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銀の槍のつらぬく道  作者: F1チェイサー
紅い霧と翠の眼
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銀の月、暴れまわる

 夜のバルコニーで、レミリアは月を見ていた。

 今宵の月は銀色の月で、暗黒の夜天に映える見事なものであった。

 しばらく眺めていると、ノックの音が聞こえてきた。


「失礼します。お茶をお持ちしました」

「入っていいわよ」


 レミリアが声を掛けると、メイドが紅茶のポットとティーカップの乗ったトレーを運んできた。

 咲夜は手際よく紅茶を注ぎ、レミリアの前に邪魔にならないように置く。


「仕事はもう良いのかしら、咲夜?」

「はい。銀月がちょうど居たので手伝ってもらい、そのお陰で時を止めるまでもなく早く終わりました」


 レミリアの質問に、咲夜はそう言って微笑んだ。

 それを聞くと、レミリアは思わずため息をついた。


「本当に何でも出来るのね、あいつは。うちの執事になってくれれば、咲夜にも楽をさせられるのに」

「確かに、居れば助かる存在ではありますね。銀月は」


 レミリアの言葉に、咲夜はそう言って頷く。

 するとレミリアは微笑を浮かべた。


「……銀月、か。ねえ咲夜、あいつに銀月って名前が付いてるって面白いと思わない?」

「面白い、ですか?」


 レミリアの言うことの意味が分からず、咲夜は首をかしげる。

 するとレミリアは楽しそうに笑いながら話を続けた。


「ええ。銀って聖なるものとしてよく扱われるでしょう? つまり、銀には魔除けの力があるのよ。で、月って言うのは女性の象徴。神話なんかでも、月を司るのは大体が女神よ。だって言うのに、その名前が付いている本人は銀という字とは真逆の妖怪達と共に暮らし、月と言う字に反して男。こう考えると面白いでしょう?」

「確かに、そう考えると面白いかもしれませんね」

「それに、銀月って言う名前自体も奇妙よ。さっきも言った通り、銀には魔除けの力があるわ。だと言うのに、その後ろについている月って狂気の象徴よ? こんなねじれきった名前なんてそうそうお目にかかれないわ」

