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銀の槍のつらぬく道  作者: F1チェイサー
霊峰の槍と博麗の月
110/175

銀の槍、緩めてやる

 雪が降りしきる境内。

 冬を迎えた幻想郷は一面が雪化粧に覆われ、銀の霊峰もその名の通り白銀に染まっている。


「……冬か……」


 そんな雪の積もった境内を見て、銀の髪の青年は誰に聞かせるでもなくそう呟く。

 境内を見下ろす場所にある、灰色の山の天然の修行場は三方向を岩盤に囲まれており、開いている一方向からは将志達が住む神社の境内が一望できる。

 積もった雪には将志がつけた無数の足跡が残っており、鍛錬の直後であることが窺える。

 そんな将志のところに、ふらふらと飛んでくる影があった。


「寒いわ、お兄さま……暖かい飲み物が欲しいわ……」


 金の髪に赤いリボンをつけたその人影は、肩を震わせながら将志の隣に降り立つ。

 その身に纏った闇色の服には大量の雪が付いており、少しでも暖を取ろうと将志に取り付いた。

 将志は髪の毛に付いた雪を払いながらルーミアに話しかけた。


「……ルーミア、何故そうまで雪まみれになっているのだ?」

「チルノ達と一緒に特訓していたのよ。そしたらこうなったのよ」


 ルーミアは少し悔しそうに将志にそう話す。

 どうやら冬になって力をつけたチルノに手酷くやられた様である。

 それを聞いて、将志は小さくため息をついた。


「……修行が足らんな。強制はせんが、今のままではチルノや大妖精にあっという間に置いて行かれるぞ?」

「私、チルノ達と一緒に特訓した後でお姉さまと特訓してるんだけどなぁ……それに最近どうにも体が重いし、体の中が熱くなるときもあるのよね……」


 ルーミアはそう言いながら自分の体を解す様に動かした。

 すると、将志はピクリと眉を動かした。


「……何だと? ……ふむ。ルーミア、済まないがアグナを呼んでくれないか?」

「お姉さまを?」

「……ああ。頼めるか? それから、お前も一緒に戻って来い」

「良いわよ。ちょっと待ってて」


 ルーミアはそう言うとアグナを呼びに粉雪が舞う空へと飛び出していく。

 それからしばらくすると、燃えるような紅い髪をくるぶしまで伸ばした小さな少女を連れて来た。

 オレンジ色の瞳のその少女は、降り立つなり元気良く将志に声をかけた。


「おう兄ちゃん!! 何か用か?」

「……ああ。ルーミアの封印に関してな」

「んあ? ルーミアの封印がどうかしたのか?」

「……ルーミアの封印は力の何割に施したものだ?」

「あ~……確か九割方封じたんだと思うぜ? あんときゃルーミアを極力無害にしなきゃいけなかったからな」


 将志の質問に、アグナは封印を施した当時を思い出しながらそう答えた。

 その言葉を聴いて、将志は腕を組んで唸りをあげた。


「……そんなに封じたのか……つまり、今のルーミアは一割の力しか出せていないと言うことか」

「そうなるな。逆に言えば、それくらいやらないと危ない奴だったんだよ、こいつは」


 アグナはそう言いながらルーミアを見やる。

 かつてアグナはルーミアと戦った際に、封印を解かざるを得ないと判断したことがあった。

 そして実際、そうしていなかったらアグナは吸収され、ルーミアは手がつけられないほどになっていたかもしれないのだ。

 その話を聞いて、将志は少し考え込んだ。


「……確か、ルーミアの一番危険な能力は吸収だったな?」

「そうだぜ。力に触れるとそれを吸収してどんどん強くなるから、並の連中じゃ手がつけられねえんだ。で、それがどうしたんだ?」

「……ルーミアの力の一部、解放してやってはどうだ?」


 将志はアグナにそう告げる。

 すると、アグナは怪訝な表情で将志を見返した。


「はあ? どういうこったよ?」

