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第二章:赤字の「関係残高」2

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自分には「伝える力」が、根本的に欠落していたのだ。

資料にはこうも書かれていた。


「伝える力の源泉は、テクニック以前の『貢献心』にある」


健一は、デスクに突っ伏した。


自分が麻衣に子供を欲しがったのは、本当に彼女のためだったのか。あるいは、54歳になっても「現役」である自分を証明したかっただけではないか。自分の「正しさ」を押し付け、彼女をコントロールしたかっただけではないか。


情けなくて、涙が出そうになった。

だが、資料の最後の一節が、彼を奮い立たせた。


「現在コミュニケーションに苦手意識があることは、技術的な改善の余地(伸び代)があることを意味する」

「……まだ、間に合うだろうか」


健一は、震える指でスマートフォンを取り出した。


いつもなら「帰宅時間は20時だ。夕食を用意しておいてくれ」と打つところだ。

彼は、十数分迷った末に、たった一行、こう打ち込んだ。


『麻衣、いつも美味しいご飯をありがとう。今日は、君の好きなアイスを買って帰るよ』


送信ボタンを押す手が、不器用なほど震えていた。


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