「そういえばそうですね」


 咲夜はレミリアの言葉にそう言って笑い返す。

 レミリアはそれに満足そうに頷くと、再び月を眺めた。


「名は体を表す。とすれば、銀月はいったいどんな狂気を孕んでるんでしょうね?」


 レミリアは月に向かってそう問いかける。

 銀色の月は、ただ優しく周囲を照らし出していた。






 部屋に充満する血の匂い。

 床には色鮮やかな紅い液体が流れ出し、冷たい石造りの床を染めている。

 その液体は白装束の少年から流れ出しており、その服を紅く染め上げている。

 少年は床に倒れ臥したまま動く気配がない。


「う~ん、どうしようかな? まだ脈はあるみたいだけど……」


 少年が地面に倒れ臥す原因となった少女、フランドールは銀月の首に手をあて、脈を取る。

 銀月の心臓は弱々しくも鼓動を続けている。

 しかし、このまま放置してしまえば出血多量で失血死してしまうのは間違いない。

 そんな中、フランドールは銀月の身体を起こして、傷口に手を当てる。

 そこから滴り落ちる血液がその手を濡らし、白い手を紅く染める。

 フランドールは自分の手に付いた血をペロリと舐め取った。

 すると、フランドールは驚いた表情を浮かべた。


「うわっ、凄く美味しい!! そうだ、吸血鬼にしちゃえばまた遊んでくれるかなぁ?」


 フランドールはそう言いながら床に伏したままの銀月を見る。

 しばらく考えると、彼女は笑顔で頷いた。


「うん、人間だとあっという間に死んじゃうもの。でも、吸血鬼にしちゃえばずっと遊んでもらえるよね!」


 いかにも名案を思いついたと言わんばかりにフランドールはそう言うと、銀月に近寄った。


「それじゃ、死んじゃう前にいただきま~す!」


 フランドールは銀月に噛み付こうとした。


「きゃああ!?」


 しかし次の瞬間、ものすごい力で彼女は弾き飛ばされてしまった。

 腹を強打し、咳き込みながらフランドールは立ち上がる。


「けほっ、いったぁ……」


 フランドールは状況を確認した。

 自分を弾き飛ばす要素など、ここには一つしかない。

 フランドールは、目の前に転がる少年を見やった。

 すると、少年はゆっくりと立ちあがろうとしていた。


「…………」


 銀月は俯いたまま、少しずつ立ちあがっていく。

 胸から滴り落ちる血は段々と量を少なくしていき、やがて完全に止まった。

 そしてフランドールの見ている前で、胸の傷が見る見るうちに塞がっていった。


「あはは、な~んだ、まだ全然平気だったんだね、銀月♪」


 立ち上がった銀月を見て、フランドールはそう言って笑う。

 それは本当に嬉しそうなもので、遊ぶのが楽しくてしょうがないと言った感じのものであった。


「…………」


 フランドールの問いに銀月は答えない。

 銀月は俯いたまま、手にした槍をゆっくりとフランドールに向けた。


「むぅ……答えてくれない……ま、いいか。遊んでから答えてもらおっと♪」


 フランドールはそう言うと再び四人に分裂して、炎の剣を手に取った。

 そのまま泰然と構え、銀月の動きを待つ。


「……」


 すると、銀月は凄まじい速度で周囲を飛び回り始めた。

 その速度は先程の身体強化と同じくらいのもの。

 しかし、将志の力を借りている証の銀の光の粒は見当たらない。

 どうやら純粋に自分の力だけでこの速度を出しているようであった。


「また追っかけっこ? いいよ、また捕まえてあげる!!」


 フランドールはそう言うと銀月を追いかけ始めた。

 素早く動き回る血染めの白衣に、四人の吸血鬼が襲い掛かる。

 すると銀月は手にした鋼の槍を札にしまい、青白い槍を取り出した。


「…………」

「うわわっ!?」


 無言のまま銀月は連続突きを放つ。

 その攻撃は嵐のようで、四人のフランドールを纏めて攻撃した。

 フランドール達はその攻撃を捌いていく。

 槍自体が軽いので、打撃としてみた時の威力はさほど大きくはないため、弾かれる事なく捌き切る事が出来た。


「今度はこっちから行くよ! えいっ!!」


 攻撃を捌ききると、今度はフランドール達が一斉に剣を上から振り下ろした。