「……お前が施した封印が、ルーミアの体に害を及ぼしている。封印が強すぎて、体に溜まり過ぎた力が体を蝕んでいる様なのだ」

「なあ、それやって大丈夫なのか? ルーミアが力を抑え切れずに前みたいに暴れだす可能性だって……」


 アグナは将志にその危険性を指摘する。その表情は硬く、不安そうな表情であった。

 何故なら、体調に支障をきたすほど力を押さえ込まれた者の封印を解く事は例が無いのだ。

 しかしその言葉をさえぎるようにルーミアはアグナを後ろから抱きしめた。


「お姉さま。私はここが大好きよ。今更みんなを敵に回したくなんて無いわ。お姉さまに誓って、前みたいなことはしない。私の力ですもの、ちゃんと制御して見せるわ」


 ルーミアは微笑みながら、優しい口調でそう言った。

 アグナはそれを聞いて黙り込み、しばらく考え込んだ。

 そして、小さくため息をついて頷いた。


「……わかった。その言葉、信じるからな」

「わははー、お姉さま大好き!」

「どわっ!? こらぁ! ほっぺた舐め回すんじゃねえ!!」


 アグナの一言で、ルーミアは嬉しそうに笑いながらアグナの頬を舐めまわす。

 そんなルーミアを、アグナは鬱陶しそうに引き剥がそうとする。

 しかしながら、殴ったり蹴ったり投げたりしないところを見るに、二人の関係が良好であるところが見て取れた。

 そんな二人を見て、将志は苦笑いを浮かべながら話しかけた。


「……ではアグナ、封印を解いてやる。ルーミアの封印を緩めてやってくれ」

「おう、わかった」


 将志はアグナに近づくと、三つ編みにされた長い髪を留めている青いリボンに手を添えた。

 するとリボンはひとりでに解け、アグナの体を白い光が覆いつくした。

 そして光が収まると、そこには大きく成長したアグナの姿があった。


「……んじゃルーミア、いったん封印を解くぜ」

「ええ、お願いするわ」


 アグナは緊張した面持ちでルーミアの赤いリボンに手をかけた。

 リボンが解けていくと同時にそこから霧状の闇があふれ出し、ルーミアの体を覆い始める。

 そしてしばらくすると、霧が晴れて中から金の髪の女性が現れた。

 その姿は大人になったアグナよりも少し低いくらいの背丈で、周囲には霧のような闇が浮かんでいた。


「……解いたぜ」


 アグナはそう言うと同時に、足元から炎を呼び出した。

 周囲を赤い炎が取り巻き、不測の事態に備える。

 その熱は周囲に積もった雪をみるみるうちに溶かしていき、辺りに熱風が吹き始めた。

 臨戦態勢のアグナが見守る中、ルーミアはニヤリと笑みを浮かべた。


「ふふっ、この感覚久しぶりね……ってあれ、お姉さまやお兄さまの目線がいつもより低いわね?」


 ルーミアは目の前にいるアグナと将志を見て、首をかしげる。

 その視線に敵意は無く、疑問を感じられる程度には理性的であることも見て取れた。

 その様子にホッと胸を撫で下ろす二人を尻目に、ルーミアは自分の体を見下ろした。


「わっ、何これ!? 体が大きくなってる!?」

「お前もうそうなってるのか? 随分早いな」

「……封じられた部分が大きかった分、蓄えられていた力も大きかったのだろうな」


 自分の体をぐるぐると見回しながら驚くルーミアに、アグナと将志は冷静にそう呟く。

 そしてしばらくすると、ルーミアの視線はアグナに注がれた。

 その熱いまなざしを受けて、アグナは思わず体を引いた。


「……な、なんだよ?」

「これでお姉さまともお揃いかぁ……ちょっと見上げる感じのお姉さまは新鮮でいいわね。ちょうどお姉さまとお兄さまみたいな感じで」

「あー……そう言えば、今の俺と兄ちゃんの視線がルーミアと俺くらいの視線だなっと!?」


 アグナが話をしていると、ルーミアは急にアグナに真正面から抱きついてきた。

 アグナはとっさにそれを受け止め、思わず抱きしめた。


