敷島の大和心を人問わば朝日に匂ふ山桜花by本居宣長。
国境防衛を諦め、後退を始めて4日目。
国境と王都との中間に位置する要衝、マッカラン要塞で、僕たちは、聖女神教連合軍、5万に包囲されていた。
え、10万じゃないのか?って、
頑張って減らしたんだよ!
国家存亡の危機と言うか、僕の破滅が迫ってるから、出し惜しみせず、足の速い戦車を小隊単位で連合軍の後方に回したの。
確かに、僕の手を離れてしまうと、新兵以下の動きしかしない。
それでも、全く役に立たない訳じゃない。
普通の兵士にとっては、機関銃や戦車砲はやはり脅威だから。
勇者を伴う大軍は、砲弾無効のスキルで手が出ないけど、その大軍を養う荷駄隊などは、きちんと攻撃が通る。
だから、勇者軍の後方を、戦車小隊に荒らし回って貰ったんだよ。
当然、対応されて、火達磨になった戦車や、落とし穴に落ちて、埋められた戦車など、計8輌も失ったけど、あちらもそれなりに兵を失ったみたい。
おまけに、補給路の維持に、相当数の兵を割いてるから、敵は、包囲してる傍から、兵を抜き取ってるようで、我慢比べだよね。
こちらの王国軍も、夜襲や、投石器とかの攻城兵器で、かなり痛めつけられてるんだけどね。
と、膠着状態になっていた所で、向こうから軍使が来たよ。
何でも、別動隊を編成して、別ルートで侵攻して、王都へ向かってるらしい。
だから、ここを護っていても、意味がないから降伏しろだって!!
確かに、王都からも、軍使が来るのと同時くらいで、そんな報告が来たよ。
でも、降伏の条件が飲めるわけがない。
1つ目の魔王の処刑は、良いよ。
いや、あんまり良くないけど、、、
でも、女王、僕のアリスを勇者に差し出せって?
本気で言ってるのかな?
ブチ切れちゃうよ、僕。
確かに、砲弾無効は、大ピンチだよ。
戦車ゲームで、ドンパチ無効なんて縛りやったら、無理ゲ~だよ。
でも、戦陣轟雷は、それだけじゃないんだよ。
僕の本気見せてあげるよ。
と言う訳で、只今、上空700mに居ます。
そう、軽戦闘機に乗ってます。
いや、正確には僕自身が軽戦闘機だけどね。
こんな事なら、爆撃機も開発してれば良かった。
そうしたら、爆弾で事は済んだのに・・・
あ、でも、爆弾も砲弾無効に引っ掛かって、駄目かな?
うん、そろそろ、目的地だね。
何をするかは、みんな判るよね。
そう、神風だよ。
ゲームでは、当たり前のように、みんな突っ込んでいた。
まぁ~無事生還すると、PPが貰えるんだけど、戦車撃破の方が得だから、大抵は神風するよね。
もっとも、戦闘機は格闘戦をやる構造上、急降下すると上へ上へと逸れちゃうんだよね。
下へ下へと押し下げないとね。
そんな訳で、戦闘機の機銃の乱射を照準変わりに、戦闘機を降下させていく。
あっ、勇者が気が付いた。
うん、機銃が当たっても無効だから、すぐには判らなかったみたいだね。
判った瞬間、もの凄い勢いで逃げ出したけど、もう遅い。
僕は、ほんの少しだけ、軌道修正しただけで、勇者の後頭部へそのまま突っ込んだ。
刹那の瞬間、痛みを感じた気がしたけど、同時に、意識がブラックアウト。
1秒と経たず、覚醒した時には、戦車に乗っていた僕に意識が戻り、敵陣地で、朦々と湧き上がる黒煙を見ていた。
「ざま~ミロ。アリスはお前なんかにやらない!!」