哀れ、大尉の願いは、時の3女神に届かず。
缶詰を開けた兵士達は、車に積んであった鍋に幾つかドボドボとアイントプフを放り込み、蓋をして火に掛けた。
クツクツと沸騰し温まったところで、マグカップに入れて、どうぞと私に差し出してきた。
ありがとうと言いかけて、彼らの上官だったと思い出し、
「ん。」
とだけ言い、受け取る。
焚火の隅では、同じく火にあぶられた塩パンが香ばしい良い匂いをさせている。
アドルフ軍曹が、兵にも食事を摂らせて宜しいでしょう?と聞いてくるので、任せると答えると、大声で号令を掛けている。
飯食うだけに何て大袈裟な、、、自由に食えばいいじゃん。
ん?
マグカップでアイントプフを食べてるの僕だけだよ。
皆、飯盒に入れて食べてる。
何か寂しい。
でも、食べて判った。
アイントプフってのは、ポトフの事だったのね。
ウインナーの入った野菜煮込み。
軍用食器のまるで飛行機の国際線で出てくるチープなスプーンで、火傷しそうなアイントプフと格闘してると、軍曹が、少し宜しいでしょうか?と寄ってくる。
どうやら、進言があるらしい。
短い言葉で、話を促すと、どうやら中隊を呼び寄せたいらしい。
中隊?
なんのこっちゃ?
こちらが?マークを表情に浮かべていると、軍曹は不審に思うことなく、懇切丁寧に、部隊について教えてくれた。
どうやら、この時点でも、チュートリアルは続いているらしい。
軍曹自身は、システムが生み出したサポート端末らしい。
システム等諸々について、判る範囲で教えてくれるとの事。
ちょっと待て!!
ふつう、ふっつ~~~~う、サポート端末って、おなのこが基本だよね?
ね?
ね?
妖精とか?女神とか?天使とか?おなのこの魔物とか?小悪魔とか?
まぁ~おなのこじゃ無ければ、モフモフとか?モフモフとか?更にモフモフとか?
何処の世界に、、、
ごっつい
むっさい
あっつくるしい~
の三重苦サポーターなんて居るんだよ?
クーリングオフってない?
まだ1日も経ってないだけど。
えっ、ダメ?
じゃ、チェンジで。
未成年なんで、良く知らないけど、チェンジ1回目は無料だって、クラスの女子が、女同士で喋ってた。
えっ、それもダメ?
じゃ、変身できない?
日本軍は兎も角、西洋の軍隊ならWWⅡ辺りでも、女性兵士居るよね?
居るよね?
居るよね?
え、中隊には居ないし、変身も出来ない?
どうしてもと言うなら、スカート履いて、裏声で、女言葉話しましょうか?だって、、、
や・め・て!!
それやったら、どこかの首領様みたく、オストヴィントで銃殺するから。
まぁ~先ほど、盗賊さんは、躊躇いなく銃殺したんだけどね。
軍曹は兎も角、大声で騒ぐ大尉は、兵士どころか、騎士の面々や、王女様や女官からも引かれていた。
そりゃ~もうドン引き。
その直後、大空に向かって、大尉殿は、こう叫んだと言う。
「女神様~ヘルプ・ミ~。
システムダウン希望。
女神さまとの出会いまで巻き戻しお願い~。」
知らぬは幸いである。
女神違いでなければ、不憫に思った3女神がい~と巻き巻きと巻き戻したかも知れないが、女神違いで願いは届かず、願いが聞こえた女神さまは、アナログ過ぎて意味が判らんし、忙しいしで黙殺した。
もちろん、王女も騎士も、女官も御者も、大尉が時代掛かった大袈裟な感じで、女神に、何か祈り事をしたと理解しただけで、内容を理解できよう筈も無かった。