「腕の中で少し見上げるなんて、本当にお姉さまって感じで何か良いわ……」


 ルーミアは上目遣いでアグナの顔を見ながら、紅潮してうっとりとした顔でそう呟いた。

 それを見て、アグナは疲れた表情でルーミアの背中に回した腕を離した。


「あーあー、分かったから離れろ、鬱陶しい」

「強いて言うならここの大きさがお姉さまに到底及ばないのが悔しいわ……」


 ルーミアはそう言いながらアグナの胸を揉み始めた。

 手に収まりきらない大きさのそれは、ルーミアの手によってぐにぐにと形を変える。

 その瞬間、アグナは体をビクリと大きく震わせ、裏返った声を上げた。


「きゃうん!? て、てめ、何しやがんだ!!」


 アグナはルーミアを振り払い、真っ赤な顔で胸を隠しながら後ずさった。

 それを見て、ルーミアはくすくすと笑った。


「うふふ、真っ赤になっちゃって、お姉さま可愛い♪」

「う、うるせえ! それ以上何かしやがったら、テメエを灰にしてやっからな!!」


 アグナは若干涙眼になりながら、足元から激しく炎を吹き出し始めた。

 その表情は必死で、これ以上からかうと本気で周囲のものを燃やしてしまいそうであった。

 そんなアグナを見て、ルーミアはニヤニヤと笑い続けるのであった。


「それにしても……こうしてみるとお姉さま達の力の強さが良く分かるわ。封印を解いたのに、私はお姉さまの力に全然及ばないんですもの」


 ルーミアはそう言うと封印の解かれたアグナと、その横に佇む将志と自分を見比べた。

 目の前で強大な力を漂わせるアグナに、一切の力を遮断してなお得体の知れない威圧感を持つ将志。

 ルーミアは自分の力が決して弱くは無いことを知っているが、それでもなお目の前の二人に及ばないことを痛感していた。

 そんなルーミアに、冷静さを取り戻したアグナが深呼吸をしてから話しかけた。


「……それで俺に危機感を抱かせるんだから大した奴だよ、お前は。それにしても、あの時力の差がはっきりしてるのに、よく俺に挑んだな?」

「それは若気の至りよ。相手の攻撃を少しずつ吸収していけば何とかなると思っていたもの」

「運が無かったな。相手がお前の吸収能力の限界を超えられる俺じゃなかったら危なかっただろうな」

「……それなんだが、恐らく俺でも出来るぞ」


 アグナとルーミアの会話を聞いて、将志はふとそう呟いた。

 それを聞いて、二人はキョトンとした表情で将志を見た。


「え、お兄さまが?」

「……ああ。二通りやり方を見せてやろう。ルーミア、闇の玉を作ってみてくれ」

「ええ、良いわよ」


 ルーミアはそう言うと、空中に直径5mほどの球体の闇を作り出した。

 それは空中にぽっかりと穴が開いたようにも見え、何もかもが吸い込まれそうな雰囲気を醸し出していた。

 試しに将志が弾丸を一発撃ち込んでみると、銀の弾丸は闇の中で溶けて内包していた力がルーミアへと流れていくことが確認できた。

 それを前にして、将志は軽く身構えた。


「……まずは……ふっ」


 将志はそう言いながら妖力で編んだ銀の槍を闇の球体に向けて投げた。

 すると槍は闇に穴を開けて貫通し、その向こう側の岩盤に突き刺さった。

 それを見てルーミアは少し驚いた表情を浮かべ、アグナは納得した表情を浮かべた。


「……貫通した? 力の吸収は少し出来てるけど……」

「まあ、兄ちゃんの能力なら貫通できるよな。けど兄ちゃん、これだと闇にまぎれたルーミアに当てるのは難しいぜ? ルーミアの闇は気配もほとんど消しちまうからな」

「……全く問題は無い。……ここからが本番だ」


 将志はそう言うと銀の槍『鏡月』を腰溜めに構えた。

 『監中の夜天』と呼ばれる銀の蔦に巻かれた黒耀石の中では銀の光がまるで銀河のように渦巻き、槍そのものが銀色の光を湛え始める。


「……はああああ!」


 将志は気合と同時に槍を突き出した。

