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Catch The Future   作者:
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第58話 誰かいるのか?

今日は久々のオフだ。


昨日の昨日まで練習三昧の日々を過ごしていたので、いざオフだと言われてもやることがない。


洗濯物も貯まってないし、掃除も……いや、思い切って家中掃除するのも悪くはないな。


そう決心したオレは、とりあえず朝メシを作るために階段を降りてキッチンに向かおうとしたが……、


「……誰かいるのか?」


この家にはオレ以外の人は誰もいないはずだし、来るとしても奈緒ねぇか菜々だけだ。


それに菜々は今日の夕方以降に帰って来るって言ってたし、奈緒ねぇは大学4年目にしてようやく彼氏が出来たらしく、オフになったらそちらの方に行くだろうし…。


強盗……だとしても、朝メシを食べるために台所で料理するなんてあるわけない。


あったとしたらそれこそ珍百景かマヌケな泥棒として何かのテレビ番組にノミネートするだろう。


とりあえず正体を確かめないと…。


威嚇の意味も込めて台所の扉を思い切って開けた。



「戸締まりもしないで危ないじゃないの。あと少しで味噌汁ができるからもうちょっとそこでテレビでも見てて待ってなさい?」


「あ…うん。そう言えばさ、オレのケータイ見なかった?」


「ケータイ?ケータイならバッグの中に入ってたからそこに置いといたわよ?」


リビングの真ん中に置いてあったオレのケータイを左手で持ち、電源を入れて流れるように通話モードに切り替える。


そしてオレは画面に出ている10個の数字のうち2つの数字をリズムよくタップする。


何回かコールされたあと、相手は電話に出た。


『はい、どうなさいました?』


「あ?もしもし?警察ですか?」


不法侵入です。






「いきなり通報するなんて酷いじゃない。」


普段は菜々の座席に座って共に朝メシを食べているのはオレの実の母親。


「そりゃ誰もいないと思って階段を降りたら人がいるんだ。誰だって通報すると思うぞ?」


ズズズ…と味噌汁を啜る。


菜々が作った味噌汁も美味いけどやっぱり母親が作る味噌汁も美味い。


格の違いなのか、それとも年季の違いから来る味なのか?


これが日本代々伝わるお袋の味ってやつなのか。


弱冠17(8月生まれなので18ではない。)歳でお袋の味を知った瞬間だった。


「ところで健太…。彼女とはどこまでヤったの?」


「ブッ!!!」


飲んでいた味噌汁を吹き出してしまった。


朝っぱから何てこと聞きやがるこの母親は!!!


「別に菜々はまだ彼女って呼べるような人じゃねぇよ。」


目の前に座る母親の表情が凍った。


あ。ヤベ…。口滑らしちまった。


「菜々って……、あの向かいの神谷さんのとこの菜々ちゃん?まさかあんた菜々ちゃんに手ぇ出したの!?」


っつーか知ってるのかよ!!!


いや!今大事なのはそこじゃないっ!!!


「いや、違う!!言葉のあやだ!!」


「彼女じゃないってのに菜々ちゃんを襲ったの?親として恥ずかしい限りよ。」


「話を聞けこのバカ親!!」


「まぁっ!親に向かってバカとは何よ!!バカとは!!!」


「なんでそこはちゃんと聞いてんだよぉぉぉぉお!!!」


気付くとオレは家の近所一帯に響き渡るような大声を出していた。


この大声が原因で目を覚ましてしまった人がいるのなら本当に申し訳無い。






Side N.Kamiya



お昼過ぎに家に帰ってきたわたしは、お土産を渡しに行くついでに健太くんと一緒に何処かへお出掛けを誘おうとしていた。


わたしも健太くんも久々のオフだし、この日を逃すとおそらくわたしのインターハイや健太くんの甲子園が終わるまでオフが被らないのでそれぞれの大舞台を前に最後のオフを楽しみたいと考えていたのだ。


「ーーー!ーーー!!」


「……?ーー!!」


何やら健太くんが住んでいる家の中が何やら騒がしい。


健太くんの声と知らない女の人の声?


誰かいるのだろうか?


まさか健太くんわたしに黙って浮気を…?


フフフ…。健太くんったらわたしに黙って浮気とかどういう事なのかなぁ?


もしホントに浮気だったらオシオキしなくちゃね…。


フフフ…。フフフフフフフ。


…ハッ!?いけないいけない。


得体の知れないなにかを振り払うようにしてブンブンと頭を横に振った。


まだ浮気と決まった訳じゃない。とりあえず…。


「おじゃましまーす…。」


わたしは小さい声を出して健太くんの家に侵入する。


「何?そんなにこのタンスを見られるのが嫌なの?」


「今はとにかくダメだ。後で見せるから。」


知らない女の人の声のあとに、焦ったような健太くんの声が聞こえてきた。


別にタンスくらい見たって問題はないような気がするんだけど?


「フフフッ。ダメって言われたら余計に見たくなるじゃない♪」


「おい!やめろ!!そこだけはマジでやめろってば!!!」


え!?なになに!?


健太くんがそんなに必死に否定されるとわたしも見たくなっちゃったんだけど!?


「健太くーん?何の話してるの~?」


わたしは健太くんの部屋に向かって階段を上り、健太くんの部屋に入った。


するとそこはわたしがこの家に泊まる際に身に付ける下着類が入っているタンスを必死にディフェンスしている健太くんと、健太くんと親しい間柄の女の人がそこに立っていた。


「菜々ちゃん!?」


「おまっ!!夕方帰ってくるんじゃねぇのかよ!!」


2人ともわたしの登場にビックリしている様子だ。


「菜々ちゃんじゃない!!久しぶりねぇ~。奈保子は元気?」


「ええ…。まぁ。今日なら家にいると思いますが…。」


いきなりわたしの手を握ってきて、わたしの母親の名前を出してきた。


幸いわたしの母親は今、家にいるのでその事を伝えると女の人は急いでわたしの家に向かっていった。


「……なんかすまんな。うちの母親が迷惑をかけて…。」


健太くんがものすごく疲れた様子でわたしに謝ってきた。


え?今健太くん何て言った??


母親って言ったの……?今?



Side out



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