を伏せる。


相変わらずボロボロの上履きに薄汚れたスカート。

カーディガンとシャツはかろうじて綺麗だが、服から覗いている素肌には、まだ傷跡が残っていた。


室からの嫌がらせは無くなったものの、いじめそのものは無くなっていない。

なぜなら真実を知っている人の方が少ないし、インターネットで広がってしまったものはなくならない。

まだほとんどの人に無視されたり、陰口を言われたりしている。


月哉はもう一度森村をみた。


本当は、今でも信じられない。

森村がイノリであったことが。


なぜなら、まさかこんな奇跡みたいなことがあるなんて信じられなかった。


インターネットの普及率は高くなり、日本中、いや、世界中の人がインターネットを楽しんでいる中で、こうしてネットの中の繋がりがこんなふうになるなんて思ってなかった。


しかもそれは自分の憧れていた人で、ずっと手の届かない人だったから、なおさらびっくりしてしまった。


隣にで寝ていた森村が、ピクりと動くとまぶたが開く。


「あれ?先輩いつ来たの?」

「さっきだけど。」

「起こしてよ〜。あたし間抜けな顔して寝てたでしょ?」

「してたよ。」

「最悪」


そう言いながら乱れた髪を直す。


「あ、そうだ、これ渡そうと思ってたんだよね。」


森村はポケットから小さな袋を出した。

それから、月哉の手に乗せると言った。


「今日の放送の時に開けて。今日の放送聞ける?」


森村は月哉を見つめていた。

その姿が妙に可愛くて、月哉は見とれてしまい、慌てて返事をした。


「何時?」

「いつもの時間」

「わかった。」


月哉はそう返事をすると、森村は屋上から立ち去っていった。

少しだけ様子がおかしい。

そう思いながらも、小さな包みを見つめた。



❇︎❇︎❇︎❇︎



『みなさんこんばんは!今日の放送はじめるよ!』


イノリはいつ通りに枠を始めていた。

それから、イノリはいつものように雑談をして、いつものようにコメントを読みながら、楽しそうに枠を続けていた。


それから、月哉はキサトから貰っていた包を開けた。

中にはカラフルなキャンディが、ひとつひとつフィルムで包まれていた。


『そうだ、今日は大切な話をしようと思ってたんだ。』


放送時間、残り5分。

月哉はドキリとした。


イノリは話始める。


『この前ね、お菓子屋さんで教わったんだ。

愛してる人には、キャンディをプレゼントするんだって。

だからね、僕、今日、自分のとっても大切な人にキャンディをプレゼントしたんだ。

その人はすごくいい人でね、僕を助けてくれた人でね、気が付いたら好きになってた。

その気持ちを込めてプレゼントしたんだ。

きっと今日もこの放送を聞いててくれてる。』


イノリはそこまで言うと「えへへ」と照れ臭そうに笑った。

月哉は急に恥ずかしくなった。

少し前、靴箱に置かれていたキャンディのことを思い出す。

あの時から、自分に好きだとメッセージを送っていたのだと気づいた。


そして、心の中でつぶやく。


(くっそ!かわいいかよ)


それから月哉はにやけながらも放送にコメントを打ち込むのだった。




end











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