日本在住の女神さんのその後。
神使に差し出された三九日の餅をパクつきながら、女神イシコリドメは、ご機嫌な口調で、スマートフォンを片手に、東京見物中の異世界女神アナスタシアに感謝の言葉を贈っていた。
「いや~ホント助かります。
アナスタシアさんの所で、不遇な日本人を受け入れてくださって、いや、ほんと、クリックミスで、まさか、あんな事故が起こるなんて。
もし、素早く、アナスタシアさんの世界に放り込めなかったら、どうしようかと。」
イシコリドメの言葉に、スマートフォンから、明るい声が帰って来る。
「いえいえ、全然かまいませんわ。
うちの世界では、魔獣が多すぎて、人種の生存権が、ちっとも大きくありませんもの。
こちらの学生さん程度の知識人でしたら、ウエルカムですわ。
でも、スキルがゲームって不憫でありませんか?
剣とか、魔法とか実用的なスキルが無いと、すぐに死んでしまいますわよ。」
「私もお詫びに、チート武器とか~、チートスキルを一つくらいは送ってあげたかったんですけど、、、くっ付いちゃったゲームとやらのシステムが、予想外に重くて~、全然、容量が残って無かったんですよね。
やっぱり、神じゃない人の身で組み上げたシステムなんて、無駄ばかりで必要以上に大きいんでしょうね。
あんなの弄っていたら、とうかんやの出発まで、間に合いそうもありませんもの。
勘弁してくださいって感じで、問答無用で、アナスタシアさんの世界へ落としてしまいましたわw」
「まぁ~全くの無防備ではないようですし。
戦車でしたか?
うちの世界では、小回りの利かない戦車は、ずいぶん前に廃れてしまいましたが、この東京の街を見物していると、便利なのは良く判ります。
この乗用車って馬の要らない魔導車に、兵士を載せて駆け回るんですよね?」
「えぇ~、私は日本の鍛冶神の一人ですけど、専門は青銅器とかなんですよね。
だから、鉄を使うのは、アメノマヒトツとかに任せっきりなんで、戦車については、全然詳しくないんですけど、、、。
あ、でも、この間、この国全土が戦火に塗れた時、甥っ子のタケミカヅチが、何、我が国の戦車、紙装甲!!って、絶叫してました。
紙でできた鎧って、呪符の戦車かしらら?って思ったから覚えてますよ。
まぁ~我が国は、戦争で負けて以来、戦争を放棄し、軍を持たず、自衛だけを目的に、自衛隊ってのが居るだけの何十年も戦争をしてない平和な民ですから、私も銅の鍋とか、そんなのばかり作っているんですよ。
天香久山で取れた銅で、立派な矛を作ったのが、武器を作った最後だから、千年以上、武器なんて作ってないんですよね。
平和なもんです。
まぁ~彼が弱くても、システム的にね。
死んでも、ミッション中は、何度か復活出来るみたいですし、それさえ、失っても、システム内通貨が尽きるまでは、無制限に戦車は修理できるし、その間は不死身だし、システム内通貨は、現地通貨と両替出来るようですから、大丈夫じゃないかと。
それよりも、アナスタシアさん、神在月に着ていく衣装、揃いましたか?」
2柱の女神は気が合うらしく、それからも楽しいお話が続いているようである