 すると強烈な銀の閃光が槍の先端から迸り、ルーミアの暗黒球を飲み込んで背後にあった岩盤を貫いた。

 暗黒球は消し飛んだ上に岩山には大きな穴が開いており、その断面はまるで磨かれた大理石のように光沢を放っていた。

 その様子を見て、アグナとルーミアは唖然とした表情を浮かべた。


「……何……これ……?」

「……兄ちゃん? 俺、この技初めて見るんだけどよ?」

「……当たり前だ、初めて使ったのだからな。しかし、この技は封印したほうが良さそうだな。威力が高すぎるし、何より理不尽だからな」


 将志はそう言いながら軽く槍を振るうと、穂先を収めていつもの通り背中に背負った。

 この技は直径が大きくて避けづらい上に将志の能力の特性上防御が出来ず、更にそれでいて一撃必殺の威力がある。

 それらのことを鑑みて、これを使ってしまっては勝負にならないと判断したのだった。


「お兄さま、これはいったいどうやったの?」

「……貫くと言う行為は、通常点に対して行われるものだ。しかし、その点も引き伸ばしていけば面になる。俺は目の前にあった面を、大きな一点と認識したに過ぎない」


 ルーミアの質問に、将志はそう答える。

 どんなに広い面も、更に大きなものの見方をすれば点になってしまう。

 例えるならば、アリの巣の入り口はアリにとっては自分の体がすっぽり入るほどの面がある穴だが、人間にとっては指の先すら入らない点である。

 将志は自分よりもずっと大きい何者かの視点を借り、自分より大きな暗黒球を点として捉え、それを点として貫く巨大な槍で貫いたのだった。

 その説明を聞いて、ルーミアの頬に冷や汗が流れた。


「へー、そーなのかー……お姉さまより先に当たってたら死んでたわね、これ……」

「……まあ、兄ちゃんが滅茶苦茶なのは今に始まったこっちゃねえけどよ……」


 ルーミアは自分が今生きていることに感謝し、アグナは小さくため息をついた。

 そんな二人に、将志はふと気がついたように声をかけた。


「……それはさておき、そろそろ封印に掛かってくれ。他の連中に見られると、本気のアグナやルーミアと戦いたいと言う輩が現れるかもしれないからな」

「おお、そうだな。んじゃルーミア、ちっと頭貸しな」

「ええ、良いわよ。ん~……」


 アグナの一言で、ルーミアは眼を閉じてアグナに顔を近づけた。

 それを見て、アグナは白い眼をルーミアに向ける。


「……おい、テメェ何のマネだ?」

「どうせ貸すならお姉さまと甘い一瞬を、と思って」


 ルーミアはそう言いながらアグナの唇に自分の唇を近づけていく。

 それを見て、アグナはニヤリと笑った。


「そーかそーか、それなら魂を焦がすほど熱い瞬間をくれてやろうか?」


 そう言った瞬間、アグナの右手が激しく燃え始めた。

 そこから発せられる熱を受けて、ルーミアは素早く体を離した。


「や、やだ……そんなに熱いと私燃えちゃう……」

「ああ、遠慮すんな。すぐに何も感じなくなるほど熱くなっからよ……」


 乾いた笑みを浮かべて後ずさるルーミアに、アグナは右手を構えながらじりじりと近づいていく。

 アグナの表情は笑顔であるが、その笑顔には近づき難い程の迫力があった。

 炎に巻かれた右手は赤熱し、冬であるというのに訓練場を真夏のような暑さに変えていた。


「た、助けてお兄さま!」


 ルーミアはそれに命の危険を感じて、慌てて将志の背後に隠れた。

 それを受けて、将志は呆れ顔で額に手を当て、俯いて盛大にため息をついた。


「……お前達、遊んでいないでさっさとしろ」

「「はい……」」


 威圧感溢れる将志の言葉に、二人はそろって頭を垂れた。

 それからアグナがルーミアの髪に手をかざすと、赤いリボンが現れてひとりでに結ばれ、ルーミアは力を封印された。

 それと同時にルーミアの体は闇に包まれ、それが晴れると普段と同じ大きさに戻っていた。

 そのルーミアを見て、アグナは将志に髪を三つ編みにしてもらいながら話しかけた。