 四本の炎の剣が銀月に牙を向く。


「…………」


 銀月は槍を横に持ち、柄の部分でそれを受けた。

 ミスリル銀製の槍は断たれることなく、銀月は剣撃を受け止めることに成功した。

 それと同時に、炎の剣の熱風が銀月の髪を撫ぜた。


「わぁ……」


 その瞬間、フランドールは言葉を失った。



 そこにあったのは、強い光を湛えたエメラルドの様な、美しい翠色の眼だった。



「きれー……」


 フランドールの口からため息の様な惚けた声が漏れ出した。

 彼女は魅入られたかのように、宝石のように輝く銀月の眼を見つめる。


「…………」

「きゃあっ!?」


 銀月はそんなフランドールに向かって蹴りを放ち、鍔迫り合いの状態から離脱する。

 そして、再び部屋中を駆け回り始めた。


「…………」


 暗い室内の闇の中で、銀月は走り回る。

 その翠色に光る双眸が尾を引き、一対の翠の流星となって部屋中を駆け巡った。


「……あははははは!! 凄い凄い!! あんな綺麗なの初めて見たよ!!」


 フランドールは我に返ると、興奮した様子でそう叫んだ。

 紅い瞳を爛々と輝かせ、部屋を翔る翠の流れ星を眼で追う。


「…………」


 銀月はそんなフランドールに一直線に飛びかかった。

 その手に握られているのはいつの間にか黒い槍に変わっていた。

 大きく頭上に振りかぶったそれを、銀月は勢いよく振り下ろす。


「……っ!?」


 フランドールはその攻撃に寒気を覚えて咄嗟に横に飛んだ。

 その直後、黒い槍が唸りをあげ、空気を震わせながらフランドールが居た場所を通り過ぎる。

 そしてその槍が床に触れた瞬間、周囲を激しく揺さぶりながら石の床が砕け散った。


「…………」


 外したと見るや、銀月は黒い槍を鋼の槍に持ち替えてフランドールに迫る。

 軽いミスリル銀の槍とは違い、重い攻撃が次々と繰り出される。


「あうっ!!」


 その攻撃はフランドールの身体に突き刺さっていく。

 片や数百年も地下に閉じこもっていた者、片や血反吐を吐くような修行を何年も続けていた者。

 身体能力にほとんど差がない今、その技量の差が現れ始めていた。


「あはは、やっぱり強いね、銀月は!!」


 それにもかかわらず、フランドールは楽しそうに笑う。

 攻撃を受けた箇所の傷が、まるでコマ送りのように塞がっていく。

 吸血鬼の再生能力のお陰で、銀月の攻撃を受けても致命傷にはなりえないのだ。


「それっ!!」

「やあっ!!」


「…………」


 その上、今のフランドールは四人も居る。

 数の利は技量の差を埋め、現在戦いは膠着状態に陥っていた。


「フラン!! 何が起きているの!?」

「妹様、ご無事ですか!?」


 そこに新たな人影、レミリアと咲夜が現れた。

 どうやら先程の神珍鉄の槍が起こした地鳴りを聞いて飛んできたようであった。

 新たな客をフランドールは笑顔で迎え入れた。


「あ、お姉様。それに咲夜も。うふふ、お姉様達も銀月と遊びに来たの?」

「銀月……?」

「お、お嬢様、あれを!!」


 慌てた声の咲夜に促されて、レミリアはその方角を見た。


「…………」


 そこには、自分達を見つめる翠色に光る眼があった。

 暗い部屋に煌々と輝くそれを見た瞬間、レミリアは息を呑んだ。


「っ……輝く翠色の眼……悪魔の、翠眼!!」

「…………」


 レミリアがそう言った瞬間、銀月の回りに銀色の光の粒が集まり始めた。

 その光は濁流となって銀月の身体に流れ込んでいく。

 それを見て、レミリアは危機感を孕んだ声で叫んだ。


「咲夜! 銀月を止めるわよ! このままじゃ紅魔館が危ないわ!!」

「かしこまりました!」


 咲夜はそう言うと即座にナイフを銀月に向かって投げつけた。

 しかし銀の光の奔流に触れた瞬間、そのナイフは弾き飛ばされた。


「弾かれた!?」

「駄目、止められない!」


 レミリアがそう言うと同時に、光の奔流は収まった。

 そして、そこには身体から銀色の光を発する銀月の姿があった。

 先ほどは身体の周囲を光の粒が飛び交っていたが、今度は体の中から発光している。

