異世界でチートでハーレムな作品は嫌いだけど、良質の小説が読みたい人へ
小説家になろうでランキング上位の作品を見ると、「異世界」「チート」「ハーレム」「主人公最強」のような要素を含んだ作品ばかりが目につくと思う。
よって、ランキングから作品を探す読者は、小説家になろうでは、こういった作品ばかりが投稿されているのだと思い込みがちなようである。
これはもちろん、大きな誤りである。
小説家になろうでは、今も、これまでも、異世界チートハーレムでない作品が多数投稿されている。
しかし、これらの作品がランキング上位に掲載されることは、稀である。
小説家になろうの評価システムについて良く知らない人は、これらの作品が面白くないから、ランキング上位にならないのだと考えるだろう。
誤りである。
ランキング上位に位置していなくても、面白い作品は、多数存在する。
しかし、現在の小説家になろうの評価システム下では、面白いだけではランキング上位には載らない可能性が高いのである。
そんなわけで、異世界チーレムでない面白い作品を探したい読者は、「お勧めレビュー」から読む作品を探すようにすると良いと思う。
「小説を読もう!」のトップページに「みんなの新着レビュー!」という項目があるので、ここの「>>レビュー一覧を見る」をクリックして、その中から自分が読みたいと思う作品を探すのである。
ランキング上位でないが面白い「埋もれた名作」には、レビューが書かれることが多い。
これは、何らかの経緯でその作品を読んだ人が、「この作品がこんな評価で埋もれているのはおかしい! もったいない! みんなにもっとこの作品を知ってほしい!」という想いから、レビューを書くためである。
したがって、その想いに乗ってやるのが、良質な作品を探すにあたって、最も手っ取り早い方法だと思われる。
しかもこのお勧めレビューは、1日に10本前後、多い日には20~30本も書かれているので、選択肢の数にも意外と事欠かないのである。
是非、試してみて頂きたい。
さて、以下には、作品が面白いだけでは何故ランキング上位に載れないのか、何故ランキング上位が異世界チートハーレムばかりになるのか、そのカラクリについて長々と説明しようと思う。
興味のない方は、ここでブラウザバック推奨。
さてさて、何故作品が面白いだけではランキング上位に載らない可能性が高いのかと言えば、これは小説家になろうの評価ポイントが、読者数に比例してしか付かないためである。
10万人の読者に読んでもらえば6万ポイントの評価を受ける作品も、100人の読者にしか読まれなければ60ポイントの評価しか付かない。
これが、小説家になろうの基本的な評価システムである。
ランキングは、総合評価ポイントに応じて弾き出される。
総合評価ポイントは、評価合計+ブックマーク数×2で決定される。
100人の読者が作品を読んで、そのうち5人に1人がブックマークを付ければ、ブックマーク数は20になる。
また、この100人の読者のうち、50人に1人が評価点をつけ、それが文章評価5、ストーリー評価5であったとすれば、この作品の評価合計は20ポイントとなる
総合評価ポイントは、評価合計+ブックマーク数×2で決定されるのだから、この作品の総合評価ポイントは20+20×2=60ポイントとなる。
この作品を、100人でなく10万人が読めば6万ポイントが付くという理屈は、ここまでで分かると思う。
ひょっとすると、「いやいや、そもそも面白い作品なら、もっと多くの読者に読まれるだろう」と思われるかもしれない。
だがこれも、誤りである。
何故なら、読者はエスパーではないから、作品を読む前からその作品が面白いかどうかなど、判別できないのである。
そして、玉石混交の何十万という作品すべてを読むわけにいかないから、少しでも石を避け、玉のみを読みたいと考える読者の多くは、ランキング上位の作品の中から、読む作品を選ぶのである。
つまり、多くの作品はそもそも、ほとんどの読者に読まれない。
読まれないから、多くの評価ポイントも付かない。
多くの評価ポイントが付かないから、ランキングに載らない。
ランキングに載らないから読まれない。
