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Catch The Future   作者:
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第3話 家主の機嫌を戻せ!

「いや、だからホントにごめんってば…。」


約束された時間より少し遅れてフードコートに着いたら、そこには荷物という名の紙袋などを持った奈緒ねぇがいた。


必死に弁明しようにも、1度拗ねた奈緒ねぇの機嫌を取り戻すのにはさすがのオレどころか生前の奈緒ねぇのパパさんやママさんでも難しかった。


「………つーん。」


つーんって口で言ってるじゃないか…なんてうっかり口走ったら何をされるかたまったもんじゃない。


下手したら梅干しと白いご飯の比率が逆転した『逆日の丸弁当』ということになりかねないかもしれないから怖い。


やめて!高血圧まっしぐらやんけ!!


…………。さすがにそれだけは阻止しなければならない。


「んで?結局ケンちゃんはあたしみたいな年増より同い年のしかも同じ高校に通ってるピッチピチの女子高生が好みなんでしょ?」


酷い言い掛かりだ。


誰も奈緒ねぇのことを年増だと言った覚えもないし、それにさっき初めて知った女子生徒のことが好みだと暴露した覚えも微塵も無い。


「誰もそんなこと言ってねぇよ。ただ、ナンパされてたのを通りすがっただけなんだって。オレは特に何もしてないってば。」


「…………………。」


今度は口に出さずとも、頬を膨らませ明後日の方向を見ていた。


はぁ…。こりゃちょっとやそっとじゃ動かないくらいに拗ねてるな。


かと言って物で釣るってのもな…。


「…奈緒ねぇ?」


「………なに?」


うっわ。奈緒ねぇの年に1度あるかないかっていう頻度でしか出ない『あたし不機嫌なんだから話し掛けないでよ』オーラが全開だわ。


あまり使いたくはないけど…しょうがない。奥の手、奥の手を使う。


「奈緒ねぇの約束を破ったのは謝るよ。だからさ、何でもとはいかないけど奈緒ねぇの1番したいことのお願い聞くよ。」


「………。」


奥の手………、それは奈緒ねぇの今最もしたいことや欲しいもののお願いを聞くことだ。これでも許してくれないというのなら素直に自らの非を認め、泣き寝入りするしかない。


みっともない?しょうがないだろ。いつまでも家主が不機嫌のままでいられるのはオレも嫌だからな。



「………じゃあ、晩ごはんオムライスとシャーベットが食べたい。」


どうやらオレが作った晩ごはんが所望のようだ…。


「了解だお嬢様。」











帰りの途中でスーパーによったオレと奈緒ねぇはシャーベットに使う果物と生卵を買ってきたオレは、すぐにシャーベットを作り上げ固めている途中、オムライスの卵の生地を作り上げる。


もちろんオムライスのキモとなるチキンライスも抜かりなく作り上げているのでご安心を…。


「シャーベットは…うっし、出来てるな…………。奈緒ねぇ、ご飯出来たよー。」


今日はサラダ油などを使ってはいないけど、一応雰囲気から入りたかったオレは小学生の調理実習が始まった頃から愛用している紺色のシンプルなエプロンをつけたままテーブルに今日の献立を置いていく。


デミグラスソースをかけたオムライスに、さっぱりとした風味のリンゴのフローズンシャーベット、ワカメとゴマが入った中華スープにこれまたあっさりとしたドレッシングにコーティングされたレタスサラダを盛り付けたサラダボウルだ。


だが奈緒ねぇからは返事がしなかった。


さっきまで何やらしていたらしいのだが、急に音がしなくなったのでリビングに備え付けられている小さなソファーのもとに駆け寄ると…、


「奈緒ねぇ…?……って寝てるし。」


ソファーに置いていたカピバラさんのぬいぐるみを抱き枕代わりにして、時折寝言のような譫言を漏らしながら気持ちよく寝ていた。


だけど抱きつく強さの加減を間違えているのかカピバラさんのぬいぐるみは鯖折り状態になっていて、もしそれが何らかの拍子でオレと入れ替わったら背骨かあばら骨の何本か覚悟しなければならなそうだと思うと、自然と冷や汗が出てくる。


冷や汗の処理を終え、奈緒ねぇが抱いているカピバラさんの救出活動を終えたオレは改めて眠っている奈緒ねぇを見下ろした。


ショートパンツから伸びる足や着ているシャツの裾がへその辺りまでめくれているので、すなわちそれはお腹を出して寝ているということになる。


いくら弟のような親戚とは言え無防備過ぎやしませんかねぇ………?


かといってこのまま寝かせていると作った料理が冷めてしまうし、お腹を出して寝ているので体調を崩されるというのも非常に困る。


つまりオレが今すべき事とはッ!!


「奈緒ねぇ、ホラ起きて。早く起きないと奈緒ねぇの好きなオムライス冷めちゃうよー?」


シャツの裾を伸ばし、身体をユサユサと揺らしながら起こすことだ。


しばらく揺すると、ようやく奈緒ねぇはむくり。と音を立てて起き上がった。


「うにゅ………。ケンちゃんおあよぉ…。」


「おはよ。って言ってももう夜だしオレ腹減ってしゃーないから顔洗ってはよ食べようぜ?」


昼寝だろうが朝起きようが寝起きが悪いのは変わらない奈緒ねぇは、オレの姿を目視するとくしゃっとした笑顔を見せる。


笑顔を見せてくれるのは嬉しいけど、ヒトの三大欲求には勝てないのでさっさと奈緒ねぇに顔を洗わせる。



顔を洗ってきた奈緒ねぇが目をキラキラさせながら、オレの向かいのイスに座ったのを確認したオレと奈緒ねぇは今日の晩御飯を食べ始めることにした。





余談となるが、メシ中に今日ナンパから助けてくれたお礼にと言うことで連絡先を交換し、その女の子から電話が入ってきた。


オレは電話に応対し、オムライスを食べようと皿を見ると奈緒ねぇがもっきゅもっきゅと子供のような笑顔で食べているのを見て、急遽茶碗に白いご飯を盛り付けもそもそと食べたというのはまた別のお話ということで…。




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