第20話 Mr.清峰レース
ゴールデンウィーク期間に行われた春季大会を優勝という成績を収めた。
決勝戦では最後の最後になんと結城の快速を生かしたサヨナラランニングホームランで試合が終わるというある意味珍しい記録を残して勝ったのはまた別のお話だ。
そんな春季大会で疲労が抜けきっていないオレたちはゴールデンウィークが終わった週の週末だというのに学校に来ていた。
今日は清峰高校の体育祭。
学年が上がってクラス代えによって昨年までのクラスメートのほとんどが違うクラスに散っていったが、中には引き続き同じクラスのやつもいる。
例えば………、
「健太ー。今日は頑張ろーなっ♪」
清峰高校女子バスケ部のポイントガードで、菜々のいいコンビである福島 彩菜と、
「ケンちゃん頑張ろうねっ!」
うちの野球部の核弾頭の結城に…、
「くぁ…。」
クラスの控え場となっているブルーシートの上に寝っ転がり欠伸を漏らす石川の姿があった。
なかなかに癖のあるやつらが揃ったもんだと思う…。
ちなみに武田とマネージャーの夢野、東條と菜々が同じクラスになったらしい。
オレたちのクラスは学校指定のハーフパンツに青いクラスTシャツ(と言う名のポロシャツなんだけど…。)という格好だ。
「んじゃ、オレ行ってくるな。」
「「「(………)行ってらっしゃーい。」」」
「えっと体育祭のエントリー何だが…。」
体育祭2週間前。
明日エントリー締め切りだというのにうちのクラス…、というかうちのクラスだけまだエントリー用紙を出していなかった。
「とりあえずMr.清峰レース松宮ね?」
「ファッ!?」
うちの体育祭の1番最初の種目で、ある意味1番の花形レースであるMr.清峰レース。
早い話トライアスロンだ。
まずスイム400メートルを泳ぐ。
その後運動部がよく使う1周800メートルの学校の外周(平坦)をバイクで10周。
ラストはランで1500メートルを走るというレースだ。
この種目作った人バカなんじゃねぇの!?
「あとフィールド競技のモンスターボックスとショットガンタッチも松宮ね?」
「めちゃくちゃ辛くねぇ!?」
何で某テレビ局でやってた種目が混じってんの!?
マジで訳わかんねぇ!!!
「ねぇ!?拒否権は!?拒否権は無いのっ!?」
「拒否権?んなもんねーよ。それにだいじょーぶだいじょーぶ。トラック競技の短距離部門には結城くんが出てくれるから。」
「え?」
Mr. 清峰レースに出る選手は開会式の参加を免除されている。
開会式の時間を使って念入りにアップをした後、直ぐにトライアスロン用のウェアを着て選手集合場所に向かう。
Mr.清峰レースのスタート台にはキャプテンが立っていた。
「キャプテンも出るんすね。」
「おう。ぶっ殺してやるよ。」
最早会話の銃撃戦だ。
普段寡黙で冷静なキャプテンが負のオーラ全開だ。
「てめぇら!準備はいいかぁ!?」
「「「「うぉぉぉぉお!!!!」」」」
うるさっ!!!
おいそこの体育教師!!
血の気が有り余ってる男子学生を煽るようなことしてるじゃねぇよ!!!
「レディー…ゴー!!!!」
ピストルと共に一斉に各クラス代表の選手はプールに飛び込んだ。
結局オレはスイムをトップから14秒差の4位で通過した。
思ったよりも泳ぐのが速い3人がいて、そのなかにはキャプテンも含まれている。
だが、前の2人はマウンテンバイクに対しオレは正月に使ったタイムトライアル仕様のロードバイクのため秒で追い抜く。
残りはキャプテンだけだ。
だが、姿が見えない。
流石自転車が趣味だというだけある。
ってんなこと考えてる場合じゃねぇ!!!
かなりのハイペースでペダルを回しているが、追い付く気配がしない。
さっき彩菜と石川のタイムチェックのボードを見たらキャプテンとのタイム差は10秒だ。
差にしてだいたい4分の1周か…?
こうなったら脚千切れんばかりに回したらぁぁぁあ!!!
「キャプテン…追い付いたぁぁぁあ!!」
「なっ!?」
ラスト2kmでキャプテンに追い付いた。
やっぱりディスクホイールを使ってレースに出ていたか…。
あとはランの1500と残り2kmとなったバイクだけだ。
ここまで来たらMr.清峰を狙うぜぇぇえ!!




