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第十五話

 数分後。三人は学校近くの公園に居た。


 ここでは何だから――と、啓輔が誘ったのだ。


 場所を選ぶような話なのだろうと察した琴音は、その提案を快く受け入れた。


 琴音を真ん中にして、三人がベンチに腰掛けると、啓輔が口を開いた。


「まず塚本さん。貴方に、一つ確認しておきたい事があります。……速水さんが、ストーカー事件に巻き込まれている事はご存知ですよね?」


「はい。……そのせいで菜々、最近学校来てなくて……」


 親友である少女の名を出され、琴音は小さく俯く。


 大切な友人が学校に来ていない――というのは、中々辛いものだ。


「――あの子、昔からこういう事に弱くて……色々考えすぎちゃう分、心のダメージが大きいんだと思います」


「昔? 彼女とは、幼馴染か何かなんですか?」


「中学の時の同級生なんです。同じクラスになって意気投合して……。菜々とは、よく気が合うんです」


「成程。気が合う――ですか」


「……それが、何か?」


 “気が合う”という部分に、啓輔はやけに過剰(かじょう)に反応する。


 言葉自体に、特におかしな部分は無い筈だ。琴音は、彼の反応に首を傾げる。


「いえ。……“気が合う”ならやはり、好きな人の好みも似ているんでしょうね」


「……私を、疑っているんですか?」


 啓輔の言葉で琴音は、彼が何を言わんとしているのか察したようだ。


 不快気に眉根を寄せる。


 彼はその質問には答えず、言葉を続けた。


「最初、速水さんの話を聞いた時、幾つか不思議に思った事があったんです」


「聞かせて下さい」


「――いえね。そんなにおかしい(・・・・)というほどの事でも無いのですが。菜々さんが脅迫状を貰った翌々日……塚本さん。あなた、朝彼女を迎えに行ったらしいのですが、覚えてますか?」


「はい。確かに、そんな事もありましたね」


「……何故、その日の前日――つまり、脅迫状が届いた翌日に、彼女の家に迎えに行かなかったのですか?」


「そんなの……個人の自由じゃないですか。あの日は、偶々(たまたま)寝坊しちゃって……菜々と一緒に行くような余裕、無かったんです」


「――まあ、良いでしょう。それくらいの可能性なら、充分考えられますしね」


 勿体ぶった割には、意外に啓輔はあっさりと引き下がる。


 しかし、彼の表情はまだ余裕がある。


 これ以外にも、琴音を犯人扱いする理由があるらしい。


「それからもう一つ。その日の昼。松浦さんと速水さんが口論になった時の事です。勿論、覚えていますよね?」


「ええ」


「あの時、速水さんに“別れれば?”なんて、告げてましたよね? 私には、どうしてもそれが貴方の本心にしか思えないんですよ。速水さんは、自分の事を考えて言ってくれた、と解釈(かいしゃく)したようですけど」


「解釈も何も、私、別に本気で言ったわけじゃ――」


「あの場合、貴方が本気でそう思っていたなら、“二人はお似合いなんだから、もっとしゃきっとしなさい”とでも、言いそうなんですけどね?」


「……それは――」


 確かに琴音の性格なら、自分の意見を言った後きちんとフォローするだろう。


 “別れた方が良い”なんて後ろ向きな意見は、彼女らしくない。


「それに、貴方が犯人なら、様々な疑問が解決します。例えば、無言電話にしても、友人である貴方なら、電話番号を知っているのも頷けます。非通知設定なんて、今の時代、簡単に出来ますしね」


「そ、そんなの、ただ単に帳尻を合わせているだけじゃない! 別に、私じゃなくても誰にだって出来るわよ! あの“別れろメール”の件だって、今時アドレスくらいすぐに手に入るでしょ!?」


「……別れろメール、ですか」


 そこで、啓輔はすっと静かな声音になる。


 琴音は彼の態度を不審に思い、何か失言をしてしまったのか!? と、(あせ)る。


 今までの発言におかしな所など無かった筈だ。……一体、何故彼は急に――?


 彼女の疑問は、啓輔の一言によってすぐに解決する事となる。


「塚本さん――何故(・・)その事を(・・・・)ご存じなのですか(・・・・・・・・)?」


「え? ……あ」


「彼女はそれ以来学校に来てはいない筈なのですが……一体、どこでその情報を?」


「そ、それは……そ、そうよ! あの日、菜々からメールが来て……。それで、知ったんです」


「……ほう。成程」


 琴音は、明らかに動揺(どうよう)していた。


 これでは、自分で“私が犯人です”と言っているようなものだ。


 もう一息で、彼女は全てを認めるだろう――と、啓輔は判断した。


「そ、そうよ……犯人はあの女――菱本さんよ。そうに決まってるわ!」


「……その、根拠は?」


「根拠なんてあるわけないでしょ? 状況的証拠だけで充分よ! あの子がやったに決まってるわ!」


 かなり錯乱(さくらん)しているようだ。


 うわごとのようにぶつぶつと“そうよ……彼女が犯人に決まっている”などと繰り返している。


 これこそが啓輔の最大の狙いだった。


「――彼女に犯行は不可能ですよ。脅迫(きょうはく)状が届く前々日まで、彼女はアメリカにいたんですから」


「な、何よ。前々日でしょ? 帰って来た翌日は休むとしても、充分脅迫状は書けるし、下駄箱にいれておく事だって――」


「無理ですね。そもそも、脅迫状なんてものを書きようがない」


「……それ、どういう意味ですか?」


「お忘れですか? ……二人が付き合いを始めたのは、脅迫状の届く前日――つまり、脅迫状を書くためには、二人が付き合い始めた、その日にその事を知っていなくてはいけないんですよ」


「あ……」


 そこまで言われ、ようやく彼女は取り返しのつかない失言をしてしまった事に気が付く。


 しばらく目を見開いた後、小さく項垂(うなだ)れた。


「――最初のきっかけは、ほんの些細(ささい)な事だったんです」


 琴音はそう言うと瞳を伏せ――一年前の春に、想いを()せた。

次回、犯人の独白(?)編突入ですw


きっともうすぐ完結のはず……です。多分。


長くても2~3話で終わればいいな……と思っております^_^;


ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました☆


最後までお付き合いいただけると嬉しいです♪



追記

すみません^_^; あと2~3話じゃ終わりそうもないです(汗)


全く話が進まないのですが(汗)

 

のんびりと最後までお付き合い頂けると嬉しいです☆

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