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Catch The Future   作者:
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第68話 誰が…ですか?

ジャンプボールは精一杯腕を伸ばした七海が相手ジャンパーより強くボールを叩いてくれたお陰でわたしたちが制し、清峰ボールから始まる。


ちょうど彩菜が立っていたポジションのところのセンターライン辺りに落ちて腕を伸ばして確保し、ボールを運ぶ。


「んじゃ、1発頼むわ。」


「おっけー。」


高めにいたわたしに手渡すような感じでボールを渡された。


ボールを貰ったわたしはその場でボールをつき始める。


股下を通したり、片手で左右に揺さぶったりと相手のリズムを崩しにかかる。


すると一瞬、ほんの一瞬だけマッチアップについていた三上の呼吸が浅くなった。


それを見計らったわたしは一気にドライブを仕掛ける……フェイクをして真上にジャンプし、シュートを放つ。


ミドルがリングに当たることなく、スパッというネットを潜る音を立てる。


よし!まずは2点!!


点を取った直後のディフェンスでしっかり守り、こちらに主導権を握るために自陣へ戻る。


するとすぐさま蒼井が彩菜のディフェンスをかわし、七海のブロックをダブルクラッチで掻い潜り強引に決めてきた。


まだ試合が始まって間もないというのにすぐさま同点に追い付いてきた。


蒼井が放ったそれはすなわちノーガードの殴り合いのような点取り合戦ゲームが始める狼煙にすぎなかった。



Side out




Side K.Matsumiya


「続いて川井!ようかい体操第一躍りながら歌います!!」


「よっしゃ行けぇ!!!」


甲子園で泊まる宿舎へ移動しているバスの中。


バスの中では暇を持て余したみんなは突如カラオケ大会が開催されていて、秋山先生がみんなに見つからないようにそっと耳の穴に耳栓を入れていたのがオレが座っている


試合は見れないけど、ケータイでインターハイバスケットボール種目の女子準決勝の試合速報を見る。


すると今第1Qが終わってインターバルの時間帯らしい。


スコアはどうなったのかな……?


ケータイで試合の経過を見てオレは開いた口が塞がらないほど唖然とした。


なぜならそこには清峰が28で、相手チームが34という数字が刻み込まれていたからだった。


オイオイ、これこのままのペースで行くと100点ゲーム行くんじゃねぇのか…?



Side out




第2Qに入ってもノーガードな得点の取り合いはヒートアップしていった。



「やぁっ!!」


ーーースパッ!!!


愛美がミドルジャンパーで得点を取っても…、


「はっ!!」


ーーースパッ!!!


三上が個人技で決め返す。



「ぉおらっ!!」


ーーーシュパッ!!!


彩菜がスリーポイントを決めても…、


「ほっ!!!」


ーーーシュパッ!!!


神野もお返しと言わんばかりのロングシュートで得点を決め返す。


「彩菜!!」


「ほらよっ!!!」


ーーーガシャァァン!!!


わたしがアリウープを叩き込んでも…、


「ーーーッッ!!」


ーーーガシャァァン!!!


蒼井が派手なダンクを返してくる。


一見すると大味な試合に見えるが、時間を追うごとに徐々に点差が開いていっている。


蒼井がパスする相手のシュートやドライブのモーションのタイミングに完璧に合わせたパスを出していて、それを受ける他の4人の動きが徐々にだが研ぎ澄まされていっているからだ。


バスケに限ったことじゃないけど、いいアシストはいいリズムを作る。


つまり完璧なアシストは理想的なリズムを作るのだ。


さらにアシストする蒼井も蒼井で、味方が尻上がりに調子を上げていくにつれて蒼井自身もノってきているので試合の流れが桜海大附属高校に流れていっている。


「はぁっ!!」


「……ぐっ!!!」


1Q途中からマッチアップ変更でマークしている蒼井がドライブをしかけてくる。


時間を追うにつれてスピードとキレがドンドン増していっているから気を抜いてると抜かれそう…!!


「まだ抜けない…か。なら、こっちはどう!?」


フルドライブからスキール音がなるほどの急ストップからフェイドアウェイジャンパーの体制に入ろうとしていた。


わたしはその緩急の差についていけず、中指の爪の先にボールを当てるのがやっとだった。


「リバウンドォ!!!」


だけど爪の先に当たったおかげでリングに嫌われるが…、


「もーらいっ!!」


リバウンドに備えていた三上がボールをポンッと優しくタップしてゴールを決まり、点差が12点差まで広がった。


ボールを出してフロントコートに入る前に前半の2Qの終了を知らせるブザーが鳴り響いた。






Side A.Fukushima


「ハァッ……ハァッ……!!」


ここまでタフな試合は経験がない。


ロッカールームへ戻ると、試合中には感じなかった疲労感と大量の汗が流れてた。


それは試合に出ていたメンバーもれなくそのような状態だった。


なんせ徐々に調子がよくなっていく相手をディフェンスし、得点を取らなくてはいけないからな…。


そんななか、菜々だけは流れてくる汗を拭わず頭の上にタオルを被って組んだ手の上に顎をのせて何か考えに耽っていた。


「どした?どっか痛めたりしたのか?」


「…………。」


話しかけてみてもこちらを見るどころか反応すらなかった。


「……菜々?」


「えっ?なに?」


反応したかと思えばチラッとこちらを見てからまた元の体勢に戻った。


「どっか痛めたりしたのかって聞いたんだけど…?」


「まさか。」


ならよかった…。この試合菜々がいなくなっちまったら一気に難易度が跳ね上がるからな…。


でも、なんだ…?いつもの菜々らしくないっつーか…。


何だか話し掛けるのを躊躇ってしまいそうなヒリついた威圧感は…?


おっと、もうそろそろハーフタイムが終わりそうな時間じゃねぇか。


「みんな、そろそろ行くぞ!!」


結局今の菜々の違和感の正体が掴めないまま、あたしたちは再びコートへ戻るためロッカールームのドアを開けた。



Side out




Side Aoi


「思っていたよりも大人しかったな…。」


ロッカールームで後半戦へ向けての作戦を立てていた。


「誰が…ですか?」


神野がわたしの呟きを聞き、問いかけてきた。


「神谷だ。」


「神谷さんですか?アリウープとかスリーとかバンバンやってたじゃないですか。なのに大人しかったと?」


「いや、そういう大人しいじゃないんだよ。」


意味が分からないと言わんばかりに首を傾げたあと、わたしから視線をはずす。


何と言えばいいのだろうか…。


ウィンターカップで見たときの威圧感が何故だか消え去っていた。と言えばいいのだろうか…。


とにかく何が起きるか分からない…、わたしの予感が外れてくれればいいのだけど…。



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