表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Catch The Future   作者:
14/90

第13話 秋山 翔吾

「ところでさ、秋山先生って何者なんだろうな?」


秋季大会が終わった次の部活の時間帯。


大会の疲れで今日はノースローで肩を休め、ロングティーに付き合ってほしいという石川の頼みでボールをトスする役を買って出た。


そこでオレはふと疑問に思った。


秋山先生はふだんの練習には顔を出さないし、顔を出したとしても少しだけアドバイスや練習の指示だけをしてまた職員室や監督室に籠ったりしている。


いつオレたちの特徴やらを掴んでいるのだろう…?


謎だ。


「あ?秋山先生?………確かに不思議だよな。」


スイングしながら話しているが、石川はこの間にもピンポン球のようにバンバン打球を外野のフェンス手前まで飛ばしている。


おー。これで今日の柵越えは12本目か。


「よくよく考えてみろ?途中入部したお前を実質エースみたいな扱いで、さらに俺たち1年は全員レギュラーポジションを掴んでいるのだろう?そしてだ。秋山先生の采配で疑問を感じたりしたことはないか?」


確かに言われてみればそうだ。


他の2年生もすごく上手い選手がいるのに1年生にレギュラーポジションを渡している。


采配にしたって一見愚策とも取れるセオリーに反している采配を振るったかと思えば、結果的にはそれがピタリと当たっているというのがほとんどだ。


それに勝つことに対し貪欲だ。


じゃないと、新川さんを試合途中でベンチから退場させたり他の1年より遅く入部したオレに実質的なエースの座を渡すわけがない。


「それは後々調べてみることにしようぜ?」


調べたいのは山々なんだが、誰にだって知られたくはないことの1つや2つあることだ。それを外部の人間にホイホイと知られたりなんかしたらきっと信頼関係が一気に崩れるに違いないしな。


「そうだな。あ、それともう1つ。秋山先生が言ってたことがあったんだった。」


「なんだ?」


「『このオフシーズンで今までカウント球として使ってきたカーブを三振が取れるようなボールに仕上げろ。』だとさ。」


マジか…。


オレはどちらかというとボールを抜く感覚よりボールを切る感覚の方が強いので、カーブはあまり投げてこなかったのにそれを三振が取れるようなボールにしろ…か。


「このオフは忙しくなりそうだな…。」


「今さら何言ってんのや。俺たちに残された甲子園のチャンスはあと3回しかないんだぞ?立ち止まってる暇あったら練習するしかないんだぞ?」


バットを置き、バッティング手袋を外しながら軽く睨み付けてくる。


そうだった。立ち止まってる暇があったら少しでも強くならなきゃいけないんだ。


オレと石川はボールが入ったカゴを持って、外野のあちこちに散らばっているボールを集めるため外野に向かって歩き始めた。








自室の部屋のベッドの枕元に転がっている硬式ボールを握り、天井に向かって軽く投げる。


これは安定したリリースポイントの確認で、マウンドとバッターの距離をいかにして縮めるかという意識を持っているオレにとっては大切な練習の一環だ。


スピンが効かしてリリースしたボールは上昇し、数瞬だけ空中にとどまりやがて落下してきたところをキャッチしてまた投げる。


それをストレート、スライダー、シュートの順番で投げていく。


そして問題のカーブだ。


今まではスライダーの握りでボールを放す直前に抜くようにして投げていたが、三振を取れるようにするにはどうしても物足りない。


それにスライダーやストレートならまだ分かるけど、カーブで三振を取るってなかなか大変なことだと思うんだけど…?


とりあえず悩んでても仕方ない。


現代人必須のツールとなっているスマートフォンで多種多様な変化球が掲載されているサイトを開こうとした。…が、間違えて隣にブックマークしている動画投稿サイトの方を押してしまった。


この動画投稿サイトでも見れないことはないし、プロの選手の技術を見て覚えるのもいい気分転換になる。


そこでオレが最も憧れていて、実際にその投球モーションを参考にしているピッチャーの奪三振リプレイ集というタイトルの動画をタップした。


普段のストレートは140km/hそこそこで抑えているが勝負どころでは150km/h連発したり、スライダーやカーブ、シュート、フォークやチェンジアップといった多種多様で全てが三振を取れるという正にエースとして相応しいとオレ自身は思っている。


他にもいろんなピッチャーのピッチング集の動画を見ていて、次の動画を見ようとしたところで何だか見慣れない動画を見つけたのでそれをタップする。


ダウンロードが終わり、動画を見たらどうやら甲子園のとある試合の動画だったようだ。


だけど、その中心にいたピッチャーは超高校級と表すには勿体無いくらいのピッチングをしていた。


そしてその動画内の試合の実況を聞いたオレは開いた口が止まらなかった。





『3年 秋山 翔吾 151球の熱投の末甲子園決勝の地でノーヒットノーラン達成という華を添えて神奈川県代表東王大付属高校!初優勝!!』



………この秋山って、あの…?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