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プロローグ

 「なにやってんの? 志野田サン」

 オレは廊下で虫取り網を一振りした彼女に出くわした。


 この高校に入学して一ヶ月。校内探検隊とか言いながら独り、休み時間に校内をふらふらしていたオレは特別教室棟への渡り廊下で、虫取り網を片手に虚空をじっと見つめる彼女に出くわしたのだ。

(何してんだ?)

 クラスメイトになったその「志野田サン」。入学2週間後にはその虫取り網を手に登校していたヘンな女だ。もっともヘンなのは彼女だけでなく、他クラスにも上級生にもいたわけだが。

 それはともかく、ナニを見ているのかと、彼女の視線を追ってみたが、その終着点である灰色の天井には何もない。強いて言えば汚れ? とか思っていると、彼女の手にあった、磨き上げたシルバーの柄にキラキラと粒子のように輝く網が一回転。いつもより真剣な顔で踏み出し、バトンのように両手でまわしたその動作は流れるように綺麗だった。

 網の中を見た彼女はにっこり笑っているから何かしらの成果はあったのだろうか。

 気になって近づいていった俺は、彼女に声をかけつつ網の隙間から覗き込んでみたが、何も取れたようには見えない。

「……何かとれたわけ?」

「……えへっ?」

 改めて志野田サンを見る。

(……カオ、引きつってんな。)

 改めてヘンな志野田サンを見る。ショートボブの割と可愛い部類に入る女の子だ。教室ではいつも明るく、というよりうるさい類で友人も多そうだ。気も強そうだし男女関係無く仲良くなるタイプ。案外男子にも人気かもな。だがオレにはやはり「虫取り網」。何時でも何処でも手放さない、なんとも胡散臭い。

「……」

 うろんな目で見ると、今度は小指を立てて、ほほほと作り笑い。 

「…何もとれないわよっ。見れば」

 彼女はやけくそのように網をぐいと突き出した。

 いつもながら網はキラキラと輝いている。網の目は非常に細かく、間隔はミリ単位だと思う。柄の方はアルミかなにか、とにかく軽いもののようだ。でもアルミより軽くて強度も強そうなんだよな。金属素材には全く詳しくないからよくわからんが。

 で、網の中にはどんなに目を凝らしても何か入っているようには見えない。手を伸ばそうとしたところで、ひょいと取り上げられた。

「もぉーいいよねっ。じゃね!」

 志野田サンは掻っ攫うように虫取り網を引っ担いで、逃げるように去っていった。

「効かないぢゃんっ! 先輩のうそつきっ」

 とかなんとかぶつくさ言いながら、カオを真っ赤にしていたようだ。

(……なんだ、そりゃ)

 彼女への印象はますます「ヘンな女」に確定したのだった。

今後、物語の本筋とは関係のないあほな学園生活描写や、この登場人物は不必要だよね?という人物も登場しますが、とにかく主人公たちが楽しんで生活しているところを書きたかったのであえてそのままにしています。

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