小説家になろうには、そういった底辺循環のようなシステムができあがっている。
「でもそれなら、異世界でチートでハーレムな作品も、条件は一緒なんじゃないの?」と考えるかもしれない。
これは鋭い指摘だ。
だけれども、そこにも仕組みがある。
小説家になろう関連サイトに、「小説家になろう~適当な裏情報~」という情報サイトがある。
そこに「検索されたキーワードベスト30」という項目があるのだが、そこを見ると「チート」「異世界」「ハーレム」「主人公最強」「転生」というキーワードの検索数が圧倒的に多いことが分かる。
つまり、これらの作品を意図的に(ランキング以外から)探している読者層がかなりの数いて、ゆえにそれらの作品は、より多く読まれ、より多くの総合評価ポイントを獲得しやすいのである。
ついでに言えば、「彼らが」面白いと思った作品には評価ポイントが付くし、「彼らが」もっとこの作品を読みたいと思ったらブックマークが付くのである。
よって、『「チート」「異世界」「ハーレム」「主人公最強」「転生」といったキーワードで作品を探すタイプの読者』に好まれる作品は、総じて高得点を得ることになる。
どういった作品を面白いと感じるか、もっと読みたいと思うかは、老若男女誰でもが同じではなく、特定の層の好みを狙い撃ちにした作品は、該当する層の読者からは、極めて評価されやすいのである。
ちなみに、特にそういった人気キーワードに該当しない連載作品を、1話投稿した際に得られる読者数は、良くて20人程度、悪ければ10人以下である。
僕が知っている、感想欄で多数の読者から高評価を受けている、とある作品は、1回の更新につき2~4人程度しか新規読者が付いていなかった。
月間ランキングの1位~3位に載るような作品(日刊ランキングに載った作品の中でも、特に評価された、選りすぐりの作品が月間ランキング上位に残る)でも、ブックマーク数は5人の読者につき1件程度、評価点を付ける読者となると50人に1人ぐらいなので、1桁の読者数ではどうにもならないのは、分かってもらえると思う。
(ちなみに読者数とブックマークの付き方に関して、何を根拠にそんなことを言っているんだと思われる方は、拙作エッセイ『連載作品は5人の読者につき1件のブックマークがあれば最高クラスの評価』をご覧頂きたい)
さて、小説家になろうのランキングの中でも、現在特に影響力が大きいのが、「日間総合ランキング」である。
これの300位ギリギリにでもランクインできれば、読者数は飛躍的に増える。
作品のタイトルやあらすじなどでどれだけ興味を惹けるかにもよるが、だいたい1日3桁の読者数は、堅いと見てよいと思う。
底辺で燻っている「面白い作品」が、何らかのきっかけでこの日間総合ランキングの底に引っ掛かれば、そこで一気に火がついて、評価ポイントが爆発的に増加することが多い。
もともと、読者さえ増えれば、評価点は高い比率で増えるはずの作品なのである。
300位は1日で100位に上がり、その翌日は30位で、その翌日は1桁の順位ということも普通にありうる。
そしてそういった原理で、それまで数か月で100~200ポイント程度の総合評価ポイントしか獲得できなかった作品が、数日で一気に数千ポイントを得るなんてことが、日常的に起こっている。
というよりも、そのルートでしか数千以上のポイント数を稼ぐのは不可能なのではないかと思えるほど、日間総合ランキングの影響力は大きいのである。
……なのだが、その「何らかのきっかけ」が得られないと、作品はずっと底辺で燻り続けることになり、そのまま埋もれてしまうことも、これはまったく珍しいことではない。
日間総合ランキングの底、300位に引っかかるためには、最低でも50ポイント程度の総合評価ポイントを1日で獲得しなければならない。
1回の更新で読者数1桁しか得られない作品に、それが事実上不可能に近いことは、先の説明も合わせて考えれば、分かってもらえるだろう。
が、しかし、これは現在の小説家になろうのシステムであって、現実なので、これを否定しても仕方がない。
作者にせよ読者にせよ、ユーザーはこの現実を踏まえた上で、自分の身の振り方を考えるべきであろう。