雑魚とは違うのだよ、雑魚とは。(シア戦士長視点)
始めは、我らの森と人族の草原との境界付近に変わった大亀と人族が出入りし、無分別に木々を切り倒しているとの話だった。
それが、段々奥へと道を作りながら入り込み、大きく育った立派な精霊木を攻撃していると言う。
森に育つ精霊木は、エルフの目であり、恵みでもある。
人や魔物からエルフの里を護る為、立派な木々とエルフは契約する。
それによって、普通の木々は精霊木となり、招かれぬよそ者が侵入した時、エルフへ知らせるとともに、森を護る為に戦う。
知らせを受けて、私、エルフのアスナ氏族のシア戦士長は、戦士を集め、招かざる人族と交戦した。
初めて見る鉄で出来た動く砦。
櫓より兵士が身を乗り出し、火を噴く鉄棒をかざし、ダッダダと言う音と共に、戦士たちを薙ぎ払うように負傷させた。
エルフが使用する矢除けの加護は、防御魔法の中でもかなり強力だ。
それを意図も容易く切り裂くとは、戦士の皆が狼狽した。
もし、加護が無かったら、当たった者は皆死んでいただろう。
しかし、森の中で、エルフにこそ戦神の加護がある。
隠蔽の加護で、森に溶けたエルフを見つけ出す事は、例え、猟師を従えていても、中々出来ぬ。
櫓より乗り出して、我らを攻撃している者を優先的に、弓矢で狙撃した所、奴らは鉄の砦に籠り、木こりや猟師を護るように後退していった。
もちろん、矢を矢継ぎ早に射かけたが、矢の飛んで来る方向へ櫓に刺さっている鉄の棒が動いたかと思ったら、棒より轟音が発し、木々も何もかも吹き飛ばした。
見る限り、当たれば即死だが、鉄の棒が指向するスピードも緩やかであるし、方向が決まっても、すぐに轟音を発する訳でもないから、当たらねばどうと言う事は無い。
しかし、こちらの矢もカンカンと音を立てるだけで、全て弾かれている。
ただの矢でない、巫女より貫通の加護を受けた魔物殺しの破魔矢ですら弾く。
石礫の魔法、氷の矢、火の矢、風の刃など、幾つもの速射性が高い実戦向けの初級攻撃魔法を打ち込んでもまるで効かない。
仕方が無いので、退路を先回りし、時間のかかる上級魔法を遭遇時間を計算して詠唱し、ブチ当てた。
大水流や石の大槍,竜巻は、やはり効かなかったが、大火炎を当てると、砦が燃え出し、中にいた兵士が外へ逃げ出した。
その必死の逃げようを見て、我らもすぐに逃げ出したが、凄い轟音と共に、砦が大爆発し、広範囲に火が燃え広がった。
その時、ただならぬ勢いで、新たな砦がやってきた。