「調子はどうだ、ルーミア? 封印したのは五割なんだけどよ?」

「ちょっと待ってね……」


 ルーミアがそう言うと、ルーミアの右手を霧のような闇が覆った。

 その闇は十字架の形を取りながら長く伸びていく。

 そしてしばらくすると、ルーミアの手には自らの背丈を優に越える、2m50cmほどの巨大な剣が握られていた。

 柄は朽ちかけた黄金の十字架のような形をしており、そこから伸びる黒い霧を纏った長大な刀身は全ての光を吸い込むような闇色の刃であった。

 その大剣を、ルーミアは軽々と振り回した。


「んー……剣が使えるようになったわね。後は前よりも体が軽いわ」


 ルーミアはそう言いながら体を動かす。

 その動きは封印を緩める以前よりも遥かに軽やかであり、とても重そうな黒い大剣を持っている様には感じられなかった。

 そんなルーミアに、将志が懸念事項となっていることを問いかけた。


「……吸収は出来るのか?」

「あ、それは無理。お姉さまそこの部分はしっかり封印しているわよ」

「あと、成長したときのための伸び代も作ってあるぜ。そいつを使い切ったら今度こそ頭打ちだけどな」


 アグナはルーミアの封印に関してそう告げる。

 それを聞くと、将志は楽しそうに口元を吊り上げた。


「……ほう。何処まで伸びるのか楽しみだな」

「……お、お手柔らかにお願いするわ……」


 将志はそう言いながらルーミアを見やる。

 黒耀の瞳には、ルーミアと戦うのが楽しみで仕方が無いといった様子が見て取れた。

 その眼を見て、ルーミアは背中に走る寒気を感じた。

 そんなルーミアに、封印が掛けられて元の小さな体に戻ったアグナが声をかけた。


「それで、最初は誰と戦うんだ? 選ばせてやるよ」

「決まってるわ。私はまず、姉の威厳を取り戻しに行くわ」


 ルーミアは楽しそうに笑いながらそう言った。

 それを聞いて、将志は面白そうにニヤリと笑った。


「……成程、では思う存分暴れて来い」

「うふふ、そう来なくっちゃ。ねえ、お兄さま。私が勝ったら好きにして良い?」


 ルーミアは口に人差し指を当て、熱の篭った視線を将志に向けた。

 それは許可が出ることを期待したもので、強い願望が滲み出ていた。

 その眼を見て、将志は苦笑いと共にため息をついた。


「……程々にしておけ」

「分かってるわよ。それじゃ、早速行ってくるわ」


 ルーミアはそう言うと、鼻歌を歌いながら飛び去っていった。

 それを見て、将志は懐から銀の懐中時計を取り出して中を見る。すると、時計は午後二時を指していた。

 本日の執務は既に終了しており、鍛錬も終わっている。夕食の準備にはまだまだ早すぎるし、食材も十分に揃っている。

 そこまで考えたとき、ふととあることに思い至ってぽんと手を叩いた。


「……さて、俺は少し出かけるとしよう」

「お? 何処に行くんだ?」

「……なに、ちょっとした買い物だ」


 将志はそう言うと、冬の空へと飛び立っていった。


 ルーミア強化回。

 巷で言うExルーミアの装備だけ使えるようになりました。

 そして標的はご察しの通り、あの人です。


 ここで、ルーミアの立ち位置について一つ。

 ルーミアは銀月とチルノの壁になってもらいます。

 銀月にとって、ルーミアは姉であり戦いの先輩。

 チルノにとって、ルーミアは最強を目指す先にある障害。

 この2人にとって、ルーミアは大きな存在となります。

 ……と言うか、これじゃあチルノ視点を書くことになりそうですが気にしない。


 それから、今回の話に重大な伏線が隠れています。

 それは、『銀の槍のつらぬく道』の終わりに関わる、重大な伏線です。

 さあ、わっかるかな~?



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