遠足は帰るまでが、帰るまでが、もう一度、遠足は帰るまでが遠足です。
イライラしながら草原を掛ける。
やっとの思いで、緩い傾斜を登り切り、丘の天辺を超える。
時速30キロ前後から、丘の上を目指すにしたがって、段々と傾斜がきつくなり、時速18キロまで落ちたスピードが、天辺を超えた瞬間、坂を転がるように加速していく。
しかし、坂を超えてすぐに街道が走り、馬車もあった為、急制動を掛け、馬車と右側の盗賊達の間に割り込むように停止する。
戦車から意識を戻し、砲塔から顔を出して、馬車付近の騎士達に話しかけた。
「僕たちは、通りすがりの戦車乗りです。
見た所、悪党に囲まれて困っている様子。
宜しければ、お助けいたしますが~。」
大声で、話しかけると、馬車の最も近くに居た騎士が大声で返してきた。
「チャリオット?
馬の要らぬマジックアイテムか?
なんだか判らぬが、非常に助かる。
馬車を守るため、是非力を貸してほしい。」
騎士が返答した直後、砲塔に居た兵士が僕を砲塔の中に引きずり込む。
次の瞬間、カン、カン、カンっと戦車の車体に何か当たる音がする。
意識を戦車に戻すと、オストヴィントに向かって、盗賊達が矢を放ってきているのが見えた。
盗賊達の殺意にゾッとした。
オストヴィントは、自走式対空戦車。
視界を良くする為に、砲塔に天井は無い。
弓形に矢を放たれれば、幾らでも矢玉は飛び込んでくる。
鎧も兜も付けてない状態で、そんなものを受けたら、絶対怪我をする。
下手をすれば死ぬ。
次の瞬間、一塊の盗賊達の右端に照準を合わせ、ドッドッドッドッドッドッドッドンとセットされていた徹甲榴弾を右から左端へ横薙ぐように、8連発、37mm砲から吐き出した。
盗賊達は文字通り消滅し、その場から後方にかけて広範囲に渡って、血の雨と肉片を降らしている。
逃げるように意識を車体正面に向け、2秒ほど全速前進、直後、右のキャタピラだけを前進し、左旋回を行い、180度車体を回転させる。
回転後、急制動。
照準を反対側の盗賊達の左端に合わせ、同じように8連発で左から右端へ薙ぐ。
ミッションコンプリート。
騎士から助力を請われ、約10秒で、オストヴィントは盗賊達から馬車を守った。
その証拠に、視界の端にある戦術マップから、敵の表示が消えている。
ひょっとしたら、盗賊で生きてる奴が居るかもしれないが、システム的には制圧完了なのだろう。
完璧だ~
戦車から意識を外し、砲塔から顔を出す。
目に映ったのは、暴走する馬車。
狂乱する馬達、振り落とされまいと必死でしがみ付く騎士たち。
あっ、落ちた。
ミッション終了後、守るべき馬車と騎士たちは、壊乱しつつあった。