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Catch The Future   作者:
24/90

第23話 体育祭午後の部

体育館裏から未だに聞こえてくる耳にねっとりと残るような気持ち悪い叫び声を極力聞かないようにクラスの控え場に戻る途中オレは考え事をしていた。


というか何でオレは足元に転がっている石なんかを思いっきり投げつけてしまったんだろうか?


いつものオレなら十中八九何も見てない…見て見ぬフリをしてそのまま足早に立ち去っただろう。


でも何であのとき菜々を助けるような形になったとはいえ、無性にイライラしてしまったのだろうか…。


菜々が幼馴染に似てたから…?いや、違う。


あの時の記憶がフラッシュバックしたから…?いや、違う。


でも、この感情はいったい何なんだろう…?


オレは考えれば考える程坩堝に嵌まっていくような答えのない疑問について考えるのをやめ、途中にあった自動販売機の商品である500ミリリットルペットボトルのアクエリオスを買って空中に軽く放りながらグラウンドの方向へ歩みを進めた。






「あ…。健太くん。どこ行ってたの?」


もはや形だけとなっているクラスの控え場に女の子座りでちょこんと座っている菜々に声をかけられた。


「ん?………ああ。ちょっとそこまで飲みもん買いに行ってた。」


まさか馬鹿正直に『屋上で寝ようとしたら菜々が体育館裏へ歩いていくのを見たから、体育館裏まで様子を見に行っていた』なんて答えられるわけがないので、本当と嘘の半々の答えで返しつつ少しだけ菜々の様子を見てみた。


「なぁんだ…。そうだったらジュース頼めばよかった。」


にこっと笑っているが、いつもみたいな天真爛漫な笑顔では無いような気がしてならない。


けど、事実を言うわけにもいかねぇしなぁ…。


それに何だかんだで昼寝できなかったから眠い。


「くぁ…。」


噛み締めようにも堪えきれず、思わず欠伸を漏らしてしまった。


「健太くん眠いの?」


「ん?やっぱ最初の種目が思ってたよりも消耗してるみたいでな。」


擬似的とは言え、トライアスロンと気を抜いたら大ケガ間違いなしの跳び箱を何回も集中力を高め直して跳んだから自分でも思っている以上に疲れているのかもしれない。


すると、何を思ったのか菜々は自分の膝をポンポンと2回叩く。


「………膝枕?」


酷く顔を赤くしながら小さくこくんと頷く。


え。何この可愛い生き物。


「んじゃ御言葉に甘えまして…。」


柔らかくも引き締まった菜々の太股を堪能しつつ、目を閉じた。


いやぁ………この感覚いいわぁ。


この感覚に包まれたオレはすぐに意識を吹っ飛ばし、夢の扉を蹴破った。





Side N.Kamiya



「健太くん…寝たのかな?」


返事がない。


どうやらホントに寝てしまったらしい。


ここでシラを切り通せるほど健太くんは演技が上手じゃない。


健太くんは気づいてないかももしれないけど、よくよく考えたら人通りが少ない体育館裏で石が自然に飛んでくることなどあり得ない話だ。


新川って人の手にとてつもないスピードで正確に投石できる人などそんなにいないし、何より帰ってきたとき健太くんだけ帰ってきていなかった。


帰ってきてもスポーツドリンクを買いに行ってたとは言っていたけど、明らかに機嫌が悪い顔付きだったからあの投石は健太くんだということを知らせているようなものだ。


健太くんの頭を撫でる。


今はみんなトラック競技の決勝種目で盛り上がっていてこちらを誰も見ていない。


「助けてくれてありがとね…健太くん。」


わたしはみんなの目を盗んで健太くんの頬にそっと口づけをした。



Side out




一眠りして心身ともにスッキリしたオレは自身最後の個人種目『ショットガンタッチ』に挑もうとしていた。


これほトラック種目の全種目が終了して、一発逆転を賭けた正真正銘最後の種目だ。


この種目には各クラスで身体能力が最も優れた選手が出揃う清峰高校体育祭1の名物種目。


ルールは簡単。


スタート地点から1メートル離れたボタンを押すと、接地面から10メートル離れたところからバレーボールが落ちてきてそれを触るとクリアだ。


ただバレーボールは大きさの割りに軽くノースピンで落ちてくるため、落下点がブレることもあるのでその辺はまぁ何とかするしかねぇだろうな…。


『これより最終種目ショットガンタッチを行います!!』




「「「うおぉぉぉぉぉぉお!!!!」」」




ショットガンタッチの試技は3回。


上位に食い込んでいるクラスの代表は、無難に刻んで確実に得点を稼ぎ下位クラスは一発逆転を狙って無茶も同然な距離に挑もうとする。


初回のみ種目前に申告した距離をやって、残りの2回は直前申告となっている。


現在オレのクラスである2年A組は4位。


試技は下位クラスから行われるため、最後から4番目となる。


んで特別ルールとして、選べる最短距離10メートル50センチを5得点基準にして10センチ伸ばす度に1センチプラスになっていくというわけだ。


「2ーA松宮さんスタンバイお願いします!」


おっと、もうオレの出番か。


まず1回目に申告した距離は12メートル。


10メートル50センチから1メートル50センチ離して、得点は20点だ。


…よし!


オレは集中力を高め、スタートを切った瞬間一気にトップスピードまで持っていく途中にあるボタンを右の掌でバンッ!!と叩いたと同時に体育館の天井からバレーボールが落下してくる。


無回転のバレーボールはゆらゆらと揺れながら落下してくるのに対し、オレは瞬時に落下点を予測しダイビングキャッチの要領で飛び込み伸ばした腕を内旋させながらボールに向かって差し出し………、


「っしゃあ!!」


小さくガッツポーズを作る。


『触れたぁぁあ!!2ーA松宮選手12メートルクリア!!2ーAには20点が加算され、2ーA2位浮上!!』


クラスのみんなの前を通りハイタッチをして、またスタート地点に戻る。


その後は、キャプテンのいる3ーBが12メートル20センチを成功させ1位となった。



書いては消し、書いては消し…。


ようやく書き上げたのがこれだよ…。



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