嫁ぎ先が決まりました。(アリス王女視点)
「西に反乱在り、東に外敵ある国難に於いて、ユキタ男爵の武威は、王国を遍く照らし、全てを祓った。
その抜群の功を賞し、私、アリス・アムネリア王女の名に於いて、イリヤマ公爵に陞爵す。
併せて、封地として、旧カラン大公領と、白金貨5,000枚を与える。」
一騎当千と言う言葉があります。
私、アリス・アムネリアが、イリヤマ・ハルキ公爵に初めて会い、そして、助けられた時、その言葉が浮かびました。
万夫不当と言う言葉があります。
私、アリス・アムネリアが、イリヤマ・ハルキ公爵を10倍の敵に、死地へと向かわせて、彼の、そして、彼らの兵の本当の猛威を目にした時、、、
万夫不当が、言葉の綾でなく、確たる現実として、実在するのだと初めて知りました。
彼は、初めてあった時、大尉だと言いました。
遥か西の聞いた事もないような帝国の大尉だと。
出会った時は、たった一輌の、それでも、怖ろしいほどの力を秘めた一輌でしたが、、、
その後、功に報いて、寄るべき地を与えた時、その地に、中隊、数十輌の一騎当千が集いました。
そして、反乱鎮圧の隙を突かれ、絶対絶命の、私が死を覚悟した出征で、僅か40人!!
そう、僅か5輌が見せた彼の武威は、万夫不当でした。
その後も、敗走した敵軍が、国境の城砦に籠った時も、一瞬で、城砦ごと粉砕しました。
そして、手の平を返すように、西のカラン大公の軍へ向かうと、やはり瞬く間に反乱軍を粉砕しました。
その時、彼は言いました。
「自重をしなければ、こんなもんです。」
私は、寡聞にして、彼が自重した場面を一度も見聞きした覚えがありませんが、もしかしたら、どこかで見落としていたのでしょう。
彼の武威が、王国を隅々まで照らし、戦火の足音が、王国から遠退いた時、お父様や私、大臣や将軍は、彼の処遇に悩んだ。
彼が勝ち得た武功は、正しく万夫不当。
小隊ながら、一軍、いえ、一国家に匹敵する武。
しかし、彼は小隊でなく、中隊を率いているのです。
つまり、彼の本当の武は、この何倍もあると言う事。
国を超える武。
それを購う褒美など、王家にはありません。
彼が何かを望めば、差し出すか?滅ぶか?
2択しかないのです。
だから私達は彼に王国を与える事にしました。
今回、封地として与えた旧カラン大公領は、王国西部屈指の大領地。
王国経営の練習としては、丁度良い大きさでしょう。
領地経営が軌道に乗れば、お父様は退位し、私はこの身を、イリヤマ・ハルキに与えるでしょう。
そう、彼は大公に陞爵して、私の王配として、この王国を手にするでしょう。
王家に購えないような武は、結局のところ、周囲が王家に成り代わるモノとして押し上げてしまう。
ならばこうするしかないのです。