東部前線異常無し!!最初から最後まで、ユキタ男爵のターン。(騎士隊長視点)
「だんちゃーく・・・・・いまぁっ!!」
ユキタ男爵の諸侯軍に所属している観測班なる兵が、王女殿下に実況している。
以前見た魔導兵器とは、全く違う戦車からの攻撃は、ガンと言う非常に大きな轟音。
戦車の櫓部分に付いている砲身と言うモノから、炎が吹き上がる。
そして、少し間をおいて、今!!と言う声と共に、敵中に閃光が発し、爆散する。
それに遅れて、ゴーンと言う音が届く。
観測班の男を見ると、無線と言う魔導具で、ユキタ男爵と話しているのだろう。
その直後、王女殿下に、
「敵に命中してますので、効力射を開始して宜しいですか?」
と聞いている。
効力射とは、試射で、敵に命中後、その方位、仰角で、連続射撃をする事らしい。
私が見た所、未だ、敵と味方は2キロ以上離れている。
敵は行軍を停止して戦列を組み始めた所だ。
混乱しているのが良く見える。
殿下の許可が降り、男爵へ許可を伝えたのだろう。
旗下の3台の戦車が、攻撃を開始した。
発砲から着弾より短い間隔で、次々と榴弾なるものを撃ちだしている。
ん、一方的に攻撃される事を嫌がったのだろう。。。
左へ敵の騎士団が飛び出し、散らばるように広がって、こちらに向かってくる。
なるほど、纏まらなければ、早々当たらないか?
それを見ていた観測班とやり取りをしていたのだろう。
男爵が乗る先日活躍した戦車と、砲身とやらが少し形の違う似たような戦車が、左に散った騎士団に向かっていく。
男爵の戦車が、あの破壊的なドンドンドン・・・と合間の無い連続した轟音で、人馬を纏めて消し飛ばしていく。
そして、後ろに続く戦車が、ガーと言う変わった音を放って、横薙ぎに騎士団を薙ぎ払う。
ホントに、僅かの時間だった。
数瞬、たったそれだけで、騎士団は溶けた。
そして、それを見た敵は、戦列を組む事を諦め、潰走に移った。
観測班の男が忙しく、無線とやらで話している。
何を話しているかは、すぐに判った。
榴弾とやらの飛距離が伸びているのだ。
敗走する敵を追うように、着弾点も伸びていく。
そして、男爵達の戦車は、左右に別れ、敗軍を挟み込むように消し飛ばし、薙ぎ払いながら追い立てて行く。
戦場の作法も何もない。
何せ、我々の常識では、戦闘はまだ始まっても居ないのだから。
お互いが戦列を組み、前進し、互いに口上合戦、矢合わせを経て、戦列がぶつかり合う。
夜襲や奇襲でなければ、そんな感じの戦の作法。
しかし、ユキタ男爵の戦闘は、そんなものは、何もなく、ただ、矢も魔法も届かぬ遠距離から、一方的に敵を溶かす。
王女殿下を始め、周囲の諸侯、騎士、全ての兵に至るまで、ただ眦を見開いて、無言で、ユキタ男爵の戦争を見ていた。
そう、ただ見ていたのだ。。。




