第十四話
舞花の発した一言で、一同はシン――と静まり返る。
最初の方は不敵に微笑んでいた彼女も、あまりにも長い間啓輔が黙っているので、気まずそうに視線を反らした。
少し言いすぎたかしら――と言いたげに、舞花は啓輔を見やるが、彼は何も言わない。
結局舞花は話しかけるタイミングを掴めず、黙り込んでしまうのだった。
と、その時――。
「ねえ、お姉さん。それ、見せて?」
「……え?」
突如、舞花の耳に、幼い少女の声が飛び込む。
それまで、啓輔の横で大人しくジュースを飲んでいた少女――優だった。
彼女は不思議そうな瞳で、舞花の鞄に付けられている羽の付いたキーホルダーを見つめていた。
そして、悪意を感じさせない純真無垢な瞳で微笑みかける。
「このキーホルダー、どこで買ったの? すっごく可愛いね」
「ああ、それ? ドリームキャッチャーっていうの。アメリカのキーホルダー……っていうよりは、お守りみたいな物かしら? 悪い夢を、網でからみとってくれるんですって」
「へー。お姉さん、アメリカなんて行ったんだ。いいなー」
優はそう言いながら、にこやかに笑う。
彼女の底抜けない明るさに、舞花の心も癒されたらしい。
気が付けば、二人はにこやかに微笑みあっていた。
「優、行った事ないからよく分からないんだよね……。家族旅行?」
「まあ、そんな所ね。両親があっちに住んでるから。お休みの時、偶に遊びに行くのよ」
「お休み……って、この前の三連休?」
「ん。そうよ」
“三連休”というのは、今から三週間前の事。
金曜日に祝日が被った為、本来なら土・日の二連休が、金・土・日の三連休となっていたのだ。
「じゃあ、帰ってきたのは日曜日? 随分急な旅だったんだね」
「まあね。……といっても、時差ボケとかの影響で、実際に学校に行き始めたのは、その翌々日の火曜日からなんだけど」
「ふーん……」
優がそこまで言うと、啓輔がはっと何かに気付いた様な顔をする。
小さく口角を上げた父を見やり、優はそっと目を細めた――。
翌日。少女は、休日だというのに学校に来ていた。
別段、部活動や委員会があるわけではない。
昨夜“速水菜々の件について話がある”と、探偵を名乗る男から電話があったのだ。
少女にとって、“速水菜々”は決して赤の他人ではない。
一体何の話なのだろう――と思いながら、学校までの道を歩いていた。
やがて少女は、学校の正門前に着く。
そこには二つの人影があった。
一人は、電話をした男であろう若い青年。
もう一人は、その男の娘らしき幼い少女だった。
男は、少女を見やると、小さく手を挙げる。
そして、つかつかと少女の元へ歩み寄っていった。
「こんにちは。……いや、“初めまして”の方が正しいのかな? 塚本琴音さん、ですね?」
「はい、初めまして。……確か、沢内探偵、でしたよね?」
少女――琴音は、小さく微笑んだ。
次回解決(?)編なので、今回は結構短めです(汗)
出来しだいうp予定なので、読んで頂けると幸いです!