やり直していけませんか?
カウントがゼロになった瞬間、オーダー画面が消え目の前の草原に【オストヴィント】が現れる。
その瞬間私は【オストヴィント】になった。
そうとしか言いようがない。
手足の感覚がなくなりブレーキやアクセル操縦レバーが自分の手足になった感覚がある。
目的地であるゾーンの方角を見ると砲塔がそちらの方へ回転動作を行う。
それと一緒に視覚の中心に十字の照準が最初見えていた所から走ってきた。
オストヴィントの車体を上から俯瞰すると屋根の無い砲塔の中に親衛隊大尉の軍服を着た【僕】が居た。
手足となった主砲を発射すると「ドンドン」と大きな音を立てて37mm砲弾が2発発射される。
しかし上から俯瞰していた為照準が地面に向いていたようだ。
銃口のすぐ近くの草原から大きな土煙が上がり敷き詰めていた草を吹き飛ばし、抉られた地面から真っ黒な土を覗かせている。
今度はもっと発射の感覚を絞る。
そうすると先程と同じところに砲弾が1発発射され同じように土煙が上がる。
気を付ければ1発ずつでも撃てるようだ。
砲塔の中に居る【僕】は同じく砲塔に居る兵士達にアレコレと指示をしていたが、こちらとは感覚が切り離されているようだ。
あちらの【僕】の指示の言葉も【私】の耳には入ってこないし兵士たちの言葉も【私】の耳に入らない。
砲塔の中にいる【僕】に意識を集中すると、【私】の意識が反転し、その瞬間砲塔の中にいる【僕】に意識が切り替わる。
手足の感覚が元に戻り戦車の感覚は喪失する。
兵士たちの言葉も聞こえる。
「大尉殿時間がありません。今すぐゾーンへ急行しないと手遅れになりますよ。」
装填手と思われる左側に居た兵士が真剣な表情で喋った。
いかんいかん、急がねば!!
その瞬間、【僕】の意識は戦車に切り替わり【オストヴィント】は走り出す。
スピードが段々と上がり大体時速30キロほどになる。
不整地の草原を走っているので、カタログスペックの最高時速が42キロでもこれくらいが精一杯か、、、
限界まで前へ押し倒す感覚で全力で前進していたのを操作していたレバーの片方を少し緩める感覚で、、、左右の無限軌道の速度を緩く差を付ける感じでゾーンの方向へ滑らかに方向変換を果たす。
方向転換と共にスピードも少し落ちたが、全力で直進すると段々とスピードが戻ってくる。
このままだと、、、丘と言っても小さな丘だし、後3分くらいでゾーンに到達するか?
間に合えばいいんだが、、、
あっ!!しまった~
【僕】と【私】の意識が切り替わるんだったら、、、絶対外してはいけないセリフを言い忘れてしまった!!
僕とした事が何たるミス!!
仕方が無い!!
心の中で【オストヴィント】に乗っている兵士たちにこう命じよう。
「パンツァー・フォー!!」