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【第7話 外から来た圧力】

「……妙だな」


商人の男が、ぽつりと呟いた。


坂井新之助は、その視線の先を追う。


市の様子が、いつもと違う。


人はいる。だが——動きが鈍い。


「客足が……止まってる?」


村人が不安げに言う。


新之助は目を細めた。


(違う)


止まっているのではない。


(抑えられている)


「……誰かが、操作してるな」


低く呟く。


その瞬間——


「よう」


背後から声がした。


振り向く。


見慣れない男たちが立っていた。


服装、雰囲気、どれもこの町の者ではない。


「ここで商売してる連中か?」


一人が言う。


新之助は答える。


「そうだが」


男は、にやりと笑った。


「話がある」


———


場所を変えた。


町外れの小屋。


空気は、重い。


「単刀直入に言う」


男が口を開く。


「お前ら、やりすぎだ」


沈黙。


「市場を荒らしてる」


「……荒らしているのはどっちだ」


新之助が返す。


男は肩をすくめる。


「俺たちは“守ってる”だけだ」


「何を?」


「秩序だ」


静かに言う。


「値が乱れれば、皆が困る」


「そのために、調整してる」


(価格操作……)


新之助は理解した。


意図的に流通を絞り、値をコントロールしている。


「つまり——」


「俺たちのやり方に従え」


男は言い切った。


「さもなければ」


少しだけ間を置く。


「この町では売れなくなる」


——圧力。


完全に外部の勢力だ。


「どこの者だ」


新之助が問う。


男は笑った。


「知る必要はない」


「ただ——」


その目が鋭くなる。


「この辺り一帯の流れは、俺たちが握ってる」


空気が凍る。


———


外に出る。


村人たちの顔が青い。


「どうするんだ……」


誰かが呟く。


当然だ。


相手は、この町だけではない。


広域の流通を握っている。


正面からぶつかれば——潰される。


だが——


新之助は、静かに言った。


「……やることは同じだ」


全員が顔を上げる。


「情報を集める」


「え?」


「相手を知らなければ、勝てない」


短く言う。


(規模が違うなら——)


(やり方を変える)


———


数日後。


新之助は町を歩き回っていた。


別の商人、運び屋、旅人。


話を聞く。


断片をつなぐ。


(見えてきた)


「……やはりな」


小さく呟く。


戻る。


「分かった」


人々が集まる。


「相手は一つじゃない」


ざわめき。


「複数の商人が組んでいる」


「連携して、価格を動かしている」


「だから強い」


沈黙。


「……勝てるのか?」


誰かが言う。


新之助は、静かに答えた。


「正面では無理だ」


空気が重くなる。


だが——


「だが、崩せる」


全員の視線が集まる。


「連携しているなら——」


「切ればいい」


「……切る?」


「一つずつ」


低く言う。


「弱いところから」


(組織は、つながりで強くなる)


(なら、そのつながりを断てばいい)


「まずは一つ」


新之助は言った。


「小さい商人を取り込む」


ざわめき。


「敵じゃなくする」


「味方にする」


「そうすれば——」


一呼吸置く。


「連携が崩れる」


沈黙。


やがて——


「……できるのか」


商人の男が言う。


新之助は、わずかに笑った。


「やるしかない」


———


夜。


一人の商人の元を訪ねた。


小さな店。


表情は硬い。


「何の用だ」


警戒している。


当然だ。


新之助は、静かに言った。


「話をしに来た」


沈黙。


「敵になるか」


「味方になるか」


空気が止まる。


「選べ」


短い言葉。


だが、その重みは大きい。


商人は、じっと新之助を見る。


やがて——


「……続けろ」


低く言った。


新之助は頷く。


(ここが分岐点だ)


「利益を増やす方法を教える」


その一言で、空気が変わった。


——戦いは、次の段階へ。


――続く

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