雷がやってきた。(騎士隊長視点)
油断した~
今、王女を護る騎士隊と王女が乗る馬車は、100人できかないであろう盗賊団に包囲されつつある。
ヤクス公路、王国南部を縦断する街道の一つ。
その街道を王都へ向け、一路、北上していた我々は、正午を過ぎ、馬の休憩と遅めの軽い昼食の為、見晴らしの良い丘の中腹に上がったところで、街道の端に馬車を寄せ、休息しているところであった。
まさか、丘の下方にある湿地の葦原からワラワラと盗賊が現れ、街道の前後を塞がれてしまうとは。
我ら護衛の騎士は5人しかいない。
普通の賊なら10人前後、職業軍人たる騎士が5人も居れば、全く問題ない。
しかし、前後に50人ずつ抱えるとなると、かなり難しい。
我ら騎士以外に、馬車の御者が1人、まぁ~少しは戦えるだろう。
しかし、他には幼き王女と、側使えの女官が2人しかいない。
ここから見える分では、石弓や短弓を前後どちらにも10程はあるように見える。
どちらを突破するにしても、馬を狙われれば逃げられないだろう。
特に馬車は、避けることができるとは思えん。
矢を全て騎士隊が受けるつもりで、一団となって突っ込み、穿った穴に馬車を通すか?
しかし、ひとまとまりでなく、散らばれて矢を掛けてこられれば、騎馬は兎も角、街道を外れられない馬車はやはり無理だな。
うむ、どうすべきか。
命に代えても、アリス王女をお守りしたいのだが。
王女の護衛隊長、騎士ハリファは焦っていた。
盗賊は、街道の前後を塞いだ後、石弓や短弓を持った奴を前に、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
もう、100mも無い。
騎士の鎧や、王家の重厚な馬車は貫けないが、鎧を付けてない馬や御者は危険な距離だ。
悩んでいるうちに、50mくらいまで近づいてきた。
こんな快晴なのに、雷の音が聞こえる。
騎士たちは、馬車を守るために、馬車の前後に分かれ、剣を抜いた。
と、その時、丘の上から、雷がやってきた。