白っぽい茶色の?
喧嘩、プチ家出、漫画喫茶、コーヒー。と、よく寝る女の子。
今回はそんなお話。
楽しんで読んでいただけると嬉しいです
「ふぁ…。」
私は大きく口を開けて欠伸をした。
はしたないとか思うかもしれないけれど、今はそんな心配はいらない。
なぜなら今周りは壁に囲まれて誰にも見られていないから。
ここは漫画喫茶。
漫画をダラダラ読むための場所のはずだけれど、私はお昼過ぎに来てから1冊も漫画を読んでいない。
今は平日の昼間。
来た時は制服のままだったから、かなり変な目で見られた。
別に学校をサボったわけではない。
今日は終業式で午前中までしか学校が無かったんだ。
家に帰ってお昼ごはんのラーメンをもぐもぐ食べた後、お母さんとちょっとしたことで言い争いになってしまった。
いつもならすぐに終わるはずのケンカ。
だけど今日はどちらも昔の細かい事まで持ち出して素直に謝れなくなった。
そこで私がとった行動はプチ家出。
我ながら少し幼いな…なんて思いながらも近所の漫画喫茶に出かけた。
空いてる席に座った後、特に興味もある漫画もなかったのでとりあえず机に突っ伏した。
そしたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
寝起きのモヤモヤした意識の中、腕時計に目をやると針はぴったり二時を指している。
そのままボーっとした頭で辺りを見回すと、ある広告が目にとまった。
「コーヒー1杯無料!」
ポスターには派手な文字でこう書かれていた。
そういえばさっきカウンターで無料券をもらった気が…。
ブレザーのポケットをゴソゴソあさると細々としたゴミと一緒に1枚の紙が出てきた。
苦いからコーヒーは好きではない。
けれど、無料なら飲まないと損した気分になるのはなんでだろう。
私は小さな紙切れを持って席を立った。
無料券と湯気が立つコーヒーを交換してもらった後、私はわざわざ大量に貰ったガムシロップとミルクを黒いコーヒーに入れてスプーンでかき混ぜる。
甘いような苦いような不思議な香りがした。
そして、私は元の席に戻ってたくさんのミルクで白くなったコーヒーをちょびっと飲む。
こんなに白くなっていてもやはり苦い物は苦い。
でも、眠気覚ましにはちょうどいいかな。
もう1口飲んだところでなぜか瞼がゆっくり下りてきた。
あれ…?
今苦いコーヒーを飲んだばかりなのに…。
私の思考はそこで停止して深い眠りに落ちた。
夢を見ている気がする。
でも実際に起こっていることのようにリアルなものを。
私は空を飛んでいる。
それも、自分自身の力ではなく大きな鳥に抱えられて飛んでいる。
その鳥はさっき私が飲んだコーヒーの様な白っぽい茶色の鳥。
バッサ、バッサ…
大きな鳥は大きな翼を羽ばたいて飛ぶ。
下を見ると、見覚えのある風景に夕焼けが広がっていた。
私の家の近くだ。
夕焼け?
今はお昼のはず…。
私の思考はそこで止まった。
ぐゎ。
なぜなら、変な色の鳥が変な声で鳴いたから。
「お嬢様、またお会いしましたね。」
え?
…鳥が喋った。
紳士的な声で丁寧な言葉遣いで喋った。
さっきの変な鳴き声は何?
喋れないと見せかけるためのカモフラージュか?
っていうか、こんな変な鳥に会った覚えなんてないんだけど。
頭の中でいろんな考えが飛び交う。
いわゆる混乱状態?
でもそんな私のことは気にもしないで、
「まったく、あまり得意でないコーヒーなんてお飲みになるからこうなるのです。」
呆れたように首を振る鳥。
こうなるって、私どうなってるの?
聞きたいけど聞けない。
なぜか口が開かない。
「もう、コーヒーは飲めないようにさせていただきました。」
どんなに力を入れても強力な接着剤でくっついたようになってる。
いやいや。
コーヒーどころか何も飲めないんだけど。
「コーヒーはお嬢様にはまだ早いですよ。」
優しい声色の鳥は優しい笑顔で言って私を掴んでいた爪を離した。
落ちる!
下を見ると落下地点は丁度私の家の上。
こんなときに私はまたなぜか深い眠りに落ちた。
「――さい」
意識の遠いところで声がする。
「起きなさい!!」
「わっ。」
私は大きな声にビックリして飛び起きた。
寝ぼけ眼で周りを見るとお母さんが側に立っている。
声の主はお母さん。
「もう、いつまで寝てるの?」
私が寝ていたソファーの前にあるテーブルには白っぽい茶色のコーヒーが置かれていた。
「あれ…?」
確か私、漫画喫茶にいたはず。
思わず口を触って異常がないか確かめる。
次に、パクパクと口を開け閉めする。
大丈夫。なんともない。
「ちょっと、聞いてる?」
少し怒ったようなお母さんが聞いてくる。
「あ、うん、聞いてる。」
適当に答えて私は頭の中を整理する。
私は、終業式で学校は早く終わったから家でお昼を食べた。
うん。ラーメン食べた。
その後、お母さんとけんかしたはず。
居心地悪くなった私は漫画喫茶にプチ家出した。
でも今居るのは正真正銘私の家。
「私、お昼ご飯の後何してたっけ?」
整理しても分からなかった私はお母さんに聞いてみた。
「あんた寝ぼけてんじゃないの?コーヒー飲んだ後今までずっと寝てたじゃない。」
そうなの…かな。
そう言われたらそんな気もするけど、やっぱり少し納得いかない。
壁にかかってる時計を見ると、5時半ごろ。
窓から差し込んでくる光はオレンジ色。
「そうだっけ?」
一応聞き返してみた。
「あんた、コーヒー飲んだけど大丈夫?」
だけど返ってきたのは全く関係のない言葉。
というか、質問の意味が分からない。
「何?お母さんコーヒーに毒でも入れたの?」
笑いながら私は答える。
お母さんの態度を見る限りケンカした後って感じもしないなぁ…。
だから私も冗談言えてるんだし。
「覚えてないの?小さいころ間違えてお母さんのコーヒー飲んで気絶したでしょ。」
呆れたように首を振って言うお母さん。
その姿はさっきの変な鳥となんとなく似ていた。
気絶…?
私はそんなこと覚えていない。
「だから心配してたんだけど、大丈夫そうね。」
私のことを上から下までしっかり観察して異常が無い事を確かめて言った。
「うん。なんともないよ。」
答えてから大きく伸びをする。
ソファーで寝たせいで固まった筋肉が伸びていく。
んー…
やっぱり家出して漫画喫茶に行ったのも、変な色の紳士的な鳥に運ばれたのも夢だったのかな。
それにしてはリアルだったけど。
長い夢を見てたのか。
あれ?
なんとなくブレザーのポケットに違和感がある。
中をあさってみると、細々としたゴミと一緒にふわふわしたものが…。
手にとってよく見てみると、それは白っぽい茶色の鳥の羽だった。
やっぱり本当のことだったのかな。
私は少し微笑んでそれを大切にポケットにしまいなおした。
読んでいただきありがとうございました
え、これ結局どうなったのかって?
…私も上手く言えません←
ちゃんと考えはあるんですけどねw
こういうのって自分で考えた方が楽しくないですか?
ってなわけでご想像にお任せします。
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