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後日談

「……あの後菜々さん、結局警察には言わなかったんだって?」


 事務所のソファーに腰掛けながら、優が問いかける。


 あの事件が幕を閉じてから、既に数日が経過していた。


 長椅子に腰かけながらクロスワードを熱心に解く啓輔は、優の方を見ずに言う。


「ああ。お互い、やり直したいと思っているらしい。……まあ、あれだけ仲の良かった二人の事だ。いつか、和解出来る日は来るだろう」


「――友情なんて儚い物、異性が絡むと、あっけなく壊れちゃうからね。一度壊れかけた友情を直すのには、相当な時間と苦労を伴うよ」


「たかが六年間しか生きていない子供(ガキ)が何語ってんだか」


「……パパ、何か言った?」


「――いや。別に」


 小声で呟いたつもりだというのに、優の地獄耳にはしっかり届いていたらしい。じとりとした目でねめつけられる。


 冷たい視線から逃れるように、啓輔は話題を変える。


「そういえば優。駅前に、新しいケーキ屋さんがオープンしたらしいな。今から行ってみるか?」


「本当!? 駅前のケーキ屋さんって、エトワール第六号店の事だよね? 新宿で爆発的な人気を誇り、この度各地に進出してきた――って奴」


「……いや、知らないけど。よく分からないけど、凄いな」


 本当こいつおやつの事になると、目の色変わるよな――と、啓輔は改めて感心する。


 取りあえず驚かれた事は感じたのか、優は得意げに言葉を続ける。


「しかも、何と驚き!  エトワールのショートケーキ一個の値段知ってる? 一個千五百円する超高級ケーキなんだよ! ちょっと贅沢なひと時を送りたい方に是非――っていうのがキャッチコピーなの。普段なら絶対買ってくれない癖に、今日のパパ、随分太っ腹だね!」


「……は?」


 ショートケーキ一個千五百円――って、普通の店で買えば、三つ買ってお釣りが出るだろう。


 啓輔は一般人と比べても変わらない金銭感覚を持っていると自分でも思っているが、それにしても高い。


 啓輔が呆然としているのを良い事に、優は早口でまくし立てる。


「そんなお店に行くのに、こんなラフな格好はまずいよね……。パパ、ちょっと待ってて! 優、今すぐ着替えてくるから!」


「え? あ、おい――ちょっと!」


 啓輔の焦ったような声を聞かず、優はさっさと奥の部屋へと向かう。


 ――話を反らすためだけだった筈の話題が、彼に無駄な出費を促す事へと繋がってしまう。


 確実に軽くなるであろう財布に思いを馳せ、啓輔は溜息をついた――。

これにて、「沢内探偵事件録 女子高生ストーカー事件」は完結となります。


ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

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