 つまり、それだけ将志の力を多く取り込んでいるということである。


「…………」


 銀月はもう何も語らないし、もう何も聞こえない。

 ただ仮面のように無表情で相手を見定め、槍を向ける。

 もはや銀月は暴走と言っても過言ではない状態にまできていた。


「……咲夜、フラン。心してかかりなさい。目の前に居るのは戦神の力の一端。うかうかしてると殺されるわよ」


 レミリアはそう言うと、真紅の槍を取り出して身構えた。

 咲夜もナイフを構えて銀月の動きを見据えている。


「わぁ~……強そうだね」


 そんな中、フランドールは楽しそうに笑みを浮かべた。

 その表情はプレゼントの箱を開けるときの様な表情であった。


「……フラン、これはもう遊びじゃないわ。本気で掛かりなさい。じゃないと……」

「…………」


 レミリアがフランドールに注意を促している最中、銀月の姿が消える。


「きゃっ!?」


 突如としてフランドールが突き飛ばされた。

 するとその場所を、風のように銀月が通り過ぎていった。

 もしフランドールが突き飛ばされていなかったら、その身体を槍が貫いていたことであろう。


「大丈夫ですか、妹様?」


 咲夜がフランドールの無事を確認する。

 どうやらフランドールを突き飛ばしたのは彼女の様であった。


「はああっ!」

「…………」


 その一方で、レミリアが銀月に向かって攻撃を仕掛けていた。

 真紅の槍を次から次へと繰り出し、銀月へと襲い掛かる。

 銀月はその攻撃を的確に捌きながらレミリアへと反撃していく。


「お嬢様、援護します!!」


 そこに咲夜が援護射撃を銀月に掛ける。

 銀のナイフは精確に銀月に向かって飛んでいく。


「…………」


 すると銀月は鋼の槍を片手に持ちかえ、空いた手にミスリル銀の青い槍を手に取った。

 銀月は片手でレミリアと戦いながら、銀のナイフを器用に叩き落していく。

 その動きは円を描き、独楽のように舞い踊るような動きであった。


「やああっ!」


 更にそこに四人のフランドールが襲い掛かる。

 フランドール達は銀月を取り囲むように動き、次々に攻撃を仕掛けていく。


「…………」


 銀月はその攻撃を最小限の動きで躱していく。

 フランドールは力は強いが、戦いに関しては素人である。

 訓練を積んだ者を何人も同時に相手にしたことのある銀月にとってこれくらいのことは造作もない。


「そこだ!!」

「……っ」


 しかしそれはレミリアの様な熟練者を含めない話である。

 レミリアの繰り出した槍は銀月の脇腹を深々と貫いた。

 槍を引き抜くとそこからは血が流れ出し、白い衣服を赤く染める。


「なあっ!?」


 しかし、その直後にレミリアは眼を見開いた。

 何故なら、銀月に空いた穴が見る見るうちに塞がっていったからである。

 その様子に、レミリアは歯噛みした。


「くっ……こいつ本当に人間!?」

「お嬢様、妹様!! 下がってください!!」


 咲夜がそう叫ぶと同時に、レミリアとフランドールは一斉に下がった。


 そして次の瞬間、地面に大量の銀のナイフが散らばった。

 連続した金属音が部屋の中に鳴り響く。


「あ……嘘……」


 その様子に、咲夜は愕然とした。

 そんな咲夜にレミリアが銀月と切り結びながら声を掛けた。


「咲夜!! しっかりしなさい、何があったの!?」

「お、お嬢様……今、銀月は私の世界の中で、速度を落としながらですが動きました……」


 自分の能力を破られて呆然とする咲夜。

 それを聞いて、レミリアの顔が驚愕に染まった。


「何ですって!? ……そうか、銀月の能力か!! ええい、厄介な能力ね、本当に!!」

「…………」


 レミリアが叫んだその時、銀月はいつの間にか持ち替えた黒い槍を振りかぶっていた。


「お姉様、危ない!!」

「分かってるわよ!!」


 フランドールが叫ぶと同時にレミリアは飛びのき、そこに黒い槍が振り下ろされる。

 重く響く風切り音と共に振り下ろされたそれは、再び盛大に床を砕いた。


「…………」


 銀月は自分の周囲に誰も居なくなると、辺りに大量の札をばら撒いた。

 銀の光を纏ったその札は、空中に留まって光り続ける。


「わぁ、何かいっぱい出てきた!!」

「フラン、仕掛けるわよ!! これが発動する前に銀月を止めるわ!!」

「援護します、お嬢様!!」


 咲夜が投げナイフで宙に浮かぶ札を叩き落して道を作り、レミリアがそこを進む。

 その一方で、フランドールが炎の剣で札を焼きながら銀月に攻め込んでいく。


「…………」


 近づいてくる相手に、銀月は黒い槍を振るった。

 とんでもない質量も持つそれは、喰らえば幾ら吸血鬼と言えどもしばらく戦闘不能になってしまいそうな破壊力がある。


「そんなもの、当たるかぁ!」

「おおっと!!」


 その攻撃を、全員軌道を変えることで躱した。

 黒い槍が近くを通り過ぎると空気の振動が肌で感じられ、その威力を窺わせる。


「はあああ!!」

「やあああ!!」


 二人は銀月の攻撃を避けると、気合と共に自分の武器に魔力を通す。

 レミリアの槍は真紅の光を放ち、フランドールの剣が激しく燃え上がる。


「……っっ」


 そして懐に入り込み、銀月の身体を次々に攻撃した。

 深々と刺さった四本の炎の剣と、一本の真紅の槍。

 銀月は剣の炎に焼かれながら、それを無感情のまま見つめる。


「お嬢様、危ない!!」

「え……?」


 そこに異変に気がついた咲夜が叫び声をあげた。

 レミリアが周囲を見回すと、先程ばら撒かれた札の残りが取り囲んでいた。

 それを確認すると同時に、銀月は手を上に上げた。


「しまっ……」

「あっ……」

「…………」


 銀月が手を振ると、その札は一斉にレミリアとフランドールに殺到し、爆発を起こした。

 轟音が叫び声をかき消し、銀の閃光が辺りを真昼の空のように照らす。

 レミリアとフランドールは吹き飛ばされ、床に転がった。

 それを見て、咲夜はレミリアに駆け寄った。


「お嬢様!」

「……大丈夫よ。何とか直撃だけは避けたから……フランは?」

「私も大丈夫よ。それにしても、銀月強いね。あれだけ串刺しになってもピンピンしてるよ」


 フランドールが指差す方向には、自分に刺さった剣と槍を黙々と抜いている銀月の姿があった。

 衣服は血まみれの上に焼け焦げてボロボロであるが、その下の肌は何事もなかったかのようにかすり傷一つない。

 その翠色の双眸は絶えることなく光り輝き、衰えを見せない。

 それを見てレミリアは俯き、唇を噛んだ。


「……覚悟を決めないといけないわね」

「お嬢様?」

「フラン。銀月に貴女の能力を使いなさい」

「え?」


 レミリアが話しかけた瞬間、フランドールは首をかしげた。

 それを見て、レミリアは首を横に振る。


「可哀想だけど、仕方がないわ。何とか正気に戻したかったけど、もう私達じゃ無理よ。死にたくなければ、殺すしかないわ」

「銀月、壊しちゃうの?」


 フランドールは悲しそうな表情でレミリアを見る。

 レミリアは苦悶の表情を浮かべながら頷いた。


「……ええ。もう、そうするしかないわ」

「……もったいないなぁ」


 フランドールはそう言って銀月を見た。


「…………」


 銀月は自分の身体から一本ずつゆっくり剣を抜いていく。

 その度に床に落ちた剣が音を響かせていた。


「急ぎなさい。このままじゃ、私も咲夜も、フランだって危ないのよ!」

「……うん、分かった」


 フランドールは銀月を見据えて立った。

 銀月は自分の身体に刺さった最後の真紅の槍を床に捨てると、フランドールのほうを見た。


「きゅっとして」

「…………」


 フランドールの手の中に、目が作られる。

 銀月は槍を構え、攻撃を仕掛ける用意をした。


「ドカーン!!」

「っっっ!?」


 フランドールが眼を握りつぶすと、何かが破裂する音が聞こえた。

 銀月の手から黒い神珍鉄の槍が床に落ち、重々しい音を立てる。

 それと同時に銀月は膝を折り、纏った光を霧散させながらゆっくりと倒れこんだ。


「……かはっ……」


 最後に口から血を吐き出すと、銀月は動かなくなった。

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