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Catch The Future   作者:
76/90

第75話 何か意味はあるの?

試合が終わり、ベンチ入りしていたインタビューを受けている石川と秋山先生を待っていた。


いつもはインタビューを受けている側だったので、いざインタビューが終わるのを待っている間はこんなにも退屈なものなのかと考え込んでいたら応援団の中から菜々がオレのところに歩いてやって来た。


「おつかれさま。」


「もし菜々がベンチ裏に来てくれなかったら危ないところだった…。ありがとな。」


労いの言葉を貰い、逆にベンチ裏に来てくれたことに対してのお礼を言うが菜々は首を横に振った。


「いいの。少しでも健太くんの力になれればと思ってやったことだから。あのあと警備の人にちょこっとだけ叱られちゃったしね。」


やっぱりか…。


でも今回はその無理無茶のお陰で立ち直ることができたから、菜々には感謝してもしきれないな。


「菜々ちゃーん!!そろそろ帰るってよー!!」


後ろで女バスの小林が手を振りながら菜々に帰ることを告げていた。


「分かったー!すぐ行くー!!……ってな訳だからそろそろ行くね。」


「菜々!ちょっと待って!」


応援団の方に走り出そうとした菜々の手を掴み、強引に引き止める。


「わっ!……何かな?」


まさか引き止められるとは思っていなかったらしくビックリした表情をしている菜々を尻目に、オレが被っていた帽子と菜々が被っている帽子を取り替えた。


「この帽子の交換には何か意味はあるの?」


「いや、特に意味なんて無いんだけどただ菜々が被っているその帽子を次の試合で使いたいなー……なんて?」


別に試合中に帽子を取って菜々の匂いを嗅ぐ訳じゃないからな?


そこまでオレは匂いフェチでも無いし、変態だという自覚もない……と思う。


「ふーん…。健太くんがそうしたいならわたしは別に気にしないよ?じゃあ、またね。たまには連絡くらい入れてくれたっていいんだからねっ!!」


最後だけ聞くとツンデレさんのテンプレ的なセリフを残して、大応援団の群衆の中に消えていった。


それと同時にインタビューを受けていた石川と秋山先生が戻ってきたので、宿舎行きのバスに向かって歩き出……



「ちょっと待て。」



そうとしたら大場が後ろから話し掛けてきた。


「……なんだよ。」


「その……、なんだ…。すまなかった。」


何の事だ?と聞こうとしたけど、おそらく3年前のあの事を謝ろうとしているのだろうがそれはもう過ぎ去ってしまい変えようのない事実だ。


「オレに謝るよりもっと謝るべき人がいるだろ。」


「分かってる。けど、連絡先は知らないしもう2度と会うことは無いだろうから代わりと言っちゃ何だがせめてもの償いとして謝らさせてくれ。」


頭を深く下げる大場を見て、オレは何のアクションも起こさずそのまま立ち去った。




「今さら謝られても遅ぇっつーの…。……またどこかで会おうぜ…。(大場おまえが野球をやってたらの話だがな…。)」



今の今まで手に持っていたさっきまで菜々が被っていた帽子を深く被り、呟いた言葉は流れてくる風と木の葉にのって掻き消えていった。











『勝った』


夜になって麻生に試合に勝ったという報告を兼ねたメッセージを入れた。


すると返信はすぐに帰ってきた。


『テレビで見てたよ。試合の前半と後半別の人が投げてるのかと思ったけど、何かあったの?』


仕事の方は大丈夫なのか?と聞きたいところだけど、プライベートまで仕事のことを干渉するのはよくないな…。と言うより干渉していいような内容じゃないと思ったので今日は仕事のことは話さないことを決めつつ、メッセージを送る。


『グラウンド整備やってる時間の時にシャキッとしろ!!って頬に思いっきり平手打ちを入れて貰ってたんだ。』


喰らったオレが思わずよろけてしまうくらいの力がこもった平手打ちだったな…。と叩かれた方の頬を擦る。


石川や結城が言うには試合が終わってからようやく目立たなくなったらしいけど、そんなことは知らん。


『平手打ちって何か一昔の気合いの入れ方だね…。』


画面の向こう側に苦笑いをしながらメッセージを打っている麻生おさななじみの姿が容易に想像できる。


『実際それで立ち直れたから結果オーライでしょ。』


あーもうダメだ寝みぃ、瞼重てぇ…。


疲れが一気に襲ってきてしまい、布団も毛布も被らずそのまま眠ってしまった。





Side M.Kodaira



メッセージを送ったけど、何時まで経っても『既読』という文字がつかない。


今大会ここまで1人で全て投げ切っているので、その疲れもあるのだろう。


生まれたときからこのままずっと一生一緒だと思っていたけど、キミは私のこの想いを打ち明けることができないままどこか遠いところへと行ってしまった。


ケータイに入っていた電話番号にいくらかけても繋がらない。メールを送信しても宛先不明となって返ってきた。


もうこのまま私の存在を無かったことになって彼には会えないのかな……と思っていた時、たまたまプライベートで甲子園球場に足を運んでキミを見たときにあの時抱いていた淡い想い出が蘇ってきた。


……彼が甲子園で優勝したらこの想いを打ち明けよう。


私は密かな決意を秘めつつプライベート用のスマホの電源を切り、明日の仕事のスケジュールを確認することにした。


Side out



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