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Catch The Future   作者:
49/90

第48話 約束したから

Side K.Ishikawa


決勝戦の試合前、俺はキャッチャーミットが痛んでいないかを確かめていた。


すると東條とキャッチボールしていた健太が自分のドリンクを飲みにベンチに戻って、そのドリンクを飲んだ後俺のもとに歩み寄ってきた。


「どした?」


特に目を合わせて話すような内容ではないと思った俺は、キャッチャーミットに目線を向けたまま話し掛ける。


「なぁ、今日あのボール投げていいか?」


思わず健太を見上げた。


マウンドに上がればクールでどこか飄々としている松宮が珍しく気合いが入っているな、そしてどこか思い詰めているなぁ……とは思っていたが…。


「いいけど…なんでまた?あれは県大会で解禁するって言ってたんじゃないのか?」


「あのボールを試合で投げてみたい気分になったんだよ。それに練習で得られる感覚と試合で得られる感覚は違うはずだから。」


「……。分かった。ただ、そのボール投げるタイミングは俺に決めさせろ。」


「りょーかい。投げ損なったらそんときはごめん。」


ニヘラと笑っている辺り、気負ってると言う訳じゃないようだ。


それより今は試合だ。


一筋縄じゃいかない相手なので、頭チギれるだけ回して健太をリードしていかないとな。


Side out






Side D.Amamiya


決勝戦が行われている今日この時でも、横浜総学館高校硬式野球部は平常通り練習に明け暮れていた。


『甲子園の試合が終わるまで休憩とします!!』


するとグラウンドや今僕がいる室内練習場のスピーカーから1つ下の後輩の声が聞こえてきた。


グラウンドや陸上トラックにいたチームの仲間たちみんながゾロゾロと寮に引き上げていくなか、僕はというと室内練習場でバットを振り込んでいた。


「監督。お疲れさまです。」


室内練習場に入ってきたのは我が横浜総学館高校の監督であり教諭でもある桜井さくらい 大河たいが先生だ。


この人も清峰高校の秋山監督と同じ高校で、そのときの4番打者であり主将だったという経歴を持っている。


僕がここまで成長できたのは間違いなく桜井監督のおかげだ。


「大輝?観に行かないのか?」


「決勝戦を観たいと言うよりも、今はこうしてバットを振り込んでいたい気分なんです。」


今こうして会話しているなかでも、バットを振り続けている。


「風祭と清峰、どちらが勝つと思う?」


「清峰ですね。」


どちらが勝つか。と聞いてきた監督の問いに対して、松宮がいる清峰高校だと即答する。


「お前ならそう言うだろうと思った。」


監督は聞かなきゃよかったかな…。とボヤきながら身体を反転させた。


そして左手を上げながら、いいところで切り上げろよ。と言い残して監督室へと引き下がっていった。


甲子園が終わってからというもの、新チームへの移行がスムーズに行われずイマイチ噛み合わなかったため早々に敗れ去ってしまった。


夏の疲れに蝕まれた僕は秋の大会では肝心なところで打つことができなかったし考えれば考えた分るつぼに嵌まっていき、スランプと言われるまで不調に陥っていた。


だが、不調を抜け出した際に掴んだ感覚を身体に染み込ませた僕は自分で言うのも何だけど並のピッチャーなら簡単に打ち崩せると思っているし、もはや僕を抑えられるのは同世代なら1人しかいないだろうとも思っている。



「今年の夏こそ本気で戦えそうだ…。」


沸騰するかのように熱くなった血液が身体を廻り、気持ちを落ち着かせるようにして僕は再びバットを振り始めた。



Side out




Side N.Kamiya



「なー…。菜々?応援に行かなくてよかったのか?」


今日の決勝戦の全校応援で清峰高校の生徒のほとんどが甲子園球場へ応援しに行ったが、わたしと彩菜は学校に残った。


と言うのも、彩菜は今日の夕方から何やらどうしても外せない用事があるらしくて甲子園球場へ行くとその用事がこなせなくなると言っていた。


「うん。別に行かなくてもいいかなーって。」


そう言いながら左45°の角度から彩菜のパスをキャッチしてからのロングシュートを放つ。


ボールの軌道を安定させるために強烈なバックスピンをかけて放ったわたしのロングシュートはスパッッッ!!!という独特の音を立ててネットに通る。


「なんで?」


何でって言われてもなぁ…。


「約束したから。」


「約束?」


今度は左0°からのロングシュートを放ち、これも沈める。


「うん。春の甲子園を制して帰ってくる……ってさ!!!」


さっきのシュートを撃ち終わったわたしはすぐにボールを持ってセンターライン後方まで歩いていった後に、ボールをつきながらフロントコートへ侵入。


そして彩菜にパスを出し、パスを受けた彩菜はリング上空に向かってリターンする。


リターンされたボールはフワリと浮かんでいる。


それをキャッチしたわたしはリングを壊しかねないような力を込めて、ボールを叩き込んだ。


着地してからコートの近くの机に置いといたスポーツドリンクが入ったボトルとケータイを取り、甲子園速報のサイトにアクセスした。


試合は0ー0の終盤8回裏風祭学園の攻撃はツーアウト2塁、バッターは4番に座る伊丹という人の打席を迎えており、一打先制どころか下手すれば勝敗が決まるような緊迫した場面だった。



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