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君に届け、僕の声  作者: 高崎菜優多
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画面越しの想い

月哉はパソコンの電源を入れた。

それから慣れた手つきでロックを解除して、インターネットブラウザを起動した。

あと1分。月哉はふう、と息を吐くとヘッドホンをつけた。


今日は、ウェブラジオの放送日。

月哉はそれが楽しみで仕方がなかった。


顔も、本名も知らない、たぶん誰一人とて見たことは無いだろう。

名前を『イノリ』と言う。

パーソナリティの声の主は柔らかで朗らかな中性的な声。

女性か男性かはわからない。

中性的な声で、一人称は僕。

声色は多彩で、たまにやる芸能人やアニメの声真似がそっくりで感動した。


放送が始まった。

ライブ配信。

世の中便利になったものだと月哉は感じた。

スマートフォンやパソコンがあれば、誰でも簡単にラジオの放送が生中継でできるようになった。

パソコン用のマイクだって、音質を気にしなければ千円もかからない。


『閲覧6名の人ありがとな!ゆったりまったりしてってくれな!』


イノリは閲覧数が多い配信者ではなかった。

大手と呼ばれる配信者は、閲覧数が2000人くらいはいくだろう。

しかし、イノリは少ない閲覧数だった。

それでもコアなファンが多く、開始から5分後には常に10人くらいの閲覧者が出入りすることなく最後まで配信を聴いてるのであった。


月哉もその一人で、イノリはたまたまネットサーフィンをしているときに見つけた。

閲覧数は多くないのに、落ち着く声色に惚れ込んでしまった。

性別は謎だったが声の質的には女性だと思う。

たまに出てくる可愛らしい振る舞いに、胸がどきどきした。


不思議だった。

イノリの声を聞くと、胸がいっぱいになる。

きゅっとして、どきどきして、どうしようもなくなる。


『月くんいらっしゃい!ゆっくりしてってな!』


自分のラジオネームを読んでもらえるだけで、嬉しくなった。

そう、このラジオ放送は、オンタイムでコメントが可能である。


声しか知らない。

歳も知らないし、住まいも知らない。

顔は見たこともない。

学生か社会人かもわからない。

わかるのは、イノリがいつも定時でラジオの放送をすることだけだった。

イノリいわく、実物を見たら幻滅するだろうから、とゆう理由から姿を見せることは無いと言う。


きっと幻滅なんかしないのに。

月哉はそう思いつつ、ラジオに耳を傾ける。

優しくて、綺麗な言葉の流れ。


この時間は現実が忘れられた。

まわりにイメージされた自分がそこにはいない。

誰にも縛られることもなく、自分を演じることもしなくていい。

包み隠さなくても、本音を言うこともゆるされる。

祈りに密かに抱いている恋心だって、このなかでは自由なのだ。


一回30分の放送はあっという間だった。

そして、月哉はインターネットを閉じる。

ベッドに直行して、身を投げた。



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