痒み止め
「あ~、眠い眠い。さっさと寝よう」
「うわぁ、めっちゃ蚊に刺された~。痒み止め塗らないと~」
ガサゴソ。
「あれ?この辺にあると思ったんだけど…どこだ、痒み止め~」
「む、わたしを呼びましたねっ?」
「誰だお前、帰れ。俺は今ものすごく蚊に刺されて痒いんだ。邪魔をするな」
「だからこそ、わたしの出番ですよーっ」
「だから誰だお前。今、家には俺しか居ないはずだぞ。お袋は死んだし、親父は単身赴任だし」
「それも知ってますよ~。だって今までこの家に一緒に住んでいたじゃないですか~」
「俺にはお前みたいな身長が140にも満たないちっさい妹みたいなやつは居ない、それより痒み止めはどこだ~」
ガサゴソ
「だから、わたしならここにいますよーっ」
「アホか、お前は痒み止めじゃないだろ」
「いいえ、あたしは痒み止めです」
「は?」
「?」
「どう見てもただの美少女だろ、帰れ」
「そそ、美少女だなんて…もうーっ、巧さんてば~」
「何故俺の名前を知っている、あ~腕が痒い」
ボリボリ
「あーっ、掻いちゃだめですよ!痒み止め塗った時に滲みちゃいますよっ」
「おい、やめろっ離せっ、掻かせろっ」
「だーめーでーすーっ。わたしが塗ってあげますから、じっとしててください」
「なんだよ、お前持ってたのかよ。なら早く言えよ。って」
ぺろり
「うおっ、いきなり舐めるなっ」
「ぺろり…はい、これで痒くなくなりますよ~」
「そんな馬鹿な。ん?舐められたところがスースーする。おお、痒みが治まってきた」
「えへ~、お役に立ててよかったです」
「お前、本当に痒み止…おい?どこに行ったんだ?」
「………夢か」
ふと横を見ると、痒み止めがころころと転がっている。
そして腕には痒み止め独特の湿布のような匂いと清涼感のあるひんやりとした感覚が残っていた。