第39話 修学旅行
季節は進み、あと数日10月が終わり11月になろうというくらいまで時間が流れてった。
気付けば高校生活も折り返し地点を過ぎ、本格的に進路を考えなくてはならない時期に差し掛かっている。
そんな固い話は置いといて、あれから今日までの出来事をここいらで振り返ってみようと思う。
まず菜々との間の復縁っつーか仲直りはまだ終わっていない。どうも避けられてるみたいでなかなか話を聞いてもらえず今の今まで引っ張ってしまっている。
次に野球部としては、甲子園を経験したメンバーが多く残った新チームで臨んだ秋季大会はというと東北地方のブロック大会を優勝して明治神宮大会に出場することとなり、何かしらの不祥事が起きない限りは春のセンバツの出場は内定している。
一方夏の甲子園を制し、全国から狙われる立場となった天宮がいる横浜総学館高校はというと関東ブロック大会2回戦で敗退してしまい春のセンバツの出場はほぼ絶望的。
もちろんと言うのは失礼かもしれないが、明治神宮大会にも出場することはないので次に対戦するのは最後の夏の大会となってしまった。
次に学校関係でいくと、夏休みが明けてから早々に競歩大会。
昨年は県境越えだったのに対し、今年はほぼ平坦ではあるが男子40km女子32kmという清峰高校最長コース。
でも、学校側からは野球部は参加してもいいし参加しなくてもいいという何ともフリーダムな指示だったのでロードバイクで参戦した。結局3周ほど回ったので、身体がカラカラになるほどエネルギーを使ったけどむちゃくちゃいい練習にはなった。
んで、今日から3泊4日の修学旅行。
行き先は宮島と京都と大阪。
広島についてから講話を聞いて宮島まで移動して終わりという移動メインの日なのだが、現在朝の4時半。
どう考えても早くに集合しすぎだと思うのだが…?
「………おっす。」
「…おう。」
オレも石川も眠さを前面に出して、いかにも『いくらなんでもこの時間集合はあり得なくね?』オーラを出す。
さっき武田を見かけたが、あいつに至っては立ったまま寝てるし。
『それじゃあ各クラス指定されたバスに乗ってくださーい!!!!!』
うるっせぇぇぇぇえ!!!!
メガホンマイクで叫ぶんじゃねぇよボゲェェェェ!!!
朝から騒音を聞いて不機嫌MAXになってしまったオレはバスに乗り込み、座席に座った瞬間目を閉じて睡眠の続きを取ることにした。
Side N.Kamiya
『で?健太と仲直りできたの?』
わたしは空港に向かうバスに揺られてるときに、隣のクラスである彩菜のメッセージに目を通したあと、隣のシートに座って眠っている健太くんを見た。
『ううん。まだできてない。』
健太くんと石川くんが思いっきり眠っているのを横目に彩菜にメッセージを返す。
『健太も健太だけど、あんたもあんただよなぁ…。』
『どういうこと?』
『あん?あんたらが似た者同士ってことだよ。この修学旅行で何とか仲直りしなよー』
わたしはメッセージを確認し次第ケータイの電源を切った。
仲直り…ねぇ。
健太くんの世界にはわたしが必要ないって言ったのに、今さら仲直りすることなんてないのになぁ…。
わたしはそんなことを考えながら、外の流れる景色を眺めることにした。
Side out
学校から空港まで3時間。
空港から東京の羽田まで約2時間。
羽田から広島の空港まで約1時間半。
それから移動やらありがたい講話を聞いて、宮島についたころにはすっかり日もくれていた。
移動とはいえ、修学旅行の短い時間の中でのだいたい6時間を睡眠に費やしたのはおそらくこの学校でもオレだけだろう。
夜メシを食べ終えて先生たちの許可を貰えば、宮島の宿舎周辺を観光することは出来るのだが、今日は外に出ようとは思わない。
なんでかって?
まだメシ食ってるからに決まってんだろ?
さっきまで眼鏡かけた帰宅部のデブがオレ相手に食い意地を張っていたが、何だかブヒブヒと負け惜しみを言いながら部屋に戻っていった。
こちとら秋山先生からまた昨シーズンのオフと同様に肉体改造計画が出されてんだから、ただメシ食って寝るだけのお前とは違うんだよこの野郎。
「ほらほら、あとご飯2杯がんばってー。」
「あの…夢野?お前さっきクラスの子に夜の散歩誘われてなかった?オレとしてはそっちにいった方がいいんじゃないかなーって思う訳なんですよ…。」
「だーめっ♪だってわたしが見てなきゃ健太くん部屋に戻っちゃうでしょ?ほらほら、わたしが手をつけなかったお好み焼きあげるからがんばってー!」
このドSマネージャー!!!
オレとはクラスが違うのに、夢野が監視されていて『もし規定守れなかったら秋山先生に報告ねっ♪』という死刑宣告を頂いている。
こうなったら………、松宮流最終奥義…!!!
「おりゃあッッッ!!」
一気に片すためにオレはお吸い物と一緒に米を胃袋のなかに叩き込